現役キャリアに終止符を打ったトーレス、歴史に刻んだスーパーゴールの数々

 サガン鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスは23日、J1第24節ヴィッセル神戸戦に先発出場。世界中から注目の集まった引退試合は、1-6と惨敗を喫し、花道を飾ることはできなかった。日本でスパイクを脱ぐことになった世界的ストライカーは、キャリア通算で301得点を記録したが、これまで決めてきた数々のスーパーゴールには“ある共通点”がある。

 Jリーグで2シーズン目を迎えたトーレスだが、負傷離脱もあり、本領を発揮できない時間が続き、シーズン半ばで引退を決断。旧友の元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタが所属するヴィッセル神戸戦を最後に、18年間のキャリアに終止符を打つ決断を下していた。日本ではリーグ戦通算35試合5得点と、本領を発揮できずに終わったものの、トーレスと言えば、キャリアを通じて決めてきたスタンドを沸かせる鮮烈なゴラッソだ。

 キャリアを通じて名だたるビッグクラブに在籍してきたトーレスは、「DAZN」がラストゲームに向けて特集を組んだ「Count down to 8.23」でのインタビューで、キャリア最高のゴールを3つ挙げている。EURO2008決勝ドイツ戦でスペインを初の主要国際大会優勝に導く歴史的な決勝弾、2008-09シーズンリバプール時代のブラックバーン戦で後方からのロングボールを華麗に合わせたボレー弾、16-17シーズンのアトレチコ時代のセルタ戦でゴールに背を向けながらアクロバティックに叩き込んだバイシクル弾だ。

 いずれもワールドクラスの一撃であることに間違いないが、この3つのゴールには共通点がある。シュートを放つ際、一切ゴールを見ていないのだ。インタビュー中に、ゴールの方向を確認していないことを指摘された際、「ゴールは動かない。見ていなくても、何が起きているかイメージできる」と笑みを浮かべて回答。ゴールを見ない。まさにそれこそが“点取り屋”トーレスの真骨頂だった。

 プロデビューを果たしたアトレチコ第1期でも、19歳で主将に抜擢されたトーレスが2003-04シーズンのベティス戦で決めたトップスピードから繰り出したジャンピングボレー弾は世界に名を轟かせるきっかけとなったゴラッソだが、これもゴールを確認せずにネットに突き刺した離れ業。そして、昨季に残留を手繰り寄せた横浜F・マリノス戦の決勝弾も、目視せずに相手DFをかわして振り抜いた右足のシュートだった。

トーレスを世界的ストライカーに飛躍させた“感覚的”なスーパーゴール

 スペイン代表でも長年にわたり2トップを組んだ神戸FWダビド・ビジャは、冷静かつ的確なシュートで得点を積み重ねるフィニッシャーだったのに対し、トーレスは“ゴールを見ない”プレーが象徴するように、まさしく天才的な感覚でゴールを奪うストライカーだった。対照的な特徴を擁する2人が前線に揃っていたことも、黄金期を迎えた“無敵艦隊”のストロンポイントでもあった。

 一方で、感覚的なプレーが多い分、スランプにも陥りやすい一面もあった。11年に加入したチェルシーでは、デビューから初ゴールまで903分間もかかるという大不振にも陥った。キャリアの全盛期を過ごしたリバプールでさえも、当時の指揮官ラファエル・ベニテス監督(現・大連一方)の指導を受けた居残り練習で、ほとんどのシュートゴールマウスから外してしまう不恰好さを見せていたという。と思いきや、翌日の試合では信じられないスーパーゴールを叩き込む別人ぶりを発揮したというのはファンの中でも有名な話だ。

 現役ラストマッチの神戸戦を終え、最後の記者会見に臨んだトーレスは、「1人の選手がFWとして生きていくと決めたなら、ゴールを決め続けなければならない。どんなに良いプレーをしても、決めなければ外される世界」と、ストライカーとしての生き様を振り返った。スランプに陥る苦しい時期も過ごした“神の子”だが、まさしく栄光と挫折に満ちた紆余曲折のキャリアの中で決めてきた“ゴールを見ない”ゴールは、これからもサッカーファンの中で語り継がれていくことに違いないだろう。(Football ZONE web編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)

18年のキャリアで多くののスーパーゴールを決めてきたFWトーレス【写真:Getty Images&安藤隆】