GO OUT CAMPではおなじみのフリスビー。一般呼称はフライングディスクという(フリスビーとは商品名)。このフライングディスクを使った競技はたくさんあり、ディスクを使って行われるアメフトとも言われている「アルティメット」はじめ日本フライングディスク協会では11の競技を正式認定している。また一方、同じ円盤を使ってストリートで独自のカルチャーを育んできた人たちがいる。俗にストリートフリスビージャマーと呼ばれる人たちだ。街角で、公園でフリスビーを投げ合うなど、決して競技ではなくフリスビーと戯れる人たち。競技とカルチャー。決して混ざり合うことがないと思われそうなこの2つがMIXし、出来上がったのが「フリット」というゲーム。これはGO OUT CAMPにて初お披露目され、今も毎回開催・進化している。これを生み出したのが今回インタビューさせていただいたお2人。

 

  • 森 友紀
  • 大学時代にアルティメットを始め、大学4年生時に日本一に。2004年には日本代表に選出。2008年には日本代表キャプテンとして出場した世界選手権で銀メダル。2012年には選手兼監督として世界大会に出場し世界一に。現在は子供たちにアルティメットを指導するなどで活躍中。

 

 

ストリートとアルティメットって真逆な立ち位置ですよね(笑)

アルティメットの森さんとストリートフリスビージャマー(フリスビーをする人/JAMする人という意味)のアラケンの出会いは?

森:7年前にウエブマガジンにアラケンのインタビューが載っていて、そこの編集者の知人が「フリスビーやってる人がいるよ」って紹介してくれたのが最初。私がやっているアルティメットとアラケンのやっているストリートって全然違うんだけど、すごく興味を持ったんですよね。ずっと競技をやってきた私からすればカルチャーを背景に持って円盤を使った活動をしているっていうところにすごく興味を持って。ちなみにアラケンがやっているプレイってフリースタイルと呼ばれる日本フライングディスク協会が認定する正式競技の派生とも言える部分もあるし。とにかく同じ円盤を使っているのに全く知らないってどうなんだろう?と思って近づいたのが最初ですね。

アラケン:ホント僕たちって真逆な立ち位置ですよね(笑)。美大時代の友達と「アストロボササ」というフリスビーチームを組んで代々木公園で遊んでいた頃は、あんまりフリスビーチームはいなくて。その後、SpinCollectif TOKYOを本格的にはじめた頃に、SNSを介して新しいフリスビーチームが増えていったんですよね。そこで集まってた人たちってフリスビーを競技としてというよりカルチャーを背景に持って楽しんでたんですよ。当時フリスビーの背景とか歴史って資料があんまりなくて、よくわかんなかったんですよね。そこがまた面白くて探求していったというのはありますね。そこで掘っていったらジャムバンドとかヒッピーカルチャーにも繋がっていって、そのあたりからフェスとかキャンプでやるフリスビーに新しい魅力を感じ始めました。

 

 

とにかくそうやってカルチャーを背景にしたところにいたんですけど、競技をやっている人にも興味はあったんですよ。元々フリスビーをやる人の母数が少ないっていうのもあって。僕がフリスビーを好きな理由の1つは、そもそもフリスビーなんてパイ皿を投げるのから始まってる「悪ノリ」みたいな部分もあるので、新しいこと、面白いことをどんどんやっていけるジャンルで、可能性もまだまだあると思っていて。ストリートでそういう「ひらめき」とか新しいことにトライするっていう部分にのめり込んでいったので、そういう精神を持って競技目線でフリスビーを見ているアルティメットの人たちと交わっていくという実験はすごく面白いって感じてます。

森:フライングディスクはまだまだ競技人口が少ないので、いまだに街でディスクを持っている人を見つけると目で追っちゃったりするくらいだしね(笑)。私たちもアラケンの言うように一緒にやっていく中でよりストリート的なものに深く興味を持っていってるという感じですね。

 

コートの上空を優雅に円盤が飛んでいる光景はすごく目に焼き付きました

ー森さんはどうしてアルティメットをやり始めたんですか?

森:大学に入ってまさかアルティメットをやるとは思ってない中、友達に誘われて見に行った瞬間にビビッと来たんですよね。その時にハッとしたのがディスクの軌道がとにかく綺麗だった。2チーム14人がディスクを追って走っているコートの上空を優雅に円盤が飛んでいる光景はすごく目に焼き付きましたね。もう出会った瞬間に「これをやるんだな」っていう感覚だった。

 

ーで、その後どっぷりとハマって、世界選手権で優勝まで成し遂げられたんですが、そこまでのめり込んだ理由は?

森:本当にフライングディスクが好きなんですよ。性に合うんだと思います。選手時代は技術で言えばどんな天候でもどんな敵でも自分が投げたいところに投げれる状態にまでなれていれば辞めていたかもしれないんですが、そこまで出来る感覚がなくて、それを追い求めていた感じですね。とにかくチームスポーツが好きで、アルティメットが究極のチームスポーツだと感じるところがのめり込んだ理由としては一番大きいですね。

 

ー今はどういった活動をしていますか?

今は日本代表チームの監督も、そのほかのコーチ業も一旦休んで、子供達に向けてのアルティメット教室をやったりしています。アルティメット自体は日本ではじわじわと競技人口も伸びていて、私たちが始めた頃にはなかったユースチームの大会も行われるようになってきてます。その背景にあるのが2028年オリンピック公式競技入りすることを狙うと世界フライングディスク協会が宣言したことで、そんな影響もあって盛り上がってきていますね。中学校の体育の選択科目にもなっていますし。

 

アルティメットという競技は誰でもできるモノですか?

森:誰でもできるものです。愛好者レベルだと公園で仲間でやっている人たちもいますし、そういうところなら参加しやすいと思います。正式な大会に出るなら協会に加盟する必要があります。10年前だと部活とか協会の枠の中にしかなかったんですが、今は色々と広がってきているので。GO OUT CAMPでもアルティメットに興味を持ってくれてリピーターになってくれた人もたくさんいますよ。

アラケン:アルティメットの正式な競技場とか行ったら、「うわ、この距離投げるの!?」とか思っちゃいますもんね。僕らはそういう訓練をしていないので。

森:そうね。飛ぶってことだけで言えばディスタンスって単に飛ばすだけの競技だと400m投げる人もいるからね。アルティメットの競技者でも男性なら100mくらいは投げますしね。でも、私からすればストリートの人たちの指先でくるくるディスク回す方がすごいと思う!!

 

 

 

70年代アメリカのフリースタイルのエモさが自分たちの源流

ーアラケンが志向するフリスビーJAMってどこが発祥?

アラケン:元々はアメリカですね。LAのローズボウルスタジアムで行われていた70年代フリスビー黄金期の様々なフリスビー競技を集めた世界大会があって、そこでのフリースタイルは今の競技とは違うものみたいにエモくて。それが自分たちの源流だと思いますね。で、自分がフリスビーを始めた頃にインターネットで調べまくったらフランスのSpinCollectif Pari’sというチームのすごく面白い映像に出会って。その後、彼らと一緒にフリスビーをやるようになって、その自由な楽しみ方に刺激を受けました。で僕たちもパリの兄弟チームとしてSpinCollectif TOKYOというクルーを結成したんです。ちょうどその頃、そういった古いフリースタイルの大会の映像にある熱気やエモさ、出会ったフランスの連中の自由さにもやられて、パリに負けない、東京や日本ならではのアウトドアも飲み込んだストリートフリスビーのスタイルを模索していきました。今だとインターネットで全世界に配信されているので、世界の色んなところで僕と同じように影響を受けて面白いことをやり始める人が増えてるなって感じています。

 

ストリートはSpinCollectif TOKYOのおかげでGO OUT CAMPでは相当浸透していますよね

アラケン:広い場所で投げ合うフリスビーの楽しさってキャンプに相性が良いんですよね。1枚あればすぐに遊べるし、キャンプ場は広いし。指で円盤をくるくる回すようなことも最初は誰もできなかったけど、今ではフリスビーエリアの常連さんだと上手にできるようになってますよ。僕の方ではキャンプだとどんなディスクが楽しめるのか、とか研究してますね。距離が取れるので飛ぶディスクの方が良いのかな、とか。「フリット」では浮遊感がすごくあって飛びが良い初めての人でも楽しめるリング状の円盤を使っています。低いハードルからはじめられ、自分らしさを出せれば「かっこいい」ところまでいけるフリスビーの奥深さが伝わっていれば嬉しいですね。

 

アルティメット+フリースタイル=「フリット」

ー全く違うアルティメットストリートの要素を混ぜ合わせたのが「フリット」?

アラケン:そうです。「フリースタイル」と「アルティメット」の名前をあわせて、「フリット」という競技名にしました。今、GO OUT CAMPでやってるゲームは内容で言えばアルティメットフリースタイルの楽しいところを両方入れた感じで、特徴的なのはアルティメットには存在しないドリブル。ブラシ(フリースタイルの技で、手でディスクを叩くようにして空中に回転させながら浮かせる)をしたまま走ればドリブルになる。バスケとサッカーアルティメットって運び方が違うだけで、手に持って運んじゃいけないというルールは一緒なんです。なのでアルティメットにドリブルがあれば面白いかなと思って。ほかにもアルティメットは地面に落としたらNGだけど、バウンドさせてのパスだったらOKにしたり。このブラシやバウンドはフリースタイルストリートの技なんですよね。あとゴールのところでカッコよくキャッチすれば追加得点があるという芸術点も入れました(笑)。本来競技なので安全にゴールに運んで得点するのが大切なのに、あえて最後のゴールのところで芸術点を追加したのもエンタメ性が増して面白いんじゃないかな、と。魅せるシーンを増やせばやってる人も見てる人も楽しくなると思うんで。そういう魅せる部分もストリートっぽいかもしれませんね。

森:ルールとしては1チーム5人で、最終的にはゴールエリアにいる味方にパスが通れば得点。ディスクは持って走っちゃダメで、パスするかブラシでドリブルするかで前に進めなきゃいないんです。試合の制限時間は参加した人の体力や、その日の参加人数で色々と変えてます。子供なら時間制にしたり、大人だと5点先取とか。

アラケン:あとアルティメットで面白いなと僕が思うのが審判がいないセルフジャッジだったり、男女MIXでできたり、スピリットサークルっていう最後にみんなで称え合うっていう行為があってそれが素晴らしいんですけど、そういうのは取り入れてます。男女MIXだと出会いもあるし、スピリットサークルというのは試合が終わったらみんなでワイワイできるっていう。そういうのって色んな所から色んな人が集まるGO OUT CAMPらしく遊べる要素になるんじゃないかなって思ってます。

森:「フリット」で良いのは芸術点があるから最後で逆転があるので、ワクワクしながら楽しめるんですよね。内容的には男女年齢関係なく楽しめると思いますよ。

アラケン:最初からチームを組んで参加してくれたら面白いですよね。キャンプに来てる仲間で参加してくれたら。

森:何チームか集まったらトーナメントとかも出来るもんね。ゆくゆくは3 on 3とかみたいな捉えられ方になれば良いなと思うんですよね。

 

ー次回のGO OUT  CAMP vol.15では色んな方に参加して欲しいですね。では最後にお互い円盤をつかって「遊ぶ」「競技する」中で共感できた点って?

アラケン:軌道の美しさ。見てるだけで楽しい。そういう円盤の姿はエモいんですよね。見ても投げてもブッ飛ぶんですよ。

森:アルティメットの試合で、選手も観客も綺麗な軌道のパスって「通るな」ってわかるんですよね。そういう放物線軌道は魅力ですね。ほかのスポーツで軌道の美しさと浮遊感を感じられるものってないと思うんですよね。これこそフライングディスク独自の魅力なんです。野球やサッカーなどのボール競技だと、落ちるところが見えるので足が遅い人だと追いつかないって捕まえに行くのを諦めちゃうことが多くて。でもディスクだとフワーッと浮いてるから追いかけたり、ダイビングして捕まえようとしたりするんですよ。それにボールに比べて面積が大きいのでなんとか触れられることも多くなる。それってすごい成功体験で。ちょっとカスッただけでも「次は捕れるんじゃないか」と思うんで、どんどんトライできるんですよね。

アラケン:で、その魅力をチームの名前につけたんですよね

森:チームというか私も関わるアルティメットのオフウエアブランドで「PARABORIC ORBIT」(放物線軌道)というのがあって、今後GO OUT CAMPではそのブランドも巻き込んで仲間を増やして楽しくやっていこうと思っています。

アラケン:フリスビーが飛んでいるのを見るだけでもフリスビーの魅力に触れられると思うので、エキシビジョンや友達の試合なども観戦しにきてください。フリスビー教室もあるので、ぜひ初めてのフリスビー体験にも! GO OUT CAMPで一緒に遊びましょう!!

 

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