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最高速度120km/h、「最低」速度110km/h

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

2009年に新車販売台数でアメリカを抜き、今や世界一自動車市場となった中国。四輪車の保有台数車(乗用車/トラック/バス)の保有台数も2億5千万台超(2018年末)。

急拡大するクルマの普及に合わせて、高速道路の整備も急速に拡大している。

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最高速度が赤丸、最低速度は青く記されている。

その高速道路が凄いので紹介してみたい。日本も見習ってほしい秀逸な交通ルールなのである。

日本で発行される国際免許証では中国国内を運転できないため(香港やマカオは運転可能)、日本からの旅行者にはあまり知られていないと思うが、筆者は今年の4月に上海モーターショーで中国を訪れた際、タクシー高速道路を走っている時に衝撃の事実に気づいた。

タクシーが利用した高速道路は、片側4車線+緊急通行帯で構成されていた。日本とは逆の「右側通行」になるため追い越し車線は最も左側の車線となる。

そしてその上に書かれた規制速度は「(最高速度)120」。その右にある「110」という数字は最低速度なのである。

最低速度が110km/h!? 動揺するわたしに隣にいた息子がササっとスマホで調べて、「この車線の最低速度は110km/hで、トラックなど遅いクルマはこの車線を走ることからして禁止」と教えてくれた。

ちなみに、日本の道交法にあたる、「中華人民共和国道路交通安全法」では2019年現在の高速道路最高速度は120km/hと明記されている。

最高速120km/hと言えば、日本もやっと2019年3月から東名高速の一部区間(新静岡~森掛川間の約50km)で試験的に最高速120km/hが開始されたばかり。

中国では15年前の2004年5月に110km/h→120km/hに改定されている。日本では最低速度の取り締まりは少ないが、中国では最低速度違反も最高速度違反も厳しく取り締まられる。

最高、最低速度の設定も日本とは別次元だが、何より日本と違うのは、車線によって走れるクルマ、走ってはいけないクルマが厳格に規制されているということだ。

走っていい/ダメなクルマ、車線で厳格に

中国の高速道路における「追い越し車線」は左端となるが、そこには「客車道、小客車道、貨車禁行」の標識もある。

「客車」は乗用車を意味しており、「貨車」はトラックだ。

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中国の高速道路、流れはかなり速い。

確かに、中国では追い越し車線をノロノロ走るクルマは全く見かけないなあと思っていたら、最低速度が110kmでトラックなど遅いクルマは走ってはいけない決まりになっていた。

最も右側の車線は、最高速度が120km/h&最低速度が60km/hとかなり大きな幅がある。

実際、大型トラックなどはあまりスピードでも出ないだろうから、遅いクルマは右端の車線をゆっくり走ってください、ということなのだろう。

しかし、それにしても最低速度60km/hは日本の高速道路における最低速度50km/hよりもまだ少し速度が速い設定だ。

実際に中国の高速道路を走っているクルマの様子を見ると、かなりクルマの流れは速い。というより、遅いクルマを見かけることがない。

日本のように大型トラックなどスピードが出ないクルマが、追い越し車線と走行車線をふさいで、後続車が追い越し車線で数珠つなぎになっている……というシーンなどありえないだろう。

中国高速道路の追い越し車線では「最高速120km/h、最低速度110km/h」と、わずか10km/hの幅しかないが、これなら、日本の高速道路で頻繁にみられるあおり運転など起こりそうにない……。

では日本ではどのような状況であおり運転が起こっているのだろうか?

日本のあおり運転 ほとんど追い越し車線

日本であおり運転社会問題化して、多くのひとが関心を持つようになり、トラブルの抑止力がある(と言われている)ドラレコの販売も急速に拡大している。

しかし、そもそもあおり運転がなぜ起こるのか? 暴力事件や死亡事故に至ったその発端は何なのか? これについてはあまり報道されることはない。

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あおり運転の多くは追い越し車線から始まるケースがほとんど。

筆者が実際に高速道路で見かけた数々のあおり運転発生状況や、ニュースで報道されてきた内容、そして報道機関や警察、交通事故鑑定人の方に取材するなどして、可能な限り調べた結果では、あおり運転の多くは追い越し車線から始まるケースがほとんどだということがわかった。

もちろん、すべてではない。東名夫婦死亡事故のように、直前に入ったサービスエリアで被害者と加害者の間で起こった小さなトラブルに端を発することもある。

あおりの被害に遭いやすいひとは追い越し車線の走り方を知らないのではないか?

これが、重大なあおり事故、事件に発展することもあると、知っておいた方が身のためである。

追い越し車線=走り続けてはいけない車線

本来、追い越し車線は追い越しのためだけに使われる車線だ。追い越しが終わったら安全を確認して速やかに走行車線に戻るのが鉄則なのである。

ちなみに、追い越しが終わって走行車線に移動できる状態にも関わらず、追い越し車線をノロノロとしたスピードで走り続けることは「車両通行帯違反」になり、パトカーに発見されると、青切符を切られる対象になる。

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思わぬところで違反になりうるケースも。

また「わたしは前を見て、制限速度内で運転しているのだから、わたしが道を譲る必要はない」と思って追い越し車線を走り続けるひとは道交法についてきちんと調べた方がいい。

この状況では、以下の3つの道交法に違反をしながら走っていることになる。

・道路交通法第27条:追いつかれた車両の義務違反(後続車が後ろに来たら道を譲って追い越しが終わるまで速度を上げてはならない)
・同20条:通行帯違反(追越車線を走り続けるのはNG)
・同70条:安全運転義務違反(周囲の交通の状況を見ていない=後続車を気にしていないなど)

この行為があおり運転の始まりとなるケースがたいへん多い。

追越車線を走行中、後続車が接近してきたら、まずは道を譲ること。これが自分や家族、親しいひとの命を守ることにつながる。


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