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バッテリー容量は12kWhへと増加

translationKenji Nakajima(中嶋健治)

英国のクルマ好きの場合、同じモデルで内燃機関とハイブリッドとがラインナップされていたら、通常の内燃機関の方を選ぶはず。これは、コンパクトカーでもスーパーカーでも当てはまる。

ハイブリッドバッテリーを搭載すればクルマは重くなり、慣性も大きくなるから、レスポンスが鈍くなる。車重が増えることでスプリングレートを上げる必要もでてくる。よって、走行パフォーマンスや洗練性、経済性とランニングコストや予算などのバランスを加味すると、運転を楽しみたい英国のドライバーなら、通常の内燃機関を選ぶ傾向が高いのだ。

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BMW 330e

では、新しいBMW 330eはどうだろう。BMWが3シリーズに与えた、まごうことなきプラグインハイブリッドではある。だが先述のステレオタイプとは異なり、330eのハンドリングはとても印象的なものだった。

価格は3万7875ポンド(492万円)からで、今回試乗したMスポーツの場合は3万9075ポンド(507万円)となっている。価格としては4気筒ガソリンの330iとほぼ同じだが、加速力では静止状態から100km/hに到達する時間で0.2秒ほど遅い。プラグインハイブリッドのメカニズムを搭載するぶん、同じエンジンの320iと比べて100kgも車重は重くなっている。

二酸化炭素の排出量はわずか39g/kmとなり、英国で社用車として利用する場合は税制面でも有利。先代F30型3シリーズ・プラグインハイブリッドに搭載されていたバッテリー容量は7.6kWhだったが、G20330eでは12kWhへと容量もアップした。EVとして走行可能な距離は、より厳しいWLTPテストの数字でも、40kmから65kmへと増えている。

標準3シリーズとしては最も強力なグレード

新しい330eは、電気モーターの力だけで走るEVモードでも、110km/hまでスピードを出すことが可能となった。2015年のF30型の場合は80km/hまでだったから、利便性も増したといえるだろう。だが走行スピードが速いほど、バッテリーの消耗も激しくなるけれど。

利便性の面での犠牲としては、330iから比較して100Lほど狭くなったラゲッジスペースがある。バッテリーを搭載し、燃料タンクの位置を変更したためで、容量は2シリーズよりも狭い375Lとなっている。

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搭載されているエンジンは、基本的に320iと同じ最高出力183psの2.0L 4気筒ターボ・ガソリン。1660kgの車重を持っているとしても、これだけあればエンジンだけのパワーでも足りそうだ。

そこへ330eの場合、8速ステップトロニックATに電動モーターが内蔵されており、通常は68ps分をアシストしてくれる。さらにスポーツモードでは「エクストラブースト」機能が利用できるようになり、一時的に112psにまでモーター出力を高めることもできる。

エンジンとモーターとの出力を最大限に発揮させれば、システム総合での最高出力は293ps、最大トルクは42.7kg-mにも達する。余裕で330iを超えるスペックだ。すなわち、6気筒エンジンを搭載したM340i xドライブが登場するまで、標準の3シリーズとしては最も強力なグレードとなる。静止状態から100km/hまでの加速時間は6.0秒とされている。

PHEVのカテゴリーでは秀でた説得力

実際に走らせてみると、スペック通りに速い。エンジンとモーターとが恊働した時のスタートダッシュは、驚くほどの加速力を披露する。パワーオンにするとデフォルトでEVモードとして始動し、デジタル・インスツルメントには、エンジンが始動するまでどの程度スロットルを踏み込めるのかが表示される。想像以上にEVの余力があったりする。

トランスミッションはシームレスで、330eの力強い加速感を支えている。だが、進行方向を変えていく場面では、330iほど機敏で繊細な印象は感じられない。といってもその差は顕著なものではなく、重量のかさむバッテリーはホイールベース間に収まり、フロントアクスルの構造も変わらないから、ハンドリングは充分に満足感を得られるものだとは思う。

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BMW 330e

中回転域以上で加勢される電気モーターのトルク感は、上質にチューニングされた自然吸気エンジンのようで、優れたスロットルレスポンスと力強さを味わえる。つまりアドレナリンが湧き出すような感覚ではないにしろ、チャレンジングな道を目の前に、怖気づいてしまうようなクルマでもない。

比較的短距離の自動車通勤をしており、自宅や職場で充電できる環境にあるのなら、330eのメリットを享受できるはず。反面クルマで移動する距離が200km以上になるユーザーなら、330iや330dを選んだ方が良い。他のプラグインハイブリッド・モデルと同じ条件だといえる。

3シリーズとしてみれば、通常の内燃機関モデルほどの魅力はないものの、プラグインハイブリッドというカテゴリーで見た場合、BMW 330eは最も説得力の高いクルマだとはいえるだろう。

BMW 330e Mスポーツのスペック

価格:3万9075ポンド(507万円)
全長:4709mm
全幅:1827mm
全高:1435mm
最高速度:230km/h
0-100km/h加速:6.0秒
燃費:48.8km/L
CO2排出量:39g/km
乾燥重量:1660kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボ+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:293ps/5000−6500rpm(システム総合)
最大トルク:42.7kg-m/1350−4250rpm(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック


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