こんな噂話がまことしやかに囁かれている。

朝鮮人民軍が手の込んだ軍事クーデターを計画している」というものだ。

何年も前から朝鮮人民軍兵士の餓死者が増加の一途をたどり、軍部特権を乱用した密売などで食いつないでいた将兵たちまでが次々と斃れている。

ここまで朝鮮人民軍が追い込まれたのは、国家予算をロイヤルファミリーと朝鮮労働党幹部に浪費され、軍事予算も核開発やミサイル開発に多くが費やされ、給料はおろか給食までカットされたからにほかならない。

かつて朝鮮人民軍兵士は韓国軍兵士より強いと謳われた時代があった。それは「いつも飢えた狼のよう」だからだ。たらふく喰える韓国軍兵士に比べ、精神的に貪欲でタフだからというのだ。

しかし、それにも限度というものがある。餓死者が累々と横たわるようでは話にならない。戦争どころか生きることに精一杯。戦争をしなくても飢えて死んでしまう。たとえ北朝鮮だろうと、部下の極限的な窮状を見て、将帥は放っておけるものではない。

だから異常な挑発行為を繰り返し、緊張を高めているというのだ。戦争になれば北朝鮮の敗北は明明白白。だが、その前に軍部が金正恩の首を土産に和平交渉するのだという。

多国籍軍もしくは米韓連合軍の平壌占領が早ければ金正恩は戦争責任を負って処刑され、ロイヤルファミリーは滅亡。軍部からも多くの戦争犯罪人が挙げられるだろうが、どちらにしても目的は達成される。

噂話の出処は言えないが、信頼できる筋である上に、不穏当な表現だが面白い噂話ではある。

過日、軍部からの強い圧力で金正恩の側近である将軍が更迭された。理由はハト派だからだ。この将軍は金正日が今際に正恩の将来を託した側近中の側近だったが、過熱した軍部の不満から首を斬られたのだ。

これにより金正恩の側近である軍人は大勢が戦争遂行派で占められることとなった。噂話の真偽はどうあれ、北朝鮮の暴走は「ボンクラ三代目の狂気」だけでは説明できないだろう。

テレンス・リー)