れいわ新選組品川街宣の様子

◆野党に問われる共闘への覚悟
 自民党参院選で比例票を200万票以上も減らし、単独過半数を割った。与党で改憲勢力すら維持できなかった。
 しかし、安倍総理は「参院選で勝利した」「国会で憲法の議論を本格的に進めていく」「消費税増税は信任された」など空疎な発言を繰り返している。

 アベノミクスは一部の大企業を潤したが、国民は窮乏化し、格差拡大が進んだ。日ロ、日韓、日朝など外交政策も破綻している。これ以上、安倍政権を続けさせていいのか。野党の奮起が望まれる。

 次の総選挙で野党が勝利するには共闘が不可欠だ。いま野党各党にその覚悟が問われている。

 8月22日発売の『月刊日本9月号』では、「野党に問われる共闘への覚悟」と題した特集を組んでいる。今回はその中から、先の参院選で台風の目となったれいわ新選組代表・山本太郎氏へのインタビューを転載、紹介したい。

◆この国の政治に対して、我慢ならなかった
── 参院選で山本さんが率いるれいわ新選組は、比例区で約228万票(得票率4・55%)を集め、2議席を獲得、政党として認められることになりました。山本さんが政治を志した原点は何だったのですか。

山本太郎氏(以下、山本):山本太郎政治家になるなんてびっくりだ」という話をよく聞きます。政治家になった私自身が一番びっくりしています。もともと、政治には関わりたくなかったのです。公人になって、皆様の税金で食べさせていただくということには相当の覚悟が要ります。何よりも自由が好きだからこそ、表現する仕事をしてきたのです。公人となって自由が担保されなくなることには抵抗がありました。

 しかし、この国の政治に対して、我慢ならなかった。2011年3月11日東日本大震災が発生し、福島第一原発事故が起こりました。政治は子どもたちを守らなければならないはずです。ところが、文部科学省4月19日、学校等の校舎・校庭等の利用判断における放射線量の目安として、年間20ミリシーベルトというとんでもない基準を示したのです。一般の大人の年間許容量である1ミリシーベルトを大きく超える基準です。まるで死刑台に向かって、列を作らされているようなものだと思いました。

 同じ国に生きる人間に対して、予防原則に則った行動を取らず、このような扱いをする政治など、もはや政治とは呼べない。そう強く思いました。そのような政治に対して強い怒りを覚えました。ただ、政治に挑戦することには強い抵抗がありました。

 最初は、原発の問題について発言しながら、芸能も続けていきたいと考えていたのです。しかし、芸能の世界はすべてスポンサーに支配されています。発言をするごとに、仕事が減っていきました。仕事が細っていく中で、全国をまわって話をするようになりました。そこで、貧困や格差など、社会の現実を目の当たりにしたのです。私は16歳のときに芸能の世界に入り、生活者としての苦労をすることなく生きてきました。けれども、そうした当事者と出会い、話を聞いて、頭をかち割られるような思いになったのです。様々な当事者や支援者の方に会って、いろんな言葉を受け取ったとき、そうした言葉を伝える場に自らが立つしかないと決意したのです。

── 山本さんは、生産性で人間の価値をはかるような社会ではいけないと訴えています。山本さんが作りたい社会とはどのようなものですか。

山本:死にたくなるような社会は、もう止めにしたい。1年間に2万1000人もの方が自殺し、50万人以上もの方が自殺未遂している。自殺者3万人の時代と比べて減ったという話ではありません。目に見える戦争も紛争も起こっていないのに、今なおこれほど多くの人が追い詰められて、この世の中から消えたくなるということ自体が、社会が壊れている証拠だと思うのです。死にたくなるような世の中をやめたい。「生きててくれよ」という社会にしたい。

 追い詰められている主な原因は経済問題です。20年以上続くデフレの中で、大企業の利益が優先され、人々が踏みつけられてきた。この国は、世界に逆行して新自由主義の先頭に立っているような状況です。「国のために人々がいるのではなく、人々のために国が存在している」という根本が忘れられてしまっています。

 本来は、人々の力によって、国はコントロールできます。だからこそ選挙があるのです。しかし、人々が政治と距離を置き、政治に期待しなくなってしまったことによって、人々のコントロール権がずっと奪われ続けてきた。このコントロール権を取り戻し、もう一度人々の生活を底上げしたいのです。

◆生産性で人間の価値を判断する社会
── 参院選では、れいわ新選組から出馬した難病ALS筋萎縮性側索硬化症)患者の舩後靖彦さんと、脳性まひのある木村英子さんが当選しました。なぜ当事者を出すという方針を決めたのですか。

山本:もちろん、当事者が政治家になるだけで、簡単に物事が動くとは思っていません。けれども、「究極の当事者」が国会議員になることによって、動かざるを得ない状況を作り出せると考えました。舩後さんについては、「生きているのか、死んでいるのかわからない」というような心無い声も聞きました。しかし、舩後さんは会社経営にも参画し、精神活動は極めて旺盛で、頭脳も明晰です。「たとえ寝たきりであっても充実した人生を送れるのだ」というモデルケースです。舩後さんを国会に送ることは、生産性で人間の価値を判断するような社会に対する挑戦なのです。

 生産性で人間の価値を判断する社会が加速していけば、やがて国が人間の命の期限を切るような時代になっていきます。麻生太郎さんは、「90歳にもなって『老後が心配』と言っている人がテレビに出ていた。『いつまで生きているつもりだ』と思いながら見ていた」と語っています。副総理がこのような発言をしているのです。医療費の削減という形で、役に立たないと判断した人間の命の期限を決めるような政策が実際に進められていくことになりかねません。

── 参院選におけるれいわ新選組街頭演説には、大勢の人が集まり、凄まじい熱気を帯びていました。しかし、テレビは全く報道しませんでした。

山本:忖度したのでしょう。忖度のために、「政党要件を満たしていなければ扱えない」というルールが、最大限に利用されました。

 寄附文化が浸透していないこの国で、4億円もの個人献金が集まり、どこの演説会場にも多くの人が集まっていることを、社会現象の一つとしてテレビが扱うことはできたはずです。しかし、全く扱われなかった。
 「取材、制作をしたのに、上の許可が出ず、放送できなかった」。そんな悔しい思いをした報道関係者もいると思います。どの現場にも、戦う姿勢が必要だと思います。そうした姿勢を持っている人たちと協力していきたいと思います。

◆金持ちに優しい、大企業に手厚い税の取り方を変えよ
── 消費税廃止をどのように実現しますか。

山本:私は本来の税の在り方に立ち戻るべきだと考えています。一言で言えば、消費税導入前の税制に戻すということです。

 消費税導入によって、法人税所得税の大減税が進められてきました。法人税の税収は、消費税が導入された1989年には19兆円ありましたが、2016年には10・3兆円に減ってしまいました。消費税収の73%が法人税収の減少分を補っているという計算も成り立ちます。金持ちに優しい、大企業に手厚い税の取り方は間違っています。

 では、消費税を廃止して、どのように税収を確保するのか。所得税の最高税率を上げ、分離課税をやめればいい。法人税も累進性を導入すればいい。これはトランプ政権以前のアメリカでもやっていたことです。これにより29兆円の財源が担保されるという試算もあります。

 つまり、儲かっている人たちに、国を支えるために貢献していただくという考え方です。このような税制改革によって、一番プラスになるのは中小、零細企業だと思います。消費税を廃止することによって、中小企業は息を吹き返します。日本全体の従業者数はおよそ4800万人ですが、その70%は中小企業で働いています。中小企業のクビを絞めるような政策は、この国の屋台骨を破壊することにほかなりません。

 大企業に忖度する安倍政権の経済政策は、とるべき政策の真逆だと思います。格差を縮める役割を果たすのが政治です。大企業への忖度をやめ、こうした税制改革をすれば、29兆円の財源が確保できます。同時に、デフレ期においては、新規国債の発行を躊躇なく行う必要があると考えています。

── 最低賃金1500円の狙いは何ですか。

山本:私は、財界と政治の力によって、不当に賃金が抑えられてきたと考えています。政府が保証する形で、全国一律最低賃金1500円を実現すべきです。

 ただし、その前提として消費税の廃止や減税が必要です。消費税が廃止されれば、消費が喚起されます。内部留保を溜め込んでいた企業も投資を始めます。これにより好ましい経済状況が生まれ、これまで厳しかった中小企業の業績も回復していきます。その結果、中小企業にも賃金を上げる余裕が出てくると思います。そうなれば、国が補填する部分はそれほど大きくはなりません。

 消費が喚起されること以外にも、全国一律最低賃金1500円には、様々な波及効果があります。全国一律で1500円の最低賃金が保償されるようになれば、わざわざ家賃の高い大都市に住む必要はなくなります。東京で生活する人の多くは、収入の半分近くを家賃につぎ込んでいます。地方都市でも最低賃金が保証されるなら、もっと家賃が安くて、暮らしやすい場所で暮らそうと考えます。同時に、地方から大都市への流出も止まります。逆に地方に人々が流入するようになります。衰退していた地方のシャッター街も息を吹き返します。つまり、政府補償で全国一律最低賃金1500円は本当の地方創生になるということです。

 さらに、国土の人口を分散することは、震災などに対する危機管理上も必要なのです。南海トラフ東海地震首都圏直下型地震などが、いずれ起こると言われています。土木学会は、南海トラフ地震が発生した場合、地震発生から20年間の経済的な被害は約1400兆円に達すると推計しています。

 人口が大都市に集中している現状では、そうした大災害が起こったとき、バックアップできる都市がほとんどないのです。関西圏から東海、首都圏までが壊滅的状態に陥ったとき、被害を免れた都市が中心になって日本を再興しなければならなくなります。どこの都市にも、それができる状況にしておくことが、危機管理であり、安全保障だと思います。

◆野党共闘の条件は消費税減税だ
── 山本さんは「真の独立国家を目指す」と訴えています。

山本:外国の軍隊が自国に駐留し続け、しかもその駐留経費のほとんどを負担するような国は、世界中のどこにもありません。宗主国と植民地の関係においてしか、こうした不平等な関係は成立しません。このような恥ずべき状態がどうして変わらないのか。それは、変えようという政治的な意志が働いていないからです。

 まず、国土全体のわずか0.6%の面積しかない沖縄に、米軍基地の70%が集中している状況を変えるべきです。沖縄にいる海兵隊にはカリフォルニアにお帰りいただく。同盟国と言うならば、対等な関係を構築しなければなりません。日本の主権を侵害している日米地位協定にも踏み込むべきです。そして、米軍に依存した安全保障政策を改め、自主独立の安全保障政策も考える必要があります。そのためには、防衛にかかる費用は担保しなければならないし、こうした議論を避けるべきではないと思います。

── 野党共闘を進める上で、消費税についての考え方をどのように調整しますか。

山本:私たちが単独で政権交代を実現することは困難です。政権交代を考えたとき、私は野党が共闘することが絶対に必要だと思います。ただ、野党がまとまるだけではなく、そこに政策を乗せていく必要があります。

 与党は消費税増税、野党は消費税増税凍結の立場をとっています。しかし、凍結というのは、いつかは増税するということです。現在の国民の生活を鑑みれば、野党側は凍結ではなく、廃止の側に立つべきだと思います。消費税減税と消費税廃止は、方向性としては同じです。したがって、まず消費税を5%に減税することで野党の合意を形成する必要があると思います。

── 山本さんは、参議院議員としてこの6年間で、あらゆるテーマについて猛勉強してきたと言われています。そして今、山本さんは次の総選挙で与党を倒し、総理大臣を目指すと語っています。身につけるべき資質は何だと考えていますか。

山本:調整能力、清濁併せ呑む度量、意見の違う人とも手を組みながら数を増やしていく姿勢など、足りないものだらけだと思います。政権交代を実現するためには、苦手と思っている人とも手を組まなければならないということを、小沢一郎さんからは教えていただきました。

 ただ、今私がそれをやれば、これまでの永田町の論理に陥ることになりかねません。今の私にできることは、野党が結集する過程で、そこに明確な政策を乗せていくということだと考えています。ダイナミックに政治を動かしていくために、有権者一人ひとりが政治とつながってもらうための運動を推進していきたい。

── 山本さんは、衆院選100人程度の候補者を立てると言っています。

山本:全国をまわり、小選挙区で勝てる候補者を探す必要があります。丹念に地元をまわっている方や知名度のある人も選択肢になるでしょう。とはいえ、参院選で私たちが追求した当事者性に関してはぶれてはいけないと考えています。舩後さんも木村さんも、捨て身で国会議員になりました。「この国を救うために自らの身を捨てる」という気概のある人たちと出会えることを期待しています。

 人々の生活は日々苦しくなっています。一日も早く政権交代を実現しなければなりません。
(聞き手・構成 坪内隆彦)

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