暗闇から黄色い羽根をはためかせて現れた「何か」にくぎ付けの旅人たち
暗闇から黄色い羽根をはためかせて現れた「何か」にくぎ付けの旅人たち

インドネシアの絶景のひとつであるクリムトゥ山の3色の湖も見たし、モニという村ではもう他にすることは特にない。

次の行先も決めていないけれど、Wi-Fiも一瞬出てきてすぐ消えるという幻っぷりだし、宿の予約すら取れない......。とりあえず明日出発するか。

緑がボーボーの中にある宿
緑がボーボーの中にある宿

同じ宿に泊まる人たちも各自ヒマそうではあるが、欧米人の旅人というのは持て余した時間の潰し方が上手である。トランプを出してはなんとなくゲームを始めたり、分厚いペーパーブックをめくったり。

正直、私は「インドネシアにまで来てトランプなんてしたくない」と思い、フラフラと宿の周りを歩き牛を観察したり、宿の子供をかまっていた。トランプが楽しいか牛を見るのが楽しいかは、結局どっちもどっちというか、まあ人それぞれ。それでもまだヒマで、宿の無料の紅茶をお腹がタプタプになるまで飲み続けた。

だだっ広い原っぱ。特にすることはない
だだっ広い原っぱ。特にすることはない

夕食の時間になると、キッチンで準備が始まった。魚が油で揚げられ、それを狙っているかのように猫が棚の上から覗いている。

キッチン裏の玄関の外では米が炊かれ、子犬のギギがその番をするように火を見つめていた。辺りは真っ暗で涼しく、揺れている火からほんのりぬくもりを感じる。

「田舎だなぁ......」

夕飯のテーブルを囲むと、旅トークが始まった。

「前に元カノをインドの旅に連れて行ってね、彼女はお腹を壊して病院行き。旅が相当ツラかったみたいで、『もうイヤだ~』って泣かれたよ(笑)」

ヨガをやっているというスロベニア人のブラッツがそう言っていたが、たしかにバックパッカーのようなワイルドな旅はツライことも多い。でも泣くほどではないかと(笑)。

「それにしてもインドネシアには本当にダッチ(オランダ人)が多いよね」

オランダ人のフィガがそう言うと、「さすが元植民地!」と同郷のルイーザも納得だったが、宿内でも一番多かったのはオランダ人で(10人中3人とか)、彼らにとってインドネシアポピュラーな旅先なのだそう。

「バケーションを使ってインドネシアの島々を周る人が多いよね」と言うので、私が長いバケーションをうらやましがると、「フランスなんかは法律で5週間のヴァカンスが取れるからね。それを利用して旅をするんだ。え!? 日本の夏休みは1週間!? そいつはクレイジーだわ!

うん、そうなるよね。

魚は大体揚げ物
魚は大体揚げ物
子犬のギギが炊飯を見張っている
子犬のギギが炊飯を見張っている

ギギがコッチ向いた!
ギギがコッチ向いた!

宿の皆で夕飯を平らげた後は、近所にあるこの町唯一の(?)ライブバーに行くことになった。

せっかくだから地元のお酒を飲まないとね!ってことで、「TOKITOKI(トキトキ)、デカンタでくださーい」。トキトキとは地元のお酒"モケ"をベースにしたカクテルで、多分お店オリジナルで命名したもの。モケというのはヤシの開花前の花から採った蜜を発酵させた蒸留酒である。

トキトキをうれしそうに注ぐマーク
トキトキをうれしそうに注ぐマーク

そして乾杯するとすぐにまたトランプゲームが始まり、英語でのルール説明は厄介であったが私も参加することになった。

カンビオってゆうゲームだよ! 知らない?」

カンビオと聞くと、世界一周の旅を始めた頃が懐かしい。スペイン語で「交換」という意味だが、南米アルゼンチンで路上の闇両替屋が呪文のように「カンビオカンビオ~」と客引きしていたっけ。

カンビオは他にも別名がいくつかあるようだが、どうやら2010年生まれのCABO(カボ)というカードゲームのアレンジで、記憶をしたり、人とカードを交換したりする頭脳系ゲーム。

それをトランプで代用しているのだろう、UNOをトランプでやるような感じかな。地方によって若干ルールが異なるらしく、少しモメた後にスタートした。

どんなカードを持っているか顔色をうかがうルイーザ。右は考え込む私
どんなカードを持っているか顔色をうかがうルイーザ。右は考え込む私

トキトキを飲みながらの頭脳ゲームはなかなか難しいし、みんなとの会話も英語だし、とにかく頭をフル回転。普段はクールなルイーザもゲームとなると熱くなるようで、お酒も少し入って楽しくなってきたのか、いたずらっぽい表情で人の顔色をうかがっている様子がかわいい。

ゲームが白熱すると、店は突然停電したが、誰かの誕生日かのごとくキャンドルが灯されゲームは続けられた。停電が回復しゲームにも飽きると、今度はライブを終えた地元ミュージシャンたちと飲むことに。

フローレス島の人だそうだが、なんだかジャマイカ人のようなドレッド具合で、そういえば前の町バジャワの宿主もレゲエマンぽい感じだったな。

「日本人でここに馴染んでるなんて、君が初めてだよ! なんか日本の歌を歌ってくれよ!」

たまにあるこのオファーだけども、いつも何を歌えば良いのか悩む。どうせなら、世界でも有名な曲で盛り上がりたいが、『上を向いて歩こう』くらいしか思い浮かばず。しかも、英語の歌詞はわからないし......。こんなときのために、一曲くらい鉄板ソングは用意しておかないとなぁ。

現地のミュージシャンに混ざっておしゃべり
現地のミュージシャンに混ざっておしゃべり

ミュージシャンたちと集合写真!
ミュージシャンたちと集合写真!

そんな風に和気あいあいとやっているところに、お客人。(この後、キモめの画像が含まれるので、閲覧注意です!)

「オオオ! アイツはなんだ!?」

外の暗闇の中からヒラヒラと、2枚のイチョウの葉のような黄色い羽根をはためかせた何かがやってきた。手の平くらいのサイズあるだろうか、なかなか大きい。

そして、まるで人間の脚のようなものが付いている。すらりと膝(?)が伸びた長い脚が、少しクロスするように小刻みにバタ足をしている。

「アレはなんだ! 蝶か! 蛾か? それとも妖精か!?」

暗闇から飛んでた謎の生物。そのシルエットはまるで妖精!?
暗闇から飛んでた謎の生物。そのシルエットはまるで妖精!?

それは見たことのない生き物で、まるでファンタジー。かわいく言えば妖精だし、少し黒や赤の斑点のようなものがあっただろうか、カラーはポケモン的な配色。

細くて長い脚の雰囲気は、(わからない読者も多いかと思うが)かの宮沢りえが、ヌード写真集『Santa Fe(サンタフェ)』で足をクロスしている姿を思い出させた。

なんだかセクシー......。いや、でも私にはわかる。あれは絶対に虫だ(誰にでもワカル)! やっぱり気持ち悪い

珍しさと気持ち悪さで私がプチパニックを起こしている中、そんなことお構いなしでルイーザはまるで何かに操られているかのように、きれいな横顔でそれを見つめている。

謎の生物に手を伸ばすルイーザ
謎の生物に手を伸ばすルイーザ
ヤダー! 持つの?
ヤダー! 持つの?

そしてスっとそれに手を伸ばすと、妖精は彼女の指先に止まった。

「ギャーギャーギャー! ルイーザ! よく触れるね!!」

私の声にビックリしたのか、妖精はすぐにまた暗闇の中へと消えて行った......。

謎の生物のアップ
謎の生物のアップ

この生物の姿形が珍しすぎて新種を発見したかなと思ったくらいだけど、後日、私の調査結果によると、どうやらオオオナガヤママユというマダガスカルの蛾......?

いやいや、ここはインドネシアだし。誰か虫博士いたら教えて! いや、やっぱキモチ悪いから教えてくれなくていいや!(笑)

帰り道には道端でヘビが死んでいたけれども、私は爬虫類のほうが全然イケると改めて思った。

ヘビの死骸。紐かと思った
ヘビの死骸。紐かと思った

【This week's BLUE】
地元ミュージシャンたちのライブはボブマーリーの曲でした

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第236回「まるで初心者? インドネシアでWi-Fi探しさまよう旅人」

●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

暗闇から黄色い羽根をはためかせて現れた“何か”にくぎ付けの旅人たち