おっさん同士の純愛を描いたドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日)はなぜ多くの人を魅了するのか――。『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』で新キャストとして、田中圭吉田鋼太郎林遣都と“おっさん同士のラブ・バトルロワイアル”を繰り広げた沢村一樹志尊淳は「さまざまな熱量がすごい」と言及する。そこには座長・田中のナチュラルさや現場の団結力があるようだ。

【写真】劇場版から『おっさんずラブ』チームに新たに参戦した沢村一樹と志尊淳

 モテない独身ダメ男・はるたんこと春田創一(田中)と理想の上司・黒澤武蔵(吉田)、イケメンでドSな後輩・牧凌太(林)の三角関係を描き、春田と牧のハッピーエンドでラストを迎えたドラマ版。劇場版ではその後が描かれ、沢村は牧の新たな上司で春田の強敵・狸穴迅、志尊は春田を慕う新入社員・山田正義(ジャスティス)を演じている。

 人気作の続編ということで「楽しみが大きかった」と語る沢村だが、撮影が進むにつれ気持ちに変化が。「ファンの方の好き度が濃くて熱量も高い。それがこの現場から生まれたんだなと改めて感じ、プレッシャーが強くなりました」と振り返る。逆に撮影前にプレッシャーを感じていたという志尊だが、そこを払拭したのが共演経験のある田中の気遣いだったと言う。「圭くんが初日に僕が悩んでいるのを察してくださり、食事に連れて行ってくれて。その時に『受け止めるからなんでもやってこい。別にお前は心配してないから』と言われ、安心したんです」とはにかむ。

 また、志尊は田中をはじめキャストの団結力にも刺激を受けたと回顧。同世代の金子大地に闘争心を沸かせるような言葉をかけられたりしたそうで、「みんなの熱がすごくて。圭くんを中心にキャスト同士で切磋琢磨できる環境ができあがっていて。でもそれが燃えるんですよね」と打ち明けると、沢村も強く同意する。

 沢村は田中のことを「いつも全身全霊」と表現。「体でぶつかってくる芝居をし、相手のスイッチを入れるのが上手い。はるたんにピッタリで、いい意味でセリフなのか、アドリブなのか分からない。あのナチュラル感は圭くんの持ち味だし、マネしようとしてもできない」と賛辞の言葉を贈り、志尊も「圭くんとのお芝居は楽しくて仕方なかったですね」と笑顔を見せる。

 劇中では、春田、部長、牧、狸穴、ジャスティスがサウナで鉢合わせするシーンも見どころの一つだが、志尊は「僕が現場に入ったら、温度が5度ほど上がってて(笑)。セットが揺れて崩れるかと思いました」と当時の空気感を熱弁する。

 牧と部長の感情がぶつかり白熱しつつも笑えるシーンだが、沢村は「遣都くんが決まっていた内容を無視するんです。そして鋼太郎さんがそれにぶつかり、めちゃくちゃ面白かったですね。遣都くんは憑依型だから役に入っちゃったんじゃないかな。でもそれはドラマのときに圭くんが遣都くんのスイッチを押してあげたからだと思います」と分析。

 さらに沢村は3人の関係性についても言及する。「遣都くんが暴れるのを圭くんが抑え、圭くんは鋼太郎さんという存在が後ろにいるから怒られるまで自由にやってる。そして鋼太郎さんがやんちゃすると、今度は遣都くんが抑えるっていう(笑)」。

 田中を中心に広がる作品への熱量はキャストだけでなく、制作陣も同様だ。志尊は「全員のベクトルが同じ方向を向いてる」と断言し、「若いスタッフさんが多いんですが、皆さんが作品を愛してそれぞれのこだわりを持っていて。どの現場もそうではあるんですけど、ここはその熱量や団結力がより強いんです」と答える。

 『おっさんずラブ』が多くの人を魅力する理由を聞くと、志尊は「具体的に名言しないところが面白さにつながってると思う」と回答。「ふわっとした遊びがあることで、この人とこの人だったらどうなるんだろうとか想像力が膨らむのかも」と言うと、沢村も「これが正解って1つも言ってないもんね」とうなずく。

 沢村は「奇跡的に『アベンジャーズ』になってる」と言い、「それぞれキャラクターが立っていて、存在が絶妙なバランスで。誰かを好きになってみたり、昨日の敵に塩を送ってみたり、見守ってみたり、時代劇要素が詰まってる」と持論を。

 続けて、「今は"許さない"風潮が強いけど、この作品は何があっても何回も相手のことを"許してる"。優しい話ですよね」とほほ笑むと、志尊も同意し「嫌な人が一人もいないですもんね」とニッコリ。キャストや制作陣が作品に全力で向き合い、人への誠実な向き合い方を描いた作品だからこそ、多くの人を虜(とりこ)にさせるのかもしれない。(取材・文:高山美穂 写真:高野広美)

 『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』は公開中。

沢村一樹&志尊淳、『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』インタビューフォト クランクイン!