ブンデス開幕前からの強行日程 「チーム力もすごく大事になってくる」

 18日に行われたホッフェンハイムとのブンデスリーガ開幕戦を1-0の勝利で飾ったフランクフルト。スタジアムが大きな歓声に包まれるなか、珍しく元日本代表MF長谷部誠はグラウンドに少し座り込んでいた。そのままの体勢でスパイク靴ひもをほどき、味方選手とタッチしていく。

 ドイツは8月中旬、だいぶ涼しい日が続いていたが、この日は思いのほか日差しが強い夏日だった。

「今日は珍しく湿度も結構あって暑いなって感じてやっていました。でも日本の夏に比べれば全然涼しいと思うので。暑さはお互い一緒なので、そういう意味では今日のゲームの質っていう部分では高くなかったのかなって。ただこういう試合を勝ち切って、開幕戦に勝てたのは非常に大きかったと思います」

 試合後のミックスゾーンでホッと一息ついてから、そう振り返る。

 特に後半のフランクフルトはボールの動きが滞り、攻撃の起点作りに苦労していた。不用意なボールロストからカウンターになりかけたり、相手のポゼッションに狙い通りのプレスをかけられずにパスを回される時間帯もあった。それでも的確なポジショニングと相手の次の動きを読みきった鋭い出足で、ホッフェンハイムに最後まで得点を許さない。最終ラインにおける長谷部の奮闘が、フランクフルトを踏みとどまらせた。

 改めて代えのきかない選手であることを証明したわけだが、シーズン全体を通して考えるとハードスケジュール下のコンディショニングが重要になってくる。

「去年も試合数は多かったんですけど、今年はそれにEL予選が入っていて、初めからかなり強行日程なので。もちろん体調、コンディションには気をつけてやってますけど、とにかくチームも多くの選手がいますから。そこで先週なんかもローテーションで上手く休めて、そういうチーム力もすごく大事になってくると思います」

セカンドグループ”の底上げができるか、問われるヒュッター監督の手腕

 ローテーションの頻度と精度は、今季重要な役割を担う。昨季はセカンドグループの選手との実力差があったがために、主力組は終始試合に出続けなければならなかった。それだけに今季は、よりレベルの高いポジション争いが求められる。そこを長谷部も指摘する。

「この間の木曜日のような試合(ファドゥーツとのEL予選3回戦第2戦/1-0)で、もっともっと他の選手がアピールしないといけなかった。実際に監督もそれを言っていて、物足りなかったと言っていた。今の状態だと、誰か重要な選手が欠けるとチーム力が少し落ちてしまう部分もあるので、そういう部分では底上げは重要かなと思います」

 普段、出場機会が少ない選手はいざプレーチャンスを手にするとアピールしたいという思いが強くなりすぎて、本来の自分のプレーを発揮できないことが少なくない。そうした心理はとても自然なものだが、それでも試合の状況に応じて時に冷静に、時に勇敢に自分の長所を発揮することが要求される。

 そしてこれは、選手サイドだけでどうこうする問題ではない。レギュラー組だけではなく、こうしたセカンドグループの選手のレベルを上げることも、監督には求められるのだ。そういった意味ではアディ・ヒュッター監督は新たな挑戦と対峙するシーズンとなる。どんな手腕を見せてくれるのか、注目して追いかけたい。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

フランクフルトMF長谷部誠【写真:Getty Images】