毎年恒例の日本テレビ系チャリティー特番「24時間テレビ 愛は地球を救う」が放送されました。今年は参院選において、「れいわ」が結党からわずかな期間で支持を集めて躍進しました。自民党が主導した特定枠を効果的に使った点に戦略性を感じます。来年は、東京五輪パラリンピックを控えており、障害者政策に注目が集まっています。今回は、24時間テレビの是非について解説します。

参加者のギャラにまつわる論点について

24時間テレビ」について、募金の使い方に異論を唱える人がいます。公益社団法人24時間テレビチャリティー委員会として、事業報告書/決算報告書/事業計画書について情報公開を行っています。批判をされる方は、公開されている情報を精査してください。筆者は公開情報について高く評価しています。

「参加者の芸能人にギャラを支払うことはおかしい」と言われる人がいます。しかし、1回の放送で億単位の募金を集めることができる「24時間テレビ」の存在は貴重です。障害者支援という大義があるため、スポンサーもつきやすくなります。障害者支援活動を特別番組として長期にわたって放映しているのは日本テレビだけです。番組終了後には、賛否を含めて話題になるため、啓蒙や教育的効果が期待できます。

「障害者に対する扱いがあまりに一面的」という意見や、障害者のチャレンジや芸能人のチャリティーマラソンにも批判があります。しかし、番組の目的は障害者理解を深めることです。これらのチャレンジによって、多くの人に感動や勇気を与えたり理解が深まったりするのなら、許容すべきではないかと思います。

「障害」とは一体何なのか

 アカデミックの領域では、インペアメント(個人の障害)とディスアビリティー(社会の障害)について、系譜や概念から区別しています。米国と英国では研究が盛んですが、米国では「社会の偏見」「健康な者を中心とした価値観」、英国では「社会制度上の障害者差別や排除システム」などが該当します。

 障害を「個人の属性」ではなく「社会の障害」として捉えることは、日本で話題になる「障害」を「障がい」と表記することの議論にも似ています。しかし、障害の問題とは、「障害」を「障がい」に変えれば解決するような問題ではなく、このようなことが議論になること自体が「社会的障害」であると考えられます。

 数年前、「アイスバケツチャレンジ」が世界的ブームになりました。ALSの研究を支援するため、バケツに入った氷水を頭からかぶるか、米ALS協会に寄付をする運動でしたが、今年は話題を聞きません。残念なことです。

「私は有名な○○さんから指名されちゃった」「この活動は継続させて、多くの疾病に派生させるべきだ」。このように話していた人はどこに消えてしまったのでしょうか。有名なコメンテーターの人々も、ブームの際にメディアで力説していました。

 今年の東京は、8月に入ってから暑さが厳しくなり、最高気温35度以上の猛暑日が過去最多となりました。こんな暑い中で氷水をかぶったらどんなに気持ち良いことでしょう。疾病や福祉に対する意識啓蒙を深めるために継続させるべきではないでしょうか。視聴者はあのりりしい姿を忘れていないと思います。

 障害者が、障害のない人と同じように生活するには、周囲の人が障害を正しく理解することが大切です。その意味で、1978年に始まった「24時間テレビ」の意義は大きいのです。放送後に出現する「批判だけする人たち」にも違和感を覚えます。そのような人たちは、これまでどのような活動をしてきたのでしょうか。お聞きしたいものです。

障害者政策は喫緊の課題

「ノーマライゼーション」は、デンマークバンク=ミケルセンによって提唱された概念です。「障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿である」というものです。国際障害者年(1981年)の国連決議を経て、今では社会福祉の基本的な考え方として理解されています。

 今回の参院選を経て、2人の障害者が国会議員になりました。昭和初期に造られた国会は障害のある人に親切な建物とは言えません。今後、国会のバリアフリー化は一気に進むことが予想されます。しかし、障害者の介助は自費が原則です。介助や設備の費用を公費で負担する場合、一定の基準を満たす必要があると思われます。

 また、国会議員は任期中において選挙民の意思を反映した行動を取ることが原則です。そのため、多くの特権や手当が存在します。特に歳費と手当に関しては庶民感覚とズレがあるとして多くの意見がありますが、介護費用に係る費用はすべて血税です。問題提起は必要ですが、是非を含めて慎重な議論が求められます。

 なお、筆者は表記について「障害者」を使用し、「障がい者」は使用しません。過去に、多くの障害者が権利を侵害されてきた歴史が存在します。それらの歴史について、言葉を平仮名にすることで本質が分かりにくくなる危険性があるので「障がい者」を使用しません。障害者政策は私たちにとって喫緊の課題です。

コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員 尾藤克之

「24時間テレビ」総合司会の羽鳥慎一さん(2015年10月、時事通信フォト)