車間距離の目安として、よく「100km/hなら100m」の間隔が必要といわれますが、これを見直す動きがあります。世界では、「距離」ではなく「時間」で間隔を測る概念が広く浸透しているようです。

「100km/hなら100m」 そんなに空けたらむしろ…

車間距離のひとつの目安として、よく「100km/hなら約100m必要」などといわれますが、このように速度(km/h)と同じ数字の車間距離(m)を確保する方法を見直す動きがあります。

高速道路と自動車交通に関する調査研究を行う公益財団法人 高速道路調査会(東京都港区)が2017年9月にまとめた報告書によると、100km/h走行時に100mの車間距離を空けるといったことは、「逆に割り込みによる安全性や快適性が阻害され、混雑した状況では守られていないのが実状」だそうです。そのうえで、不十分な車間距離は追突事故や渋滞の要因になるものの、交通実態に合わない車間距離の確保を促すことは、交通規則全般に対する信頼や順法意識を損なうことにもなりかねないと指摘しています。

そこでこの報告書では、目測による車間距離ではなく、時間をカウントする「車間時間」で適正な間隔を捉える方法が推奨されています。前を走るクルマが、標識柱など道路上の任意の目印を通過した時点から、自分のクルマがその目印を通過するまでの時間を測るというものです。

推奨される車間時間は、混雑時には約2秒、混雑していなければ2秒以上、減速に時間がかかる大型車などは3秒以上が目安だといいます。ただし2.5秒を上回ると、割り込みされやすくなるそうです。また、高齢者や初心者、あるいはABS(アンチロックブレーキシステム。急ブレーキ時などにタイヤがロックするのを防ぐ装置)が装備されていないクルマは、反応時間の遅れや原則時間が大きくなる懸念があり注意が必要だとしています。

車間時間2秒の「数え方」、世界でいろいろ!

高速道路調査会によると、このように車間距離を時間で捉える方法は世界中で見られ、特に欧米では一般的だそうです。必要とされる車間距離は国によって様々ではあるものの、2010(平成22)年に開催された欧州道路管理者会議においては、これらを総括して、「車間時間2秒」または「速度(km/h)の半分の数字の車間距離(m)」が、特に適用できるルールとして結論付けられたといいます。つまり、車間距離は「100km/hならば50mでOK」というわけです。

なお、車間時間2秒の「数え方」も国によって様々です。たとえばポルトガルでは「um crocodilo, dois crocodilos(ワニが1匹、ワニが2匹)」と唱えると2秒に相当する、といった語呂合わせによる方法が考案されているといいます。

日本でも同様の方法が複数地域の警察で考案されています。たとえば埼玉県警は「0、1、0、2(ゼロ、イチ、ゼロ、ニ)」、福島県いわき東警察署では「3・2・1・ヨシ」と唱えて2秒を把握する方法を広く啓発しています。埼玉県警によると、「1、2(イチ、ニ)」だけでは2秒よりも短いため、あえて「0(ゼロ)」を2回加えるのだそうです。また高速道路調査会は、たとえば童謡『あめふり』冒頭のフレーズ「あめあめふれふれ」の部分を唱えると、2秒を数えることができるとしています。

ちなみに、「100km/hなら約100m必要」という目安は、昭和40年代に東名高速が開通した際、当時の日本道路公団が作成したパンフレットでそう説明され、これが1978(昭和53)年、国家公安委員会が作成した「交通の方法に関する教則」に取り入れられて広まったものだそうです。高速道路調査会はこのことについて前出の報告書で、「昭和40年代と比較して、自動車の性能向上により安全性が確保され、交通量が著しく増加した現代では、理想と現実が乖離(かいり)」していると指摘しています。

混雑した道路では車間距離がつまりがち。写真はイメージ(2018年3月、乗りものニュース編集部撮影)。