校内放送の発展を目指す「第66回NHK杯全国高校放送コンテスト」の決勝大会が、7月25日に東京・渋谷のNHKホールで開催されました。アナウンス部門で優勝した千葉県立検見川高等学校 放送委員会の広瀬陽菜さんに、大会に向けて練習してきたことなどを伺いました。

放送部の晴れ舞台「NHK杯全国高校放送コンテスト」とは

NHK杯全国高校放送コンテスト(通称“Nコン”)は、高校生が校内放送活動の成果を発表する場。アナウンス部門・朗読部門・ラジオドキュメント部門・テレビドキュメント部門・創作ラジオドラマ部門・創作テレビドラマ部門などの部門があり、表現力や伝える力などを競います。本大会は3日間に渡り開催されました。

大会の背景には、美しく豊かな日本語を大切にする心を育み、話す力・表現する力を高めてほしいという主催者の思いがあります。また、高校生といえども1人の情報発信者。その自覚を持ち、人間を尊重し、創造性を育んでほしいという願いも込められています。

大会は部門ごとに異なる形式で実施されます。
アナウンス部門では、1人ずつマイクの前に出て、原稿を読みます。原稿は自校で起こった出来事を紹介する“自校ニュース”と、課題文から抜粋して作った原稿の2種類。
審査員を務めた小説家湊かなえさんから「固有名詞を入れていたか、要点をきちんと入れていたかを重点的に聞いた」という講評があったように、原稿の作り方も重要なポイントになるようです。

この大会を最後に引退する3年生部員も多く、アナウンス部門で優勝した千葉県立検見川高校 放送委員会の広瀬陽菜さんもその1人。受賞の感想や、大会に向けて工夫したことなどを伺いました。

何を伝えたいのかを意識して読む

―― 優勝された感想をお聞かせください。

全国大会には昨年も出場しましたが、決勝は初めての舞台。やはり皆さんとても上手で。正直言って手応えもなかったですし、優勝は全く予想していませんでした。びっくりです。うれしいですが実感がまだ湧かないですね。

―― 今回の内容について改めてお聞かせください。

決勝では自校ニュースと課題、それぞれの原稿を続けて読みます。自校ニュースは1分10秒~1分30秒で伝えるというルール。課題は決勝に勝ち上がったラジオドキュメント部門の中から好きな作品を選び、100字以内にまとめて読むというルールでした。

自校ニュースのテーマはうちの高校のテレビドキュメント部門でも扱った内容で、物理部の卒業生が久しぶりに集まった話題を取り上げました。明るい話題だったので、その雰囲気に沿って読むことを心がけました。

課題のラジオドキュメント番組『八月六日の日記帳』に関しては、制作した呉三津田高校の方に事前にお話を伺いました。「どうしてこの番組を作ったのか」「どういうことを伝えたかったのか」。それを頭に入れた上で、番組の良さが伝わるようにという気持ちで読みました。

自信はないけど落ち着きはあった!?

―― 優勝した一番の要因やご自身の強みは何だと思いますか?

教えてくれた先生や、毎日お弁当を作ってくれた親、一緒にやってきた部員のみんな、応援してくれたクラスメート……いろんな人の力があって優勝できたと思います。原稿作りもいろんな方に協力していただきました。全く私1人の力ではないんです。
自分の強みは自分ではよく分からないですし、自信があるわけでもないのですが、落ち着きはあるかもしれません。

―― 大会に向けてどんな練習をしましたか?

今回の大会に向けての練習は、今年の4月くらいから取り組みました。
普段の練習では発声練習をすることが多く、それとあわせて原稿を添削する作業もあります。内容をどう伝えるかも考えて読まないといけません。自分の声を録音して聞いたり、部員同士で批評し合ったり、先生に聞いてもらって客観的な意見をいただくこともあります。

入部してすぐ先輩から厳しい指摘が……

―― 一番努力したことは何ですか?

部活に入って最初の読み会で、先輩に「硬い・怖い・暗い」と言われたことを今でも覚えています(笑)。それからは、なるべく自然で、落ち着いていて、柔らかくて、伝わる読みをと心がけてきました。「読んでいる」のではなく「しゃべっている」ように聞こえることもポイントです。もともと感情を入れて読むことが得意でなかったので大変でしたが、表情を柔らかくすることで、それが自然と声に乗るようになりました。


―― その通りの読みができていた印象です。

今日も緊張はしていましたが、トップバッターで待ち時間がなかった分、緊張し過ぎることはなかったかもしれません。客席は真っ暗で舞台からは見えなかったので、人に見られているという緊張は感じませんでした。
ただ、今日で引退のため「これで最後の読みだ」という意気込みから来る緊張はありました。自分としては後悔のない読みができたかなと思います。すっきりした気持ちで終えることができました。



アナウンス部門の講評では「文字を音声化するプロであるAIアナウンサーが台頭していく時代において、意味を考えてその場にふさわしい伝え方をするのが人間の仕事になっていくだろう」というお話もありました。広瀬さんの「伝えたいことを意識して読む」という読み方も大きな評価につながったのかもしれませんね。


profile千葉県立検見川高等学校 広瀬陽菜(3年)

NHK杯全国高校放送コンテスト
https://www.nhk.or.jp/event/n-con/