――私も田中派や竹下派を長く取材しておりましたのでよく分かっているつもりですが、こうした派閥は石破さんの口からすると、改めてどんな集団でした。

石破 田中角栄先生も竹下登先生も、一兵卒として先の戦争に従軍し、あの戦争の恐ろしさを肌身で知っておられました。ですから、それをリベラルと言うかどうかは別にして、いわばナショナリズム的な手法には違和感をもっていた派閥でした。橋本龍太郎先生、小渕恵三先生も、同じ考えでした。また、対アメリカ一辺倒ではなく、日米安保を軸としながらも、アジアに重点を置いた外交を志向していたと思います。それは、「戦争をしないためにはどうするか」ということでした。憲法改正についても、がむしゃらに改正ありきということはなかった。

――野党への理解を求める政治も目立っていました。「恥を知れッ」などと、本会議場の議壇上から野党をコキ下ろした、威勢のいい自民党の女性参院議員がいましたけれど(苦笑)。

石破 野党を大事にしろというのも、一貫した姿勢でしたね。賛成はしてもらえなくても、納得してもらおうと努力した派閥でした。法案も予算も、成立すればすべての国民に対して効力が生じる。野党の支持者の方も含むのだから、いかに野党の言っていることを取り入れていくかを考えろ、と教わりました。

――今後の政局をどう見ますか。参院選は乗り切ったが、安倍政権の政権運営への道筋は、山あり谷ありと見ていますが。

石破 難問山積ですね。消費税を上げた後、景気、経済がどうなるか。例えば、日米貿易交渉も、物品のみならずサービスに及ぶ可能性も残っている。農産品の関税問題も含めて、トランプ大統領は強硬な姿勢を崩しておらず、厳しい交渉になることは言うまでもありません。また、ホルムズ海峡をめぐる「有志連合」への参加是非の問題も出てくるでしょう。自衛隊インド洋やイラクに派遣したときは、国連決議がベースになっていましたが、今回はその国連決議がありません。法律的にどう構築するか、安全確保や指揮命令系統がどうなるかなど、派遣となれば大変な問題ばかりです。野党も手ぐすねを引いている。それとも、自衛隊を出さずに“財政支援”ということになるのかどうか。

――そのうえで、安倍首相は「改憲」をうかがっています。「解散カード」をいつ切り、国会発議に必要な衆参の3分の2勢力の再構築を狙ってくるかも注目です。次の衆院選で圧勝すれば、参院で例えれば、野党の維新や国民民主に揺さぶりをかけ、参院でも3分の2に近づけることが可能。私は来年秋、五輪が終わった後の解散とにらんでいます。トランプ大統領の再選選挙との“ダブル選”で、弾みをつけようと…。

石破 仮にそうなったとしても、何のための解散なのか。改憲を争点にと言っても、国民にどういう意識を持ってもらい、何のために改憲をするのか。それが分からないままでは、解散の意義が失われてしまいます。

――解散して負ければ、政権を投げ出さざるを得ません。また石破さんの出番が回ってくる。そのときは、どんな心構えでのチャレンジとなりますか。

石破 少子・高齢化、人口減少の時代に、子供を生めば生むだけ家計が苦しくなるような政策を続けていては、この国は間違いなく持続可能性を失います。そして、自民党は国民政党だから、自民党が終わるときは日本が終わるときだと思っているんです。私は自民党が本来持っている多様性、幅広い議論を、なんとか取り戻したいと思っています。私の衆議院議員としての議歴は、ついに上から数えて13番目になってしまった。責任もまた、重くなったと自覚を強めています。

――最後に、仮に野党が一致団結、勝てる可能性があるとして、石破さんを首相候補に担ぎ出したいと言ったらどうします。

石破 絶対にあり得ませんね。自民党を変えることしか考えていません。