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Point

■子供を持つ人は子供を持たない人に比べて、子供が家を出る場合は、以後の人生で幸福度が増す

■社会的接触媒体・世話役・経済的支援役としての子の役割は、親であることによって生じるデメリットに勝る

■一方、子育て支援が充実している国々では、家に子供がいる親の方が、子供がいない人よりも幸福度が高い

「子供を持つ人と子供を持たない人ではどちらが幸福か?」という疑問に対し、多くの研究では後者をより幸福だと指摘しています。

ところが、最近の研究で、子供を持つ人は子供を持たない人に比べて、以後の人生で幸福度が増すことが示されました。後年になると、これまでストレスの要因になっていた子供たちが家を出て、社会的な喜びの源になるからのようです。

独ハイデルベルグ大学のクリストフ・ベッカー氏らによる論文が、雑誌「PLOS One」に掲載されています。

Marriage, parenthood and social network: Subjective well-being and mental health in old age
https://journals.plos.org/plosone/article/figure?id=10.1371/journal.pone.0218704.t001

社会的接触媒体・世話役・経済的支援役としての子の役割

親の幸福に関する従来の研究は、子供が同居している人を対象にしたものがほとんどで、「子供のいる人は自由な時間、睡眠時間、経済的余裕が制限されるために幸福度が低い」と考えられていました。

ベッカー氏らは、子供がすでに家を出て自立している場合は状況が異なるのではないかという推測のもと、50歳以上の被験者55,000名に感情の健康状態を尋ねたヨーロッパの調査のデータを分析しました。

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その結果、この年齢層においては、子供を持つ人のほうが子供を持たない人よりも人生の満足度が高く、うつ症状が見られにくいことが判明。ただし、それは子供が自立して家をすでに出ている場合に限られました。

ベッカー氏はこのことを、成長して家を出た子供が親に社会的豊かさをもたらしてくれるためではないかと分析しています。

また、子供は親の面倒を見たり、経済的支援を提供したりすることも。社会的接触媒体・世話役・経済的支援役としての子の役割は、親であることによって生じる「時間がない、お金がない」というデメリットに勝るだけの力を持っているのかもしれません。

最終的には子育て支援が充実した国へ移住するしかない!?

米ユタ大学のニコラス・ウォルフィンガー氏によると、同じ現象は米国でも見られるそうです。

同氏は最近、米国の総合的社会調査 (General Social Survey, GSS) のデータ40年分を分析し、子供がすでに巣立った50〜70歳の親の幸福度が、家に子供がいまだに同居している50〜70歳の親よりも5〜6%高いことを示しました。

一方、育児支援が手厚いノルウェースウェーデンでは、家に子供がいる親の方が子供がいない人よりも幸福度がわずかに高いようです。子育てに付き物の時間的・経済的制限というデメリットが生じにくいのでしょう。

結局は、育児有給休暇、育児補助金、休暇、病気休暇などの手当によって幸福度が大きく左右される面はあるのかもしれません。

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子育ての真っ只中にいるときはどんなに大変でも、結果的には人生に豊かな彩りを与えてくれる子供の存在。ただ、「恩返しを期待して子育てをする」というギブアンドテイクの姿勢には少し違和感を感じるのも正直なところ。

子育てのストレスを軽減するための支援が日本でもさらに増え、子育てという人生において限られた貴重な時期の最中にもっと自然に幸せを実感できる環境が整えばいいですね。

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reference: newscientist / written by まりえってぃ
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