Credit:@Neil Kaye

Point

■平面の地図に描かれた陸地と実際の陸地の面積を比較すると、高緯度になるほど大きくズレていく

■これは地球が球体であり、地球上の陸地は曲率を含んだ非ユークリッド幾何学の図形であるためだ

非ユークリッド幾何学では、平行線が途中で交わってしまうなど、平面図形での常識が通用しない

こんなに違うの?

データサイエンティストのNeil Kaye氏がTwitter上で、実際の陸地サイズと地図上の大きさを比較した画像を掲載。その落差が話題になっています。

色の濃い部分が、該当箇所の実際の面積を表しています。これを見ると、赤道から離れた地域ほど地図上のサイズと実際の面積が乖離していることがわかります。

ここで、最近トランプ大統領が買収を目論んでいると話題のグリーンランドを見てみましょう。

グリーンランド。左ロシア。かなり地図上とサイズが異なることがわかる。/Credit:@Neil Kaye

どう見てもデカすぎですね。島なのにアフリカ大陸と同じくらいの大きさをしています。

これは何もデンマークが盛っているわけではありません。売り物じゃないし当然です。ロシアはやりかねないという気もしますが、もちろんそんなことはありません。

こうした地図の問題は、地球が球体であることが原因です。

「そのくらいなら知ってるよ」と思った人も多いかもしれませんが、これには単純なようで意外と複雑な数学の問題が潜んでいます。ここでは、そんな地図が歪む理由について解説していきましょう。

空間が歪んだ図形 非ユークリッド幾何学の世界

学校では、「三角形の内角の和は180°」や「平行線は永遠に交わらない」と教わりますが、こうした図形に関する当たり前のルールは紀元前にエウクレイデスが発見したもので、ユークリッド幾何学と呼ばれています。

ところが、図形を曲面などに描いた場合、こうした当たり前のルールが破綻してしまうのです。これを非ユークリッド幾何学といいます。

地球のような球体の上に図形を描いた場合は、この非ユークリッド幾何学の問題になります

例えば、赤道と90°で交わる直線を2本描いたとします。これは平面上では平行線になるので交わることはありません。しかし、地球儀などに同じ線を引くと、平行線なのに北極点(または南極点)で線が交わってしまいます。

Credit:SpacetimePSD

曲面では平行線はどこかで交わってしまうのです。このため、球面上ではすべての角度が90°というおかしな三角形も作ることができます。この場合、三角形の内角の和は180°を超えて270°になってしまいます。

Credit:京都産業大学

この様に、球面上に描かれた図形は、非ユークリッド幾何学に従うため、平面の図形の常識には従ってくれません。そのため地球上の陸地についても、平面の地図にすべての情報を正確に描き出すことは不可能となるのです。

平面地図に用いられているメルカトル図法は、あらゆる地点で角度を正しく保存しています。これは羅針盤を用いた航海では非常に便利なので、世界に広く普及しました。

しかし、残念なことにこの図法では面積や、地図上の2点間の最短距離は正しく表現することができないのです。

平面に描かれた歪んだ世界

実際は曲率を持った図形なのに、無理やり平面に描き出しているのが世界地図です。

そのため、メルカトル図法の地図は、なんの変哲もないように見えて実はぐにょぐにょに歪んでいます。

このため、例えば地球上の2点間を直線で結んだ場合でも、平面の地図上では直線になりません

下の図は地球の海上でもっとも長い直線を描けるコースを調べた、一風変わった研究ですが、ここに描かれる地球上の直線は、メルカトル図法の地図上に描き直すと、直線とは信じられないほどの曲がりくねってしまいます。

2つの図の赤線は地球上の同じルートを描いている。一見信じがたいが、上図の赤線は地球上に引いた直線(下図)を描いている。/Credit:Cornell University arXiv/Rohan Chabukswar[Longest Straight Line Paths on Water or Land on the Earth]
これは逆に平面地図上で2点間を直線で結んでも、それが地球上での最短距離にはならないことを示しています。

Credit:京都産業大学

この図は東京-ロサンゼルス間の最短距離について考えています。地図上では直線で結んだ図1が最短に見えますが、実際地球上を移動する場合には、図2に引かれたルートが最短距離になります。

この様に、世界は曲面上に作られているため、平面で理解しようとすると色々と歪んでしまうのです。

わかっているようで、やはり改めて示されると頭が混乱してしまいますね。

ちなみに、ファイナルファンタジードラゴンクエストで、飛空艇ラーミアを使ってマップ上を移動したとき、地図の北の端を飛び越えると、なぜか南の端から出てきてしまいます。

なんか変だな、と思ったことのある人もいるでしょうが、上で語った通り球面上のマップというのは、実際に作るのはとても複雑で難しいため、ゲームのマップは球面で作られていないのです。

じゃあ、どんな形をしているのかというと、それはトーラス型(ドーナツ型)になっています。

北と南がくっついたトーラス型のゲーム世界の構造。Credit:LucasVB/Wikipedia/トーラス

立体を平面に直した場合、色々なところに歪みが生まれます。平面の地図を眺めるときは、実際の世界はどんな構造なのか想像してみるのも面白いかもしれません。

人類のフロンティア精神がひと目でわかる「世界のインフラマップ」

reference:boredpanda,京都産業大学/ written by KAIN
地図はウソだらけ!? メルカトル図法と非ユークリッド幾何学の「歪んだ関係」が話題