最近、「発達障害」がクローズアップされる機会が増えてきています。その影響か、ネットサーフィンをしていると、わらにもすがりたい気持ちで苦悩している親をターゲットにした、うさんくさくて怪しい商売が目立つように感じます。

 例えば、「公認心理師」は国家資格ですが、「カウンセラー」と名乗るのに国家資格は必要ありません。つまり、「心理カウンセラー」はいつでも誰でもなれます。「○○会認定カウンセラー」などの民間資格を創作して、「ママのお悩みを解消します」と宣伝している人も見かけます。しかし、その資格は組織内だけで通用するものであり、公的なものではありません。

発達障害は治る」と宣伝

 子育ての経験があるだけで、SNSで宣伝し、無料メルマガで誘う…その先に高額な商品が控えていることがあります。

「子どものためになるのなら、お金は惜しまない」と考えている親の弱みにつけ込むのは、どうなのでしょうか。責任を持ってアドバイスをするならば、その家庭の背景を知り、何度もその親子に会って親の関わり方を観察し、長い期間を一緒に過ごすことが不可欠だと思います。

 また、発達障害について「治ります」とうたっているウェブサイトもあります。発達障害は、その行動などが療育で改善することはあっても、障害自体がなくなることはありません。年齢を重ね、高齢者になっても発達障害者です。そのような宣伝をするウェブサイトは、明らかに怪しいサイトなので注意が必要です。

 発達障害関連ではありませんが、「怪しさ」が共通するものとして「アトピービジネス」という言葉もあります。アトピー性皮膚炎の患者の心につけ込み、「ステロイドの塗り薬は怖い薬である」と宣伝して、高額商品を売りつけるビジネスです。これも、発達障害ビジネスと似ているような気がします。

「通常級に行くこと」はゴールなのか

 発達障害については、実績あるカウンセラーでも注意すべき点があります。そのカウンセリングが、すべての発達障害児に有効とは限らないこと。そして、そのカウンセラーの目指す方向性が、わが子に合うとは即断できないことです。

 発達障害の人は全人口の中で少数派です。社会は大勢の人が生きやすいようにできていますから、療育訓練には「健常者が多い一般社会に適応しやすくする」面が少なからずあります。

 しかし、よく考えてみれば、本人にとっては「皆に合わせてあなたの言動をコントロールできるようになりなさい」と強制されている面もあります。本来は、本人が困らないように、生きやすいように練習するのが「療育」の目的であり、「健常児と同じことができるようになること」が目的ではありません。

 自閉症の子を持つある親御さんが、同じ障害児を持つママ友から「○○さんのセッションを受けたら、通常級に入学できた!」と耳にしました。その親御さんは「わが子もそうなるかも!」と夢見て必死になっていました。しかし、通常級になじめず、支援級に通うことになりました。母親は、うまくいかなかったのは「(○○さんという“自称カウンセラー”ではなく)私のせいだわ」と自らを責めました。

 もしかしたら、通常級に入学できたママ友の子どもは、もともと通常級でやっていける子だったのかもしれません。それ以上に問題なのは、そのカウンセラーが売りにしている「通常級に行くこと」をゴールにすること自体が甚だ疑問で、手厚い特別支援教育を受けた方が、その子にとっては幸せなこともあります。

 子どもが幼いと、先の見えない将来に不安が募り、「今のうちになんとか親が頑張り、子どもにも努力させれば必ず変わる」と鼻息が荒くなり、期待するのも無理からぬことだと思います。そんな心の隙間に入り込まれ、専門用語を使われると、親は心を奪われるかもしれません。「善意でやっている」と思っている相手もいるのでなお厄介です。

 もちろん、中にはまっとうなサービスもあるかもしれません。しかし、そうではないものも実際にあります。巧みな宣伝文句に心を奪われ、莫大(ばくだい)なお金を使ってしまうことのないように、冷静な姿勢が大切だと思います。

子育て本著者・講演家 立石美津子

苦悩する親がターゲットに?