「自分の中でいろいろなものがボーダーレスになっていきたい。宮野真守としてどう輝いていけるのかを追求したいなと思っています。体も声帯も自分の一部なので、それをエンターテイメントにおいて、どう活用していけるのか、それをこれからも追求していくんじゃないかな」。自身の「これから」についてそう語るのは、名実ともにトップを走り続ける声優・宮野真守だ。豪華な声優陣が話題のアニメーション映画二ノ国』では、物語の鍵を握る“二ノ国”のエスタバニア王国の魔法宰相・ヨキを演じた宮野に、アフレコの舞台裏や、18年にわたって積み重ねてきた声優業への思い、そして他ジャンルへの進出をきっかけに起こった心境の変化などを聞いた。

【写真】声優としての18年を「宝物」と語る宮野真守


 車いすで生活する秀才・ユウ(声:山崎賢人)と、バスケ部の人気者・ハル(声:新田真剣佑)が、現実世界と命のつながりを持つ魔法世界「二ノ国」へ引き込まれたことを機に、“大切な人の命”がかかった究極の選択を迫られる姿を描く本作。宮野はヨキを演じるうえで、製作総指揮/原案・脚本の日野晃博と話し合いを重ねたという。「僕からというよりも、先に日野さんが本当に明確なビジョンを与えてくださって。その中で、ヨキがどんな思いの強いキャラクターで、彼の思いの矛先や貫き通すものなどを高めていきました。彼の過去にどんなことがあったのか、これからどうするのかというところを、しっかりディスカッションさせていただき、作り上げていきましたね」。

 お気に入りのシーンは、ユウとハルが二ノ国に初めて足を踏み入れた場面とのこと。「RPGをプレイして過ごした少年時代を思い出すというか。『酒場ってこうだよな!』『この世界だと自分たちの役割は何なんだろう?』『本当はちょっと強いのかもしれないぜ』とか言いながら、突拍子もない状況を思わず楽しんでしまう少年心というのは、誰しもが持っているし、特に男の子はぐっと共感するんじゃないかなと思いますね」と頬を緩める。

 幼少期に劇団に所属し、18歳の時に声優としてのキャリアをスタートさせた宮野。改めて声優業への思いを聞くと「分からないなりに、まっすぐ必死に食らいついてお芝居をしていたものが『もしかしたら、自分に求められるものがあるのかもしれない』と思えたのも、声優の仕事のおかげ」としみじみ。また「今はたくさんの方向性のメディアでやらせていただけるからこそ、変な言い方になるけど、『声優、得意だな』と思うようになれたのが、僕自身もびっくり(笑)」とも。

 「僕が『声優、得意なんだな、アフレコ得意なんだな』という言い方をするのは、イマジネーションが湧くから。それはこの世界にいただいた財産、自分にとっての宝物だなと思います」と続ける宮野。俳優・歌手・ナレーターなど「たくさんの方向性」での活動では、壁にぶつかることもあるが、それもプラスに働いているという。「違う分野にチャレンジしているからこそ、新たな難しさがあるんです。この舞台だと『どう自分の体が動くんだろう?』と分からなくなったり、バラエティ番組で『どう喋っていいんだろう?』と感じたり。でもそれも、経験を重ねることによって得意にしていける可能性があるんだろうと思うんです。それは大きな気持ちの変化ですね」。

 今後の展望を尋ねると「いろいろなものが好きなんですよ。『好きだなあ』と思うと、どうやら『やりたい!』に直結してしまう人間で。難しいかもしれないけど、とりあえず『やってみたい!』と思うんですよね」とニッコリ。多岐にわたる活動ができていることを「非常にありがたい」としたうえで「声優を18年やってこれたという宝物もあるので、この武器を携えながら戦っていけるというのは、心強いんです」と続ける。そんな宮野の姿は、壮大なRPGを夢中でプレイしている少年のように、晴れやかで楽しそうだった。(取材・文・写真:岸豊)

 映画『二ノ国』は公開中。

映画『ニノ国』でヨキ役を務める宮野真守 クランクイン!