最近、日本と韓国は政治的には対立傾向にあるが、旅行するには問題ないどころか、航空券も値下がりし、レートが日本からの旅行者に圧倒的に有利なので、今がまさに行きどき、食べどき、遊びどき。

【写真16枚】ソウルの注目スポット&グルメを写真でさらに見る

今回は今だからこそ楽しめるソウル中心部のチープグルメやアクティビティをお教えしよう。

おわんになみなみと注がれた生マッコリが1杯90円! しかもつまみ付き

話題の鍾路3街(チョンノサムガ)エリアには韓国では珍しい立ち飲み屋が2軒ある。

鍾路3街駅の8番出入口から歩道をそのまま進み、宗廟(世界遺産)に突き当るところを右方向に道なりに歩くと、すすけた緑色のテントがかかっているのが『ドレミジャンスルチプ』(主人は男性)。

歩道をそのまま数メートル進むと、エンジ色テントがかかっているのが『トゥンスンネ』(主人は女性)だ。

2軒とも1000ウォン(約90円)で、おわんに注がれた生マッコリかショットグラスの韓国焼酎が飲める。もともと、このエリアで憩うお年寄りが多い店だが、最近は懐古趣味がブームなので、若者の姿も見られるようになってきた。

店の人に「マッコリ ジュセヨ(マッコリください)」「ソジュ ジュセヨ(焼酎ください)」と言って1000ウォンを渡せば、サッと酒が出てくるので外国人旅行者でも利用しやすい。

つまみはテーブルの上に並んだキムチナムル、ひと口チヂミソーセージ、ふかしたジャガイモなどが食べ放題。つまようじで刺して食べる。

2軒とも1~2杯飲んで帰る人がほとんどなので、長居は禁物。ここで勢いをつけて、酒飲み天国、鍾路3街の迷宮に飛び込もう。

ドレミジャンスルチプ』鍾路区鳳翼洞50 09:00~19:30 無休
『トゥンスンイネ』鍾路区鳳翼洞51-12 11:00~18:00 無休

鍾路3街駅5番出入口付近でクッパが180円! 大盛り素麺が220円!

今ならクッパが2000ウォン(約180円)で食べられるのが、鍾路3街駅5番出入口のすぐそばにある『ソムンナンチプ』。

日本で言えば『NHKのど自慢』に当たる人気テレビ番組『KBS全国のど自慢』の名物司会者ソン・ヘさん(92歳、現役)の名前が冠された店だ。

この辺りは最近こそ若者が増えたが、もともとは東京の巣鴨のようなシニア天国だったため、若者や外国からの旅行者は入りにくい雰囲気だった。

しかし、ここ数年、駅の北側にある益善洞(伝統家屋をリノベーションしたカフェやレストランの街)が人気を博したため、この店の客層も多様化している。

料理はウゴジタンと呼ばれる大根の干し葉のスープだけだから、席に着けば、スープとごはん、大根キムチがサッと出てくる。

店先の大鍋で煮立っているスープは牛肉でダシをとっているので2000ウォンの食べ物とは思えない旨味がある。激辛ではないが、コショウがきいているので、ごはんが進む。

一方、韓国版立ち食いそばといえるチャンチククス(汁かけ素麺)が2500ウォン(約220円)で食べられるのが、鍾路3街駅5番出入口をのぼると右手に見える、1階部分がトンネルのような車道になっている楽園商街ビルの地下市場だ。

地下市場などというと怪し気に聞こえるかもしれないが、シニア客が多いだけで、いたって健全な空間。

市場の中央には、不統一なデザインのテーブルや廃校から払い下げられたような椅子を並べた屋台風の食堂が数軒あり、チャンチククスのほか、ピビムククス(辛くて酸っぱいソースがけ素麺)が3500ウォン(約310円)、カルククスが4000ウォン(約360円)、コンククス(豆乳スープの冷麺)が5000ウォン(約450円)で食べられる。

チャンチククスはイリコダシの関西風スープで、あっさりしていて朝食にぴったり。麺の量は日本の立ち食いソバの1・5倍はあるだろう。

ムンナンチプ 鍾路区楽園洞241 04:30~22:00 無休
楽園地下市場 鍾路区楽園洞284-6 11:00~21:00 無休

100円以下でバス旅ができる!

90円でソウル下町ローカル路線バスの旅

韓国ドラマウォッチャーなら、緑色のマイクロバス住宅街を走る場面を見たことがあるのではないだろうか。

あれは日本でいうコミュニティバス。韓国ではマウル(村)バスと呼ばれている。

ソウルや釜山をはじめとする大都市の交通手段で、大型車が通れない狭い道や急坂が続く住宅地と最寄りの地下鉄駅などを結んでいる。

韓国では通勤通学に自転車を使う人が少なく、ソウルや釜山は東京や大阪より坂が多いので、マウルバスは重要な交通手段だ。

外国人旅行者がマウルバスを利用する機会は少ないだろうが、ソウルの下町的な風景を気軽に楽むことができるので、リピーターにおすすめだ。

料金はたったの1000ウォン(約90円)、交通カードを使えば9000ウォン(約80円)なので気軽に乗れるし、始点から終点まで乗っても30分ほどだ。途中、気になるところがあれば、途中下車して散歩したり、お茶したりするのも楽しい。

マウルバスは短い間隔で運行されているので、停留場の場所を覚えておけば、散歩の帰りにまた乗って最初の乗車地に簡単に戻ることができる。

マウルバスデビューに最適なのが、南は日本の旅行者にもなじみのある崇礼門(南大門)から市庁駅や光化門、景福宮駅、通仁市場などを通り、北は水聲洞渓谷まで行く「鍾路09」という路線名のバスだ。

おすすめは、油トッポッキで有名な通仁市場で降りて、そのバスが進んで行く方向にのびるカフェ・レストラン通りを散歩し、バスの折り返し地点(終点)である水聲洞渓谷まで10分ほど歩いて行くコースだ。

水聲洞渓谷は仁王山の登山口で、ついさっきまでソウル中心部の喧騒の中にいたのが嘘のような水音と鳥の声、青い空と木々の緑、清々しい風に出合える場所だ。ここでは、舗装されている登山道を10分ほど歩くだけでもリフレッシュできる。

帰りは折り返し地点からマウルバスに乗ってソウル中心部に戻ってもいいし、再び通仁市場まで歩いて市場見物するのもいいだろう。

(つづく)

『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』発売記念トークイベント


新刊『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』(双葉文庫)の発売に際し、本コラムの筆者が来日してトークイベントを行います。
日時:9月17日(火)19:30~21:00 会場:西荻窪駅前の旅行専門書店『のまど』。参加申込受付中。

立ち飲み屋『トゥンスンイネ』の作り置きのつまみ