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リアシートは10歳以下の子供か荷物用

translationKenji Nakajima(中嶋健治)

1973年式の丸いテールライトを持つBMW 2002カブリオレは、ティム・カラハンが11年ほど所有しているクルマ。その間にエンジンはリビルトされ、ボンネットも新調された。カラハンによれば、恐らく15番目のオーナーだという。

バウアー社のクルマが好きなカラハンは、2002カブリオレを日常的に使用している。でももう一台の愛車、3.0CSiの方が気に入っているそうだ。「わたしの妻はクルマが好きではないんです。このクルマは少し女性的な雰囲気がありますね。信頼性は高く、1カ月くらい停めておいてもエンジンはすぐに目を覚まします」 とカラハンは話す。

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BMW 2002カブリオレ

タッグも同じだが、2002カブリオレのリアシートも、10歳以上の人間には少々快適性に欠ける+2ではある。トランクにしまってある屋根を付けて、クーペのようにも走れるし、リアセクション畳んでをオープンにすることも可能。サイドドアはフレームレスだが、Bピラーのロールバーとフロントガラスをつなぐフレームが付く。デザイン的には少々不格好でも、ボディ剛性の面では効果的だ。

大きなクラムシェル形状のボンネットはフロントヒンジ。エンジンルームには後付のストラットブレースが追加されている。デュアルATEサーボと傾斜してマウントされた直列4気筒は、BMWの成功を支えた組み合わせ。コンパクトで高効率。洗練されておりレスポンスもいい。ソレックス製のキャブレターは1基のみで、控えめではああるものの、マニュアル・トランスミッションを上手に操れば、3.0Lのスタッグに匹敵するパフォーマンスを発揮する。

当時としては最も優れたドライバーズカー

ドアを開けて快適なポジションを見つけてみる。メーターが3つ並んだインスツルメントパネル。ステアリングコラムの両側には、足元用が独立した、ヒーターのコントロールアームが付いている。シートに座ってみると、ステアリングの角度やペダルのポジション、カシっとした操作系の重み付けなど、BMWがドライバーから高い支持を得ることになったことを理解できる。

独特の音を発するスターターモーターを回すと、エンジンはすぐに目を覚まし、穏やかなアイドリングを始める。6000rpm以上回るエンジンのカムシャフトはチェーン駆動だ。サルーンのボディに100ps/t近いパワーウェイトレシオを持ち、1968年当時としては最も優れたドライバーズカーの1台だった。

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BMW 2002カブリオレ

フラットトルクカーブのおかげでエンジンは上品にも扱いやすい。ステアリングの操作は、現代のクルマと比較すると低速域では重たいが、フィーリングはいい。カブリオレであっても、アクセルを踏み込めば充分に活発なこともわかる。

ショートストロークでスムーズに動くシフトレバーと、鮮明で漸進的につながるクラッチの組み合わせで、マニュアル・トランスミッションの操作も楽しい。シフトアップを決める毎に、小さなクルマとの関係が密になっていく印象すらある。ルーフの開かない2002と同じように楽しめる感覚は、とても密度が濃く、ドライバーへ自信を抱かせてくれる。

ラジオまでオリジナルの美しいコンディション

コーナリングも機敏でありながら安定性も高い。シートに触れる背もたれや、ステアリングを握る手のひらを通じて、4本のタイヤがどんな状態にあるのかを、鮮明に知ることができる。ブレーキペダルの感覚も剛性感があり、ヒール&トウの良い支点にもなる。閉じた状態ではルーフの継ぎ目からキシミ音も聞こえてくるが、オープン状態でもしなやかなサスペンションが無粋な異音を立てることもない。

一方で、ポール・キャターオールがオーナーのMk1スタッグのアピアランスは、BMWよりも魅力的だ。特にトライアンフのスタイリングが引き立つサフラン・イエローのボディカラーが良い。ホイールは初期型のまま、BL、ブリティッシュ・レイランドのエンブレムがフロントフェンダーの付け根にに飾られている。Mk2に装備される、ヘッドレストとボディのストライプは付かない。

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BMW 2002カブリオレ

キャターオールが2オーナー目で、細部まで美しくラジオも純正のまま。「モーリス・マイナー・コンバーチブルのかわりとして、このスタッグを2004年に買いました。その前にまずガレージのサイズを測りましたけれど。一切の改造も施されていない、完全なオリジナルです。大容量のラジエターも付いていません」 と話すキャターオール。

Tバールーフのスタイルは、幌を畳んだ状態でも相当にスタイリッシュ。リアエンドからは挑戦的な角度で太いマフラーエンドが2本突き出ている。全長の割に全幅が狭く、BMWと比較しても車内は特に広く感じられない。ラゲッジルームも2002より小さいようだ。シートに腰を掛けると、足元の空間も浅く余裕はさほどない。

意外にも滑らかなコーナリング

ビニルレザー仕上げのシート自体はBMWの硬いシートよりも快適で、操縦性も良い。トライアンフ70年代初頭から警告灯を用いるようになっており、インスツルメントパネルには計器類が並ぶ。ドイツ製のインテリアほどシンプルではないが、ステアリングコラムの調整機構やシートのチルト機構は、BMWの場合はオプションでも選択できなかった。

握りやすいTの字をしたATセレクターをスライドして、ドライブに入れる。スタッグはそろそろと進み出すが、変速は滑らかなものの緩慢で、エンジンの回転数や音の変化から変速状況を知るしかない。ATのレシオは現代の高速道路を流すには低い設定だが、加速のスピードはマニュアルと大差はない。アクセルを踏み込むとキックダウンし、スタッグを充分に活発な動力を与えてくれる。

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トライアンフ・スタッグカブリオレ

多くのひとにとって、駐車時のステアリングの軽さのありがたさは、コーナーでのフィーリングの薄さやフィードバックの少なさの不満を上回るだろう。だがスタッグは、ボディロールは小さくないものの、グリップ力も充分でフワついた感覚もなく、ピッチングもない。BMW 2002が得意な、路面の起伏が大きいコーナーでスピードを上げ過ぎない限り、カーブの続く道を滑らかに駆け抜ける。

タッグのボディシェルはBMW 2002並みにしっかりしており、乗り心地も悪くない。しかしBMWと同程度にスピードを速めても、同程度に満足のいくドライビングを体験できるわけでもない。フィーリングは良いものの、BMWのようにクルマと対話し、操作を決めていくという感覚に乏しいためだろう。

スタッグもクルマの基本は悪くない

しかし、スタッグはそもそもオープンでゆったりと走るべきクルマ。エンジンの性能を確保すれば、ハンドリングの多少の悪さもカバーできると当時のエンジニアも考えていた。もし販売数がもっと伸びていれば、改善することもできたかもしれない。クルマの基本は決して悪くないのだ。

アメリカのコンバーチブルに対する安全規制が強化される中で、ヨーロッパで生まれたスタッグは、とても勇気のある開発計画だったといえる。トライアンフはTRシリーズやスピットファイアをアメリカで成功させていたこともあり、開発のリスクを冒す意味もあると考えていたと思われる。

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トライアンフ・スタッグカブリオレ

ドイツ製の高価なライバルと比較して、スタッグは知的に練られたパッケージングを備えていただけに、アメリカで販売に至らなかったことが残念だ。BMW 2002は、グラマートライアンフと比較すると、ビジュアル面で劣るという事実も、数奇なものだと思う。

わたしはスタッグが好きというわけでもないし、所有する見込みもない。だが、今回改めてその存在が嬉しくなった。スタッグは確かに新車時から良くない評判もあったが、時間の経過とともに事実以上に強いイメージを持たれている様子。一方で現行モデル以上に、われわれはクラシックカーの魅力的な部分を一層引き立てて見ているという側面もある。トライアンフ・スタッグは実際の欠点以上に、とても良い印象を与えてくれるクルマだった。

2+2カブリオレ2台のスペック

トライアンフ・スタッグ(1970年〜1977年)のスペック

価格:新車時2616ポンド(35万円)/現在2万5000ポンド(340万円)以下
生産台数:2万5939台
全長:4420mm
全幅:1626mm
全高:1270mm
最高速度:189km/h
0-96km/h加速:9.5秒
燃費:7.0km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1273kg
パワートレインV型8気筒2997cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:147ps/5500rpm
最大トルク:23.4kg−m/3500rpm
ギアボックス:4速マニュアル

BMW 2002カブリオレ(1971年〜1974年)のスペック

価格:新車時3499ポンド(48万円)/現在2万5000ポンド(340万円)以下
生産台数:2713台
全長:4318mm
全幅:1588mm
全高:1359mm
最高速度:170km/h
0-96km/h加速:10.8秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1060kg
パワートレイン:直列4気筒1990cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:99ps/5500rpm
最大トルク:16.0kg−m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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BMW 2002カブリオレ

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