アイアムアヒーロー』(16)や『カメラを止めるな!(17)のヒット、「ウォーキング・デッド」ブームなどを経て、日本でもマニア向けのジャンル映画から誰もが楽しめるエンタメ作品というイメージに変わってきた“ゾンビ映画”。そんな日本以上に、ゾンビを題材とした作品がブームになっているのが韓国だ。

【写真を見る】K-POPに続くか?韓国のゾンビコンテンツが世界でも大注目!(『感染家族』)

もともと韓国でもニッチなジャンルであり、それゆえほとんど日本に入ってくることがなかった韓国のゾンビ映画。しかし、現在は『感染家族』(公開中)、『王宮の夜鬼』(9月20日公開)と、注目作が立て続けに日本公開されるという状況になっている。この要因としてあげられるのが、全世界の156を超す国で公開される大成功を収めた『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)の存在だ。

ソウルから釜山に向かう高速鉄道の中で起きるゾンビによるパニックを描いた『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、『28日後...』(02)以降の一つの大きな要素である“走るゾンビ”を用いており、そのことが韓国映画の得意とするスピーディーかつ武骨なアクションとも結びついている。ゾンビ映画といえば、低予算というイメージがつきものだが、この作品は予算をしっかりとかけ、スリリングなエンタメ映画として作られたことで、新たな道を開拓。前日譚を描いたアニメ『ソウルステーション/パンデミック』(16)も作られるなど、大きな盛り上がりとなった。

万人が楽しめるエンタメとしての方向性をさらに推し進めていったのが、Netflixで配信されているオリジナルドラマ「キングダム」だ。1話あたり約2億円が費やされているという韓国ドラマ史上最高規模のこの作品もまた、“走るゾンビ”が登場し、骨太なアクションが展開される。加えて李氏朝鮮時代の宮廷を舞台にしており、渦巻く陰謀や権力闘争、愛憎劇というこれまた韓国の人気のジャンルと結びつき、世界中から絶賛を集めた。

9月20日(金)公開の『王宮の夜鬼』は、そんな「キングダム」の路線を突き進んでいる。日本でも抜群の知名度を誇るチャン・ドンゴンが出演している本作は、咬まれると白目&牙が生え、人間の生き血を求める“夜鬼”へと豹変する謎の感染病が蔓延する朝鮮時代が舞台。存亡の危機を聞きつけ、帰還した王子が国を守ろうと奮闘。一方で、国王の側近は夜鬼を利用し国家転覆を狙うという物語だ。

前作『コンフィデンシャル/共助』(17)で見事なアクションを作り上げたキム・ソンフンが監督を務めており、大広間でスピーディーに動き回る大量のゾンビを剣や弓を駆使して華麗に倒していく迫力満点の殺陣など、見応え抜群なものになっている。

一方、現在公開中の『感染家族』は、“コメディ”という韓国のゾンビ映画に新たな方向性を打ち出した1作だ。寂れた田舎でその日暮らしをするパク一家。ある日父が、突如現れたゾンビに噛まれてしまうが、なぜか若返ったことから若返りビジネスを打ち立て、成功を収めていく。しかし、副作用が起き、人々は次々にゾンビ化し、家族が暮らすガソリンスタンドに襲いかかってくることに…。

ゾンビに噛まれて若返る」という突飛なアイデアが効いた、ユーモラスな作品となっている本作。一家がゾンビを認識する時も“映画で観たやつ”とばかりに『新感染』をスマホでチェックするというオマージュギャグなども含まれており、その影響を感じさせる。

今後も『新感染』の続編や「キングダム」のシーズン2など、その勢いは衰えそうにない韓国発のゾンビ映画から、ぜひ目を離さないでほしい!(Movie Walker・文/トライワークス)

いま韓国ではゾンビ映画がアツい!(『感染家族』)