夏休みの宿題の定番といえば「読書感想文」ですが、その作品などを応募する「青少年読書感想文全国コンクール」(全国学校図書館協議会など主催)の応募条件がネット上で話題になっています。ホームページ内の「Q&A」の一つ、「電子書籍を読んで感想文を書いてもいいの?」という質問に「紙媒体での書籍に限りますのでご応募いただけません」とあるからです。

 これについて、SNS上では「昭和かよ」「書店のためのコンクール?」「主催者が図書館の協議会だからでは?」などの声が上がっています。コンクール事務局に聞きました。

対象の本をそろえて審査

Q.電子書籍が駄目な理由を教えてください。

事務局担当者「当コンクールでは、作品の審査にあたり、児童生徒が読んだ本(対象図書)を用意し、感想文の内容が対象図書の内容に沿ったものか、引用等が適切かどうかなどを確認することになっています。応募の際に書いていただいている『応募票』(書名、著者名、発行所などを記入する)をもとに対象図書を特定し、本をそろえて審査を行います。

電子書籍などウェブ上の作品は随時更新されるケースもあり、児童生徒が読んだ内容を特定するのが難しく、また、電子書籍は閲覧するために機器が必要なことなど、審査対象に含めるには新たな対応が必要となります。当コンクールは、市区町村都道府県、中央審査会という段階があります。すべての審査会でウェブ上の作品や電子書籍に対応した審査を導入することは現時点では難しく、これらを対象外としています」

Q.紙媒体の書籍でも改訂はあり得ます。審査時にそろえる本は、応募者と同じ版の本なのでしょうか。

担当者「刊行された出版社はもちろん、単行本か文庫本か、発行年や版まで、なるべく同じものをそろえています」

Q.電子書籍をプリントしたものを添付しても駄目なのでしょうか。

担当者「作品によっては全ページプリントアウトすると膨大な量になります。それを添付して応募することは、応募者側にとっても、作品を受け付ける各地のコンクール事務局(主に学校の先生で運営)にとっても負担が大きく、現時点では難しいと判断しています」

Q.紙媒体(書籍)もあるものの、「青空文庫」などでも公開されている作品(芥川龍之介太宰治の作品など)を電子書籍で読んだ場合はどうなるのでしょうか。電子書籍か紙媒体か、チェックできるのでしょうか。

担当者「応募時に記入していただく応募票の書誌情報をもとに判断します」

Q.コンクールのホームページの中で「読書感想文は、何のために書くの?」という問いに、「書くことによって考えを深められるからです」とあります。その目的であれば、媒体は関係ないように思います。ネット上では「本を買わせたいのでは?」「学校図書館の利用推進が目的だからでは?」という声もあります。

担当者「どんな媒体の本を読んで感想文を書いても、感想文を書く意義や児童生徒の成長に寄与すると考えています。本コンクールは、電子書籍で読書をすることや電子書籍を読んで読書感想文を書くこと自体を否定しているものではありません。

また、電子書籍を除外することで、紙の本の購入や図書館利用を推進する目的でもありません。(図書館以外から)借りた本や、もともと自分で持っていた本を読んで作成した読書感想文でも応募できます。あくまでもコンクールの運営上、特に審査の面で、現状では電子書籍に対応するのが難しいため対象から除外しているものです」

Q.電子書籍を使うことで、紙媒体より多くの作品を読むこともできます。電子書籍に門戸を開くことで「読書離れ」を低減する効果もあると思います。

担当者「電子書籍等の利用が拡大している現状は認識しており、国が進める学校現場のICT化の動向や整備状況、児童生徒の電子書籍の利用状況などを十分考慮しつつ、各地区の審査員の先生方のご意見をもとに、今後、電子書籍等を対象に含めるか判断をしていく予定です」

オトナンサー編集部

「電子書籍は不可」と説明している部分(青少年読書感想文全国コンクールホームページより)