日本のサブカル界で異彩を放ち続ける掟ポルシェの新連載!ブログやツイッターでは語らない、“掟ポルシェの今”を赤裸々に語り尽くす居酒屋フリートーク企画「掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信」。あなたの知らない“もう一つの世界”はこんなにもおもしろい!

【写真を見る】インターネットには真実ばかりが書いてあるわけじゃない / 掟ポルシェ

ウィキペディアは基本的に俺が自分で荒らしましたから

——前回配信したVol.1が大変好評でした。

掟「ああ、そうですか。ありがとうございます。掟ポルシェの基本情報ということで、ウィキペディアに載っているような話をあえてここで話してみました」

——ツイッター上では「ウィキペディアよりも詳しい」という声もありました。

掟「ウィキペディアは基本的に俺が自分で荒らしましたから(涼しい顔で)。6年くらい前かな。モデルの青柳文子さんがロマンポルシェ。のメンバーってことになってるんですけど、スペースシャワーTVのネット番組で、ロマンポルシェ。ウィキペディアと、青柳さんのウィキペディアを荒らして遊ぼうっていう企画がありまして。インターネットには真実ばかりが書いてあるわけじゃないということを知らしめるために、嘘をガンガン盛り込んで」

——この青柳さんに関することですか?

掟「そうそう。青柳さんと当時一緒に関西ローカルの音楽紹介番組やってたんですよ。それきっかけで仲良くなったんで、青柳さんの番組自体にもゲストで出て、その時に荒らしたのがこれ。だから、『ロマンポルシェ。っていつの間にか3人になったんだね』って言ってる人はウィキペディアにまんまと騙されてます!こういうもの信用して読んじゃダメ」

——なるほど(笑)。でもこれ読んで本当に信じてる人いるでしょうね。

掟「ファンだったら読めば嘘だって分かるようにしてあるんですよ。現在、青柳さんは結婚してお子さんもいらっしゃるし、幸せな家庭を築いてますよ」

——青柳さんは客への暴力担当と書いてありますね(笑)

掟「そうそう。で、2013年6月19日加入って書いてありますけど、これが荒らした日。適当ですよこんなもん。青柳さん個人のウィキペディアは所属事務所の人が慌てて直してましたんで、今は元通り(笑)」

——信じてた人からしたら衝撃の告白ですね(笑)

■ 始まった途端、アンダーワールドからのジェフ・ミルズみたいな

掟「この前読んでて爆笑したウィキペディアがあって。【Y】っていうプロレスラーがいるんですけど、俺はずっと前から、このさほど知名度のない【Y】っていうプロレスラーに個人的に注目していたんですよ。その【Y】のウィキペディアが、『どう見てもこれ、自分で書いてるよね?』って内容で(笑)。まず、最初の数行がウィキペディアからの警告文。『編集の際は必ず「Wikipedia:自分自身の記事をつくらない」を読んでください』。バレてるっていう(笑)」

——わ、本当だ!(笑)

掟「これね、明らかに本人じゃないと知らないようなことしか書いてないんですよ。そんなインタビューとか頻繁にプロレス雑誌に載るような著名なレスラーじゃないし、お前しか知らねえだろこれ!ってことしか書いてなくて、バレバレで最高で」

——この経歴のところですよね。すごいギッシリ書いてありますね!

掟「経歴とかすごい詳細に書いてありますけど、知名度に見合ってなくて既におもしろい。プロレスやったことがあるわけでもない俺が言うのもなんですけど、この人、すっごいプロレス下手なんですよ。10年くらい前にたまたま観た試合が最高で。大技ガンガン出す割りには技と技のつなぎが唐突で、脈絡がなさすぎなんですよ。DJで言ったら意味なく大ネタばっかりかけて、客が盛り上がらないやついるじゃないですか。まさにあれ」

——メリハリとか全く考えないタイプですね。

掟「テクノで言ったら始まった途端、アンダーワールドからのジェフ・ミルズみたいな」

——からのケミカル・ブラザーズみたいな(笑)

掟「ケミカル・ブラザーズからのエイフェックス・ツインみたいな(笑)。いや、お前大ネタばっかりじゃねえか!って。しかも何の繋がりも意味もねえだろこれ、みたいな(笑)。客が一切沸いてないのに大技どんどん繰り出していって、もう唖然としたことがあったんですよ。それで【Y】、今どうしてんのかなって気になってウィキペディア開いてみたら、これ明らかに自分で書いてんじゃねえか!って(笑)」

——あははは(笑)

掟「メインの選手とタッグを組んで代わりに負けるという、所謂ジョバーなんですけど、うまいから重宝されているわけじゃないんだってのが注目してみてわかるんですよ。プロレスファンの人は、一回【Y】のウィキペディア読んでみた方がいいですよ。最近のプロレスじゃなくて90年代インディープロレスファン。一番最初にはっきり書かれちゃってるから。『この存命人物の記事には検証可能な出典が不足しています』って(笑)」

——証拠がないってことですね(笑)

掟「出典がなさすぎるんですよ。どこそこのインタビューから引っ張ってきましたって書かなきゃいけないじゃないですか。それが一切ない。なのに異常に詳細。ド頭にウィキペディアから『他人が適当なこと書くと名誉毀損になる可能性ありますよ』って意味のことが書かれてんですけど、続けざま『編集の際は必ず「Wikipedia:自分自身の記事をつくらない」を読んでください』って。あっさりバレてるんですよ(笑)。更にダメ押しで『ウィキペディアは広告宣伝の手段ではありません』って(笑)。もう、この流れだけで腹抱えて笑っちゃって。ちゃんと出典のあるウィキペディアにはこの注意文は書かれないんですよ」

——確かに!多分、同じIPアドレスの人ばっかり編集してるからバレてるんでしょうね。

掟「でしょうね。これ、同じ人しか書いてないなって。でもあの、俺も過去に、自分のところにいらない情報があったら消したりはしてました(笑)。十数年前かな?すごい昔の話で恐縮ですけど、一番最初に基本情報が出てくるじゃないですか。『ニュー・ウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」のボーカル、楽器、及び説教担当。』って書かれた後に、突然『既婚者』って書いてあって」

——何を目的に書いてるんでしょうね。

掟「俺みたいなね、モテることやってるわけじゃないミュージシャンでも、俺と結婚することを目的にライブにやってきてるようなファンがかつていたってことなんでしょうね。もうこの人結婚してるから追っかけても無駄!って、なんなんだよその基本情報はって(笑)。第三者が一番最初に知る情報それじゃねえだろ、ってことで即行削除してやりました!」

——【Y】さんとは面識はあるんですか?

掟「全くないです!しかもこれ、生まれ年が書いてない。年齢不詳(笑)。もう多分50代後半だと思うんですけど、まだモテたい気まんまんなんでしょうね。余計なことは一杯書いてあるのにそんな基本情報に限って削除してる(笑)。もうこれゲラゲラ笑いましたね。この間読んでて。本当に味わい深い。入場曲が誰それの曲だとかは聴けば分かるじゃないですか。それはファンが書いたかもしれないですけど、得意技の名前の由来だとかその事細かな変遷だとか、そのときの心情まで興が乗ってきて書いちゃってて(笑)。もうね、質の高いコントみたいになってる。最高ですよこれ」

——読めば読むほどすごいですねこれ(笑)

掟「不思議なことにね、これだけ自己評価が高すぎだと、ウィキペディアずっと読んでるとなんだかチャーミングに見えてくるんですよね。試合だけ見てるときには引っかからなかった人間性に興味が出てきて。多分俺、今後ずっと【Y】のウィキは見続けると思います。」

■ あのね、君、タレントっていうのは顔なんだよ

掟「自己評価高すぎておもしろいってありますよね。昔から活動している【A】さんってAV女優がいて...」

——巨乳で有名な!

掟「10年くらい前にAV女優のインタビュー連載を俺がやってて、一回インタビューしたことがあるんですよ。そしたら【A】さんが来るなり、『いや、私のね、これから人生について話しますけど、あのちょっと今話すのもったいないんですよね』って言われて。なんで?って聞いたら、『このあとね、自伝を出そうかなって思ってて、そっちで書くから』って(笑)。ちょうど飯島愛がプラトニック・セックスっていう波乱万丈の半生を綴った自伝を出した後だったんで、『飯島愛さんみたいに私も自伝を出すつもりなんで』って。ちょっと待て、なんでお前いきなり飯島愛と肩並べたつもりでいんの?自伝出すような人生送ってきてないだろって(笑)」

——完全に自分を見誤ってますね(笑)

掟「自己評価が世間と完全に乖離してるのに気付いてないんですよ。それを人から遠回しな表現で言われても理解しようとしなくて、そこもまた面白いんですよ。かつて【A】さん、アイドルになろうと思ったことがあって、イエローキャブ(芸能事務所)に面接行ったんですって。そしたら、あのおっぱいさえあれば何でもいいと思われている野田社長に、『あのね、君、タレントっていうのは顔なんだよ』って言われて断られたって(笑)。巨乳だからあの事務所ならいけるだろうと思って行ったら、そのルックスじゃうちでさえ無理だって遠回しに言われてるんですよ!(笑)。でも、それをいまいち本人が理解できてないのか、エピソードトークぐらいの気持ちで普通に答えてくれるんですよ(笑)」

——あははは(笑)

掟「無闇に自己評価の高い人って、他人が誰も自分を評価してくれない時点で色々と気づくべきなんだけど、プライドが高いからそこに鈍感なふりをしますよね。社会的評価軸がないのをいいことに、自己採点で高い点つけて自分の身を守るっていうか。でもその落差は、『間違ってますよ!』って指摘すんのも野暮だし、ある種の人間的魅力だと思って見た方がいいですよね。そう思うと【A】さんの何事にも肩肘張ってる感じとか途端に可愛く見えてきますね。なんだかんだ言ってこういう人好きなんですよ俺」

——今、ちょうど【A】さんのウィキペディアを開いているんですけど、近々引退って書いてありますね。

掟「あ、在籍してるAV女優風俗もやめちゃうんだ。この店、女優さんである程度有名な人は通常より倍くらい値段がするんですよ。最低金額1万円くらいからでコースによって値段上がってって。そんな中、【A】さん一人だけコースが違うの。もう高級ソープみたいな値段で。一部で絶大な人気があるからその値段でもやっていけるんでしょうけど。値段一つ見てもやっぱ【A】さんだよなぁっていうのが。ていうか、何の話でしたっけ?あ、ウィキペディアの話か(笑)。この夏、みなさんも暇つぶしがてらウィキペディア荒らしてみませんか?ウィキペディアは読む時代から書く時代へ!」

——やっちゃダメです(笑)。

※Vol.2〜中編〜は8/30に配信予定

■ 今回取材に協力してくれたお店

[Sunshine]福岡市中央区薬院1丁目11-13 正山ビル1F / 092-791-9203 / 20:00〜27:00 / 日曜休

掟ポルシェ(おきて・ぽるしぇ)

1968年生。男気啓蒙ニューウェイヴバンド『ロマンポルシェ。』&ひとり打ち込みデスメタル『ド・ロドロシテル』での音楽活動、ピッチを一切合わせないアイドル曲オンリーDJ、読後一切頭と心に残らない酷いコラム著述業、アイドルイベント司会を手がける他、頼まれれば法に触れない範囲で大体のことはやる。2015年より福岡西区に在住。(九州ウォーカー・田崎紀之)

明らかにこれ自分で書いてるよね?ってのを見つけたんですよ / 掟ポルシェ