エンジニアの方の”あるかもしれない”日常風景をデフォルメしてコメディタッチに描く本連載「エンジニアあるある」。さて、今回はどんな風景なのでしょうか...

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障害が発生した時のエンジニアはいきり立っています。張り詰めた空気によって、半径1m以内に近づくと、露出した肌に擦過傷が生じるほどです。エンジニアがしたいのは、問題の切り分けと原因の絞り込み。それができなければ、システムのありとあらゆる部分の検証をしなければなりません。そんなことをやっていたら、復旧はいつになるかわかりません。システムによっては1分止まるだけで、何10億円の損害が出るというケースもあり、原因の絞り込みから特定は一刻一秒を争います。それは、緊急を要する現場に到着した救急隊員と同じです。トリアージをいかに迅速に行えるか。それで普及作業の態勢が決まってしまうのです。

エンジニアはユーザーに対して、まず「何をしましたか?」と尋ねます。その回答は十中八九「何もしてないんですけどね…」というもの。そんなわけがありません。何かおかしなことをしたから、こんなことになっているわけです。

ユーザーはシステムを使う立場なので、原因を特定できないのは仕方ないことです。「ひょっとしたら…」「参考になるかどうかわからないけど…」というレベルでかまわないので、些細なことでもエンジニアに伝えてください。エンジニアはその小さな情報から「ひょっとしたら…」と原因の絞り込みを行えることがあります。そんな時、あなたはエンジニアの素晴らしいプロフェッショナリズムを目の当たりにすることになるでしょう。普段のエンジニアは、パソコンの前でドーナツを食べているだけにしか見えないかもしれませんが、あれは仮の姿なのです。

(イラスト:ConChan)

「エンジニアあるある」第32回障害が発生したユーザー企業の「何もしていないのに」の言葉は頭から信じていない。