米アマゾン・ドット・コムは8月21日、インドに世界最大のオフィスキャンパスを開設したと発表した。
場所は中南部テランガーナ州の都市ハイデラバード。面積は約3万8400平方メートル(東京ドーム0.8個分)。オフィススペースの総面積は約16万7000平方メートルで、約1万5000人の従業員を収容できる。米国以外で同社初の自社所有オフィスビルになるという。
インドの外資規制がビジネスの制約要因
アマゾンが同国で事業活動を始めたのは2004年。小売り事業を始めたのは9年後の2013年だ。
インドでは、アマゾンのような外国企業がeコマース事業を行うことを禁じているものの、地場の小売業者(出店者)と消費者を仲介する事業は許可している。これにより同社はマーケットプレイス事業や商品の保管と配送などを代行する「Fulfillment by Amazon(FBA)」事業などを同国で展開している。
自ら商品を仕入れ、消費者に直接販売することはできないが、販売手数料のビジネスや倉庫・物流ネットワークなどのロジスティック業務を提供するサービスビジネスは許されているというわけだ。
しかし、インド政府は今年2月に規制を強化した。外国eコマース企業が傘下の小売業者を通じて自社のマーケットプレイスで商品を販売することや、出店者と独占販売契約を結ぶことを禁じた。アマゾンのほか、米小売最大手ウォルマートの傘下に入ったインドeコマース大手のフリップカートにも影響が及んだと言われている。
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新社屋でサービス事業を強化
そうした中、アマゾンはサービス事業の強化を図っている。米ブルームバーグによると、オリジナルのボリウッド映画の制作事業に進出し、有料プログラム「プライム」の会員数を増やしている。同国におけるプライム会員の数は過去1年半で2倍に増えたという。
アマゾンはハイデラバードの新社屋でクラウドサービスや電子書籍サービス、AIアシスタント、ホームサービスなどの開発を進める計画だとブルームバーグは伝えている。
海外出品を手助けする事業「グローバルセリング」
インド紙エコノミック・タイムズによると、アマゾンは輸出販売事業にも力を入れている。
小売り事業者向け出品サービスの一環として提供している「グローバルセリング」を膨大な数の小規模小売り事業者の間で広めようとしているという。同紙によるとインドでは5万の事業者が同プログラムに登録しており、これまで約10億ドル相当の商品を輸出した。この金額は今後3年間で50億ドルを超えるとアマゾンの幹部は話している。
アマゾンのインド事業については、フードデリバリーサービスを始める計画だとも伝えられている。すでに地場の大手と提携してスタッフの募集を始めている。9月から始まる祝祭シーズンの前にサービスを立ち上げたい考えだという。
(参考・関連記事)「アマゾンが再挑戦するフードデリバリー」
アマゾンはインドで1億5000万人の登録会員を持つ、フリップカートに次ぐ同国第2位のeコマース企業。しかし同国の小売消費額に占めるeコマースの比率は3%以下にとどまっているという。
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