アニメマンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメマンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は『妖怪人間ベムシリーズの最新作『BEM』に登場する「橋」という存在について、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
 
 
「早く人間になりた~い」でおなじみのアニメ妖怪人間ベム』が完全新作アニメ『BEМ』として帰ってきました。私もさっそく拝見しましたが、そのビジュアルビックリ。ベムはさておき、ベラとベロがかなりスタイリッシュになっていましたね。ベラは幼いながらもより美しく、ベロはやたらとスレていて「しばらく会わない間に何があったの……」と心配になってしまいました。
 
 アニメとしては2006年以来です。2006年のときよりもいっそう、ベム・ベラ・ベロが人間界に溶け込んでいる様子が印象的な今作。彼らが主な生活圏としているのは、「アウトサイド」と呼ばれる汚職や犯罪にあふれた区域。対する「アッパーサイド」とは橋でつながっているようですが、あまり積極的に行き来する雰囲気ではありません。この橋がひとつのポイントとなっているように思われます。
 
『BEМ』だけでなく、物語における「橋」という存在は、ひとつの区切りの場となるケースが少なくありません。たとえば、京都の一条戻橋もそのひとつ。『平家物語』では、この橋には鬼女が出たと記載されています。鬼ははじめは美しい女性の姿をしていたようですが、たちまち変化。武将である渡辺綱を捕まえて愛宕山へ飛んでいきますが、綱によってその腕を切り落とされたといいます。
 
 現在も京都に一条戻橋は実在しますが、これは平成に入ってから掛け直されたものであるようです。この話は一例に過ぎませんが、少なからず橋はそうしたモノを引き寄せる場所であると言えるのではないでしょうか。今のところ『BEМ』では橋によって世界が区切られている雰囲気はあるものの、大きな変異はないように見て取れます。今後はそうした不思議な現象が起こる場所にも注目しながら、心やさしいベム・ベラ・ベロに明るい未来が待っていることを期待しつつ見守りたいと思います。

 

解説:木下昌美
【きのした・まさみ】妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるマンガのんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。
 
●挿絵/幸餅きなこ 撮影/高旗弘之