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追い越し車線2kmまで走っていいは間違い

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

あおり運転の誘因として注目を集めている「追い越し車線を走り続ける行為」

追い越し車線は本来、追い越しのためだけに使う車線で、追い越しを終えたら(もちろん安全確認をして)速やかに走行車線に戻らなくてはならない。

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「補足欄」には追い越し車線「約1.5km通行」の文字。

正当な理由なく追い越し車線を走り続けることは、「通行帯違反」という交通違反を犯していることになる。

30数年前に自動車免許を取得して以来、ずっと「追い越し車線はおおむね2kmまでなら走ってもいい」と思っていた。かなり遠い記憶だが、自動車学校でそう習ったからだ。

しかし、3年近く前、新東名高速道路を西向きに走行中、沼津近辺で青切符を切られたのは「通行帯違反」が理由だった。

確かにその時は追い越し車線を走っていたが、後続車に追いつかれたわけでもなく、そろそろ走行車線に戻ろうと思っていた。まさにその瞬間、どこからともなく現れたパトカーの赤灯が視界に入って来た。

そして、停止を求められたのだ。

わたしを停めた警察官の一言は、「ちょっと速かったですねえ」。速度違反をしたときのお決まりの一言である。

しかし、そのあと予想外の言葉が続いた。

「追い越し車線を走り続けたら違反になるのは知っていましたか」

「え? はい。(それは知っている。2km以上走ったらダメなのだ)」

(え? 追い越し車線2kmも走ったっけ?)と心の中で思いながらも署名をした。しかし、後日、「補足欄」を良く見たら、なんと「約1.5km通行」と書いてある!

え? 1.5kmでも捕まる? 2kmじゃないの?

実はその時は、気が動転していて、補足欄を確認することを忘れていたのだ。

静岡県警と自動車教習所に確認してみた

ネットで色々調べてみたら、同じように通行帯違反で捕まったひとたちがSNSに「1km走行でも捕まった」「1.5kmで捕まった」などと書いている。

そこで、静岡県警に聞いてみたところ……。

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教習所では「追い越し車線は2kmまで走っていい」

「追い越し車線はおおむね2kmまで走っていいと教習所で習ったのですが、違うんでしょうか?」

「2kmと言う規定はありません。追い越しが終わったら、速やかに走行車線に戻ってください。追い越し車線は、追い越しのためにだけ使われる車線です」

今日まで、「追い越し車線は2kmまで走っていい」と信じていたのに。なんで?

確かに教習所で習ったはず。でもそれも30年も前の話だからもしかして、最近は違うのかも? と思い、今度は神奈川県内、東京都
の自動車教習所4か所に聞いてみた。

「追い越し車線は何kmまで走っていいのでしょうか?」

「おおむね2kmですね」「だいたい2km以内で走行車線に戻るよう学科教習で教えています」「追い越しをして、走行車線に安全に戻るために必要な距離ということで約2kmと教えています」

などなど!ざっくりまとめると、4か所すべて「追い越し車線は2kmまで走ってもいい」との答えだった。

「通行帯違反」は、速度違反に次ぐ件数

教習所で「2km」と教えていても、実際には1kmでも1.5kmでも捕まっている。

追い越し車線を走り続ける「通行帯違反」に関しては年間どれくらいの取り締まりが行われているのだろうか?

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「通行帯違反」は、速度違反に次ぐ取り締まり件数。

平成30年交通安全白書にある、「平成29年高速道路における交通違反取締り状況」によると、総数は52万4161件。

1位は最高速度違反で37万4085件、それに続く2位が車両通行帯違反で6万1362件となっている。

速度違反に次ぐ2位とは、意外に多いと思うかもしれないが、平成26年は8万2459件あり、ここ数年は(取り締まり件数の総数が減っていることもあるが)通行帯違反の取り締まり件数は減りつつある。

対してあおり防止対策として大幅に増えているのが、「車間距離保持義務違反」の取り締まりだ。

平成29年が6139件だったのが平成30年には1万1793件と2倍近い件数にまで増えている。

車間距離を詰めて先行車両に接近する「車間距離保持義務違反」は、あおり運転につながるということだろう。

もちろん、それは否定しないが、ではなぜ適切な車間距離を取らずに先行車に接近する事態になるのか? ここにも注意が必要だ。

車間距離を取らずに接近する=先行車に追いつくということ。このような状況にも適用される道路交通法がある。

正しい追い越し車線の走り方をおさらい

追い越しが終わって走行車線に安全に戻れる状況でありながら、追い越し車線を走ることは「通行帯違反」になる。

また、後続車が接近してきた場合、法定速度以下で走っている先行車は道交法第27条「追いつかれた車両の義務」によって進路を譲らなくてはならない。

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追い越し車線の走り方次第、「あおり」運転にも繋がりやすい。

これは1車線の道路でも同様で、できるだけ左側に寄って先に行かせる義務がある。

最後に追い越し車線の走り方についてまとめる。

・追い越し車線は追い越しが終わったら安全を確認して走行車線に戻る。その際距離は関係なく、2km以下でも通行帯違反の取り締まり対象となり、逆に交通状況から渋滞などで2km以上走行せざるを得ない場合は違反とはならない。

・法定速度以下で走行中に追いつかれた先行車は後続車に道を譲る義務がある。追いつかれても道を譲らず後続車の走行を妨げることは、あおり運転を誘発することにもつながる。あおり運転のほとんどは、先行車がノロノロ走っていて道を譲らないことから始まっている。

「後ろにクルマが来ていることに気づかなかった」「煽られているのに気づかなかった」「なぜ自分が煽られているのか理由がわからない」というひともいる。

しかし周囲の交通状況を把握しないで走ることは、道交法第70条の安全運転義務違反→「操作不適」「前方不注意」「動静不注視」「安全不確認」「安全速度違反」「予測不適」「その他」の7区分のうち、「動静不注視」「予測不適」などに該当する。

あおり運転を誘発することなく常に周囲の交通状況にアンテナを張って安全運転を心掛けたい。


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