「一部の都立高校が、地毛の頭髪でも黒く染めさせる生徒指導をしている」として、NPO法人弁護士らが先日、指導の中止を求める要望書を東京都教育委員会に提出しました。都教委は「生まれつきの頭髪を一律に黒染めさせる指導は行わない」と明言しましたが、学校現場では「髪は黒色」という考えが根強いように思えます。学校現場が「髪は黒色」にこだわってきた理由や現状について、小中高で教員経験もある、元千葉県警上席少年補導専門員で少年問題アナリストの上條理恵さんに聞きました。

都立高の事例はレアケース

Q.地毛が茶色ということで、黒く染める指導を行うことをどう思われますか。

上條さん「地毛の茶色を黒く染めさせることはナンセンスです」

Q.世間で「ブラック校則」が問題になる中、地毛をわざわざ黒くする生徒指導がいまだに行われているのですか。

上條さん「先日、千葉県柏市などの教育委員会の会合で先生たちに話を聞いたところ、地毛が茶色の生徒に黒く染めさせるような指導は、現在はほとんどないようです。全国的に見れば、いまだに指導を続けている都立高のケースの方が珍しいと思います。私が教員をしていた数十年前とは異なり、現在は学校現場にも多様性を尊重する考えが浸透しています。そうした背景があるため、地毛も含めて黒色で統一させるという意識が強いという実感は意外にもありません」

Q.かつて、学校現場がかたくなに「髪は黒色」にこだわっていた理由は何でしょうか。

上條さん「まず、社会全体に『髪は黒色であるべきだ』という風潮があると学校側が感じていたからです。また『髪は黒色』の校則に違反した生徒をそのままにすると、違反する生徒が徐々に広がり、最終的には学校の秩序が一気に崩れてしまうことも理由です。校則に違反した生徒に何も言わなければ、『やってはいけないこと』のたがが外れ、『次はもっと派手な色に染めてみよう』『制服も改造してみよう』と、どんどん校則違反をエスカレートさせてしまうのです。

こうした学校の秩序が崩れることへの恐れから、『何か一つでも異なることが許せない』『みんな一緒にしないといけない』といった画一的な方向性が生まれ、かたくなに『髪は黒色』にこだわる背景が生まれたのだと思います。校則を破った子どもがいると、親から『どうしてあの子はよくてうちの子は駄目なのか』と言われて収拾がつかなくなり、先生は保護者対策で手いっぱいになります。これらの行き過ぎとして、地毛が茶色の子どもまで黒く染めさせる指導が行われた可能性があります」

Q.学校側は子どもたちに、髪を黒色に限定する意味を伝えているのでしょうか。

上條さん「ほとんどの場合、先生たちは『なぜ髪を黒色にしないといけないか』という理由をきちんと伝えています。社会に出る前の訓練として、ルールを守ることの大切さを身に付けるため、あるいは、法律ではない倫理・道徳をしっかりと守る必要性を身に付けるため、といった理由を説明しています。

しかし、中には、旧態依然のままの考えで『校則だからともかく髪を黒色にすればいい』と一方的に言う先生もいます。そう言われると、今の子どもたちは納得いかず、簡単には聞き入れないでしょう。法律違反の場合、駄目なものは駄目と言えますが、倫理観である校則ではそうはいきません。先生は生徒たちに丁寧に説明する必要があります」

Q.現在、女性を中心に髪が完全な真っ黒という人は少なくなっています。目立つレベルで髪を染めるのではなく、髪を軽く見せる目的などのために、少し茶色に染めるだけでも学校現場は許さないのでしょうか。

上條さん「生徒が、大人と同じように少し髪に色を付けることは全く認められません。女性の先生の中には、少し茶色に染めている人もおり、それを見た生徒が『先生も染めている』と言うかもしれませんが、先生と生徒では立場が異なります。小中学生子どもに茶髪や金髪に染めることを許している親がいますが、おかしいと思います。

先生も学生の頃は、きちんと学校のルールを守って黒髪だったわけです。そして、大人になれば自分の常識の範囲内でやることになっていくわけですから、その常識を身に付けるためにも子どもたちは今、学んでいるわけです」

Q.女子高生の中には、茶髪の生徒も見かけます。高校では、多少であれば髪を染めても大丈夫なのですか。

上條さん「高校になると、学校によっては大丈夫なところもあります。中学校までの義務教育とそれ以降では、校則に関する学校の裁量の範囲が違うからです。義務教育であるかないかの違いは大きいです」

オトナンサー編集部

学校現場が「髪=黒」にこだわる理由とは?