公共の駐輪場へ自転車を停めていたのに、それが撤去され、その費用も持ち主に課せられるというトラブルが発生しています。駐輪場の整備と放置自転車の撤去を行う行政側は、どう対応しているのでしょうか。

他人の自転車を移動させて、自分の自転車を停める

公共の駐輪場へ自転車を停めたのに、放置自転車として撤去された――京都市街地の路上駐輪場「まちかど駐輪場」を整備する京都市自転車政策推進室に、このような相談が年に数件から10件程度寄せられているそうです。

なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。同推進室では、駐輪場の満車時に他人の自転車を勝手に移動し、自分の自転車を停める人がいるためと見ているそうです。駐輪場外に持ち出され、放置自転車として市に撤去されてしまうと、それを取り戻すのには持ち主が保管所で撤去・保管料を支払わなければなりません。通常の放置自転車と区別がつかないためです。

しかしながら、これは駐輪場を正しく利用していれば防げるものでもありました。

「まちかど駐輪場」は、駐輪ラックに前輪を乗り上げさせるとロックがかかり、使用後に清算するとロックが解除されるシステムですが、自転車を停めた際に、精算機で任意の暗証番号を設定できる機能があるそうです。これを設定しなくても利用はできるものの、入庫から1時間以内なら無料のため、ラックの番号を入力することで第三者が解錠できてしまうというわけです。

暗証番号を設定していれば、無料時間中もその番号を入力しなければ解錠できません。駐輪後に「まず精算機に向かう」という意識がない人がいるため、京都市自転車政策推進室では看板などで暗証番号の設定を推奨しているといい、「番号を設定していれば、自転車を勝手に持ち出されることは考えづらいでしょう」と話します。

なお京都市では、撤去された自転車に盗難届が出されていれば、撤去・保管料を徴収せず持ち主に返還する措置がありますが、自転車政策推進室は「撤去された自転車が勝手に持ち出されたものかどうかを判断するのは困難」だと話します。ちなみに無料での返還は、盗難届が撤去前日までに提出されていることが条件だそうです。

過去には福岡でも被害多発 どう対策したのか

京都の事例は駐輪場のシステムで自衛できるとはいえ、駐輪場に停めた自転車が勝手に持ち出されるというトラブルは、ほかの地域でも起こっています。

福岡市の市営駐輪場でも、このような被害が過去に多発しました。後払い式の駐輪場で駐輪料金100円を支払い、他人の自転車の施錠を解き、自分の自転車と入れ替えるというケースが相次いだのです。これは盗難を目的としたものではなく、2倍の料金を払ってでも駐輪場所をするため、と見られています。

この対策として福岡市は、料金箱に100円を入れてワイヤーで自転車を固定させ、駐輪中は利用者が付属のカギを持ち歩くという前払い方式に駐輪場のシステムを変更しました。しかし今度は、鍵だけを持ち去り、その人の好きなときに使えるようにすると見られる行為により、空いていてもほかの人が使えない、ということが問題になりました。

このため福岡市も京都と同様、任意の暗証番号を設定できる駐輪ラックを順次導入しています。市の自転車課によると、既存の古いタイプの機器が使われている駐輪場では、現在も「駐輪した自転車が持ち出された」といった苦情が寄せられていることから、設備更新とともに暗証番号式の導入を推進するとしています。

駐輪場のイメージ(画像:写真AC)。