「これは本当にネイマール、獲った方がいいかも」そんな風に私が眉をしかめていたのは月曜日、レアル・マドリーハメス・ロドリゲスが右ふくらはぎを痛め、今週末のビジャレアル戦出場が絶望的になったという記事を見つけた時のことでした。いやあ、いよいよ9月2日の移籍市場クローズまで1週間を切ったところでPSGエムバペカバーニが負傷。非常にネイマールを出しにくい状態になってしまっただけでなく、バルサも1年レンタル移籍の後、1憶7000万ユーロ(約200億円)で買い取りという最終オファーを役員会で詰めている最中とあって、あまりマドリー入りに追い風が吹いているとは言えないんですけどね。

それどころか、この夏、売却利益を出したのはマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)、コバチッチ(チェルシー)、ラウール・デ・トマス(ベンフィカ)、テオ(ミラン)ぐらいでせいぜい、アザール(チェルシーから移籍)分の出費を埋めたか、埋めないかぐらいの彼らに、ネイマールの超高額移籍金を出す余裕があるのかどうかもわからず。でも、せっかくジダン監督に戦力復帰を認められたハメスまでいなくなっては一体、誰が失点を上回るだけのゴールを挙げてくれる?

ええ、プレシーズン中にヒザの靭帯を断裂したアセンシオは言うに及ばず、開幕前日に太ももを痛めたアザールも9月の代表戦明けまでは戻りませんし、ブライムもこの夏、2度目の負傷離脱中。放出予定のマリアーノもここずっと練習に出ておらず、太ももにケガをしたロドリゴなど、治ってもEU外選手枠を人数オーバーするため、使えないとなれば、リーガ3節の結果次第では早々にクライシス突入、ジダン監督の進退が問われる可能性も出てくるかと。

ちなみに開幕戦ではセルタに1-3と快勝、好調発進したかに見えたマドリーの先行きにどうして、いきなり暗雲が立ち込めてきたのかというと。全ては土曜のバジャドリー戦のせいで、うーん、私も今季のサンティアゴ・ベルナベウ初試合だったため、期待していたんですけどね。モドリッチがバライドスで退場、この日は出場停止だったため、ベンゼマをワントップに、その後ろにベイル、ハメス、イスコを並べた4-2-3-1でスタートした彼らは序盤から、ボールを独占。圧倒的優勢でゲームを進めていたんですが、いつになってもゴールが決まってくれないのには前半、スタンドで西日に正面からさらされていたせいもあって、げんなりしてしまったのは私だけではない?

すると後半10分、ハメスがビニシウスに交代。どうやらこの時にはもう、ふくらはぎを痛めていたようですが、昨季は逆転敗退したCL16強対決アヤックス戦2ndレグでケガするまでは唯一、チームの希望の光に見えたビニシウスもアザール加入のせいで、右サイドに回されたせいでしょうかね。この夏のプレシーズンから別人のようにパッとせず、更に24分にはイスコの代わりにヨビッチが入ったものの、最初のヘッドがゴールバーを直撃した後は得に目立つシーンもありませんでしたしね。それでも39分にようやく、バランのパスをゴールに背を向けて受けたベンゼマが体をクルリと一回転、バジャドリーにレンタル移籍をしたルニンがベンチから見守る中、GKマシップを破って先制点を決めてくれた時にはこれで勝てると思ったものでしたが…。

甘かったですね。失点にも気落ちしなかったバジャドリーに43分、まさか逆襲を喰らうことになるとは!自陣でクロースが遠くにクリアしなかったボールをオスカル・プラーノが拾い、マドリーのエリアに向かうと最後はセルジ・グアルディオラへパス。ボールに釣られて、中央に向かったカルバハルのマークが外れていたおかげもあって、その日、2度程、絶好機に決められなかった彼のゴール前からのシュートをGKクルトワも阻止できなかったから、さあ大変!同点にされた直後にはベンゼマルーカス・バスケスに代え、ロスタイムの4分も何とか勝ち越し点を取ろうと粘ったマドリーだったんですが、結局、1-1の引き分けで終わってしまうことに。

いえ、今は夏休み中でスタンドに観光客が多かったのが幸いしたか、ホーム開幕戦がpito(ピト/ブーイング)の嵐で終わった訳じゃないんですけどね。まさか、リーガ2試合目から、マドリーが勝てなかった時の定番である言い訳会見をするため、キャプテンのセルヒオ・ラモスミックスゾーンに出て来ないといけないとはこれ如何に。ええ、9月にアマゾンプライムで公開されるドキュメンタリーのトレイラーがお目見えしたばかりのせいか、何故か、チロル帽をかぶって現れた彼は「No pienso que haya falta de gol/ノー・ピエンソ・ケ・アジャ・ファルタ・デ・ゴル(ゴール不足だとは思わないよ)。ウチはチャンスを作ったし、とてもいいサッカーをしていたからね。後ろから見てて、自分も楽しんだぐらいだ」と別に、あれだけシュートが入らなかったことは気にならないようでしたけどね。

そのせいで昨季など、勝利数が伸びず、10月末にはロペテギ監督(現セビージャ)の解任に繋がったのを忘れていない?まあ、一番簡単なのはお隣さんのように1点しか取れなくても勝てるよう、守備力を上げることですが、伝統的にgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)体質のマドリーですからねえ。日曜のビジャレアル戦までにはファンのためにもネイマールにしろ、誰にしろ、ゴールを沢山入れてくれるアタッカーを獲った方がいいんじゃないんでしょうか。

そしてそのラモスが出て来るのを待っている間、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにアスレティックを迎えた弟分のヘタフェは前半5分にセパのクロスをラウールガルシアに決められて失点し、その5分後にはククレジャのアシストでマタが同点ゴール。以降、スコアは動かず、こちらも1-1で終わり、何とか今季最初の勝ち点をゲットしたんですが、初白星は土曜のアラベス戦までお預けに。まあ、次もホームゲームですし、ワンダメトロポリターノで退場したエースのホルヘ・モリーナもその時には戻って来るので、彼らについてはあまり心配しなくてもいいかと思いますが、いよいよ今週金曜には、木曜のCLに続き、ヨーロッパリーグ・グループステージの抽選もありますからね。アーセナルマンチェスター・ユナイテッドといった有名どころと当たるかもしれないと、ヘタフェファンはワクワクして待っているのでは?

え、それで翌日曜、私が正午に見に行ったRMカスティージャの2部B開幕戦はどうだったのかって?いやあ、本当は久保建英選手が出場するものと思って、対戦相手のラス・ロサス(3部から昇格)のホームであるポリデポルティボ・デエサ・デ・ナバルカルボン(市営総合運動場)への行き方を調べたりしたんですけどね。先週中にマジョルカへのレンタル移籍が決まったため、結局はラウール監督のデビュー戦を見るだけになってしまったものの、こちらも兄貴分と足並みを揃え、1-1のドローで終了。

一面しかないスタンドの向かいは施設のプールで水着姿で試合を見ている人が結構いたのもビックリでしたが、地元のファンが熱心にラス・ロサスの選手たちを応援していたのも印象的で、もしや昔のヘタフェやレガネスもこんな感じだった?ちなみに試合後、施設にはプレスルームもないようで、ピッチの片隅で会見をしたラウール監督は久保選手について、「Le deseo mucha suerte en Mallorca/レ・デセオ・ムーチャ・スエルテ・エン・マジョルカ(マジョルカでの幸運を願っている)。指導できたのは嬉しかったが、タケはトップチームの選手で、レンタル移籍を選んだ」と話していましたが、残念ながら、その日の夕方にあったレアル・ソシエダ戦に当人は招集されず。

実は前夜のバジャドリー戦の時もオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)のマドリー番記者が「セルヒオ監督が久保選手のレンタルを承諾しなかったのは、マスコミの過剰取材でロッカールームの雰囲気が乱されるのを嫌ったせい」と言っていましたし、マジョルカのビセンテ・モレノ監督も試合前の記者会見で久保選手への質問が相次いで、ちょっと迷惑そうにしていましたからね。もちろん、当人が練習で優れているところを見せつければ、次のバレンシア遠征に連れて行ってもらえると思いますが、さて。そうそう、2部Bの公式戦を生で見るのは初めての私でしたが、その日はそんなにラフプレーはなく、むしろ怖かったのは…。

だってえ、その夜、レガネスとアトレティコのそれぞれのマスコット、スーペルペピーノとインディのほのぼのとした共演で始まった、ブタルケでの兄弟分ダービーの激しいことといったら、もう。ロディが開幕戦で退場して左SBがいなかったアトレティコは本職CBのエルモーソに任せるのも、中盤の方が好きなサウールに任すのもシメオネ監督がためらったか、それとも元々、5人DF制で挑まれるのが苦手だったせいかもしれないんですけどね。ヒメネス、サビッチにエルモーソを加え、CB3人プラス、サルールとトリピアーのカリレーロ(サイドを長距離移動するSB)のミラー布陣で対抗したまでは良かったんですが、もうしょっちゅう、そこここで選手が倒れているって、一体、どうなっている訳?

それには審判が鬼のようにファールをスルーしていたせいもあったんですが、これじゃ、心配になりますよ。久保選手と1歳しか違わない、19歳ながら、レガネスの年間予算3倍の移籍金で加入した細身のジョアンフェリックスがそのうちケガさせられてしまうんじゃないかって。ただ、負傷者が先に出たのはホームチームの方で27分にはCBの一角、タリンが痛みを訴え、ブスティンサに代わったんですが、アグレッシブな守備はまったく変わらず。並行して、先週は1部昇格組のオサスナの乱暴なプレーに挑発され、レガネス側もやり返すようになっていたのと同様、サビッチやヒメネスがエン・ネシリを何度も羽交い絞めにしていたとなれば、これってお互い様でしょうか。

そんな中、まず勝負に出たのは後半、レガネスがジョナタン・シウバアトレティコもサウールのシュートがゴールバーを直撃した後、エルモーソを下げてビトロを投入。通常の4人DFに戻したシメオネ監督で26分、見事にこの交代策が的中します。ええ、後でペレグリーノ監督も「Fue un partido muy cerrado y ellos encontraron la calidad para ganar y nosotros no/フエ・ウン・パルティードー・ムイ・セラードー・イ・エジョス・エンコントラロンン・ラ・カリダッダ・パラ・ガナール・イ・ノソトロス・ノー(とてもチャンスの少ない試合で彼らは勝つための質の高さを見つけ、ウチは見つけられなかった)」と嘆いていたんですが、右サイドからボールを持って上がったジョアンが敵DFの隙間を縫ってビトロにラストパス。

これを今季はプレシーズンからやる気を見せつけ、「Quiero demostrar que el Atlético hizo bien en ficharme/キエロ・デモストラール・ケ・エル・アトレティコ・イソ・ビエン・エン・フィチャールメ(アトレティコが自分を獲得して良かったと示したい)」という、ここ2年、セビージャから移籍して以来、故障などにも悩まされ、真価を発揮できなかった彼が迫り来るオメロウをものともせず、シュートを決めて先制点を挙げてくれたから、ビクリしたの何のって。するととうとう、レガネスもオメロウに代えてアルナイスを入れ、CB3人ではなく、FW3人で反撃を試みたんですが、最後は再びフェリペを使って、CB3人に戻ったアトレティコからは点を奪えず。そのまま0-1でブタルケ初勝利を果たし、2週連続、弟分たちに貫禄を示すことに。

え、といってもいくら、シメオネ監督が以前、「Ya no somos el equipo del pueblo/ジャー・ノー・ソモス・エル・エキポ・デル・プエブロ(もうウチはオラが村のチームではない)」とコメントしたのを、「いくら経営規模的に成長したとしても社会的、精神的、感情的にウチはオラが村のチーム。そういう根っこを持っている」と訂正したとて、ジョアンに代表されるような高額選手がいるんだから、レガネスやヘタフェとガチンコに勝負するのではなく、サッカー的に1つ上のランクを目指してくれてもいいんじゃないかって?

まあ、そうなんですが、試合中、レガネス勢に攻め込まれ、一時はあまりに味方がエリア内のボールをクリアできず、怒っていたGKオブラクも「いいサッカーをしてファンを楽しませたいけど、lo importante es ganar/ロ・インポルタンテ・エス・ガナール(大事なのは勝つことだからね)。誰に訊いたって、いいプレーをして0-0で終わるより、1-0で勝つ方を選ぶよ」と達観していましたからね。今週日曜のエイバル戦ではジエゴ・コスタも復帰できそうですし、プレシーズンにはお隣さんに3-7の大勝利という、攻撃力爆発の試合もあった彼らですから、今はまだ時折、ジョアンが才能のほとばしりを披露してくれるだけでも十分かと。

一方、これで開幕ホーム戦2連敗となってしまったレガネスは土曜にベニト・ビジャマリンでベティス戦となりますが、何せ相手もまだ今季、勝ち点を獲得してない上、日曜夜に家に着いた私が見たのはメッシルイス・スアレスもデンベレもいないバルサにカンプ・ノウで先行しながら、グリーズマンの入団初公式戦ゴールを含むdoblete(ドブレテ/2ゴールのこと)などで、5-2の逆転負け。相当、悔しい思いをしていますからね。ここは気合を入れて勝利して、代表戦のparon(パロン/リーガの停止期間)に入ってくれるといいのですが…レガネスも攻撃陣の最後の補強を待っているのはマドリーと同じです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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