木造耐震設計事業などを手掛けるエヌ・シー・エヌは、9月1日の「防災の日」に向けて、“災害時に安心・安全だと思う場所に関する意識調査”を実施した。

この調査は、全国47都道府県の771名を対象に、インターネットで調査を行ったもの。「大きな地震が発生した際に、安心・安全だと思う場所」についてたずねたが、今回、“安心”を「心が安らぐ・落ち着くかどうかの主観的な気持ち」、“安全”を「倒壊しにくい・しやすいなど機能・構造面での客観的な根拠にもとづくもの」として定義した。

まず、大きな地震が発生した際に、「安心」だと思う場所についてたずねたところ、トップ3は「自宅」(49.5%)、「指定の避難場所」(34.6%)、「近隣の学校」(26.6%)に。有事の際には普段住み慣れている自宅が、心理的な落ち着きや安らぎを与えてくれるようだ。また、現在の住まいの形式別に見ると、戸建に住む人は51.4%、戸建以外に住む人は47.5%が「自宅が安心」と回答した。

一方、「安全」だと思う場所についてたずねると、「指定の避難場所」(38.1%)、「自宅」(33.7%)、「近隣の学校」(26.5%)がトップ3に。もっとも「安心」だった自宅が、「安全」視点になるとポイントを大きく減らし2位となっている。実際に自宅を「安心」と回答した382名の中でも、自宅が「安全」であると答えた人は61.0%どまりと、約4割の人は「自宅は安心だが安全ではない」と考えていることを示唆している。

次に、大きな地震が起きた際に避難すると思う場所についてたずねると、「指定の避難場所」(34.2%)、「自宅」(24.6%)、「近隣の学校」(14.0%)と、「安心」ではなく「安全」だと思う場所のランキングと一致する結果に。有事の際には、心理面の落ち着き・安らぎだけではなく、やはり機能・構造的に倒れにくいとされる場所に優先して避難したい、という意識が見られた。

自宅を「安心」と答えた人のうち、実際に避難すると思う場所を「自宅」と答えた人は38.5%だったが、自宅を「安全」と答えた人は、同じ質問に44.6%が「自宅」と答えていることからも、実際の避難場所を決める際には安心よりも安全を重視する傾向が伺える。

さらに、大きな地震の際に自宅のどこが安心・安全だと思うかについても質問。“安心”は「居間・リビング」(32.6%、「トイレ」(21.1%)、「寝室」(15.0%)、安全は「居間・リビング」(23.3%)、「トイレ」(19.6%)、「風呂場」(11.8%)という結果に。「居間・リビング」については安心・安全両方で1位ではあるものの、“安心”のポイントよりも“安全”は9%程下げた。

では、大きな地震がもっともきてほしくない自宅内の場所はどこかをたずねると、1位は「風呂場」(34.9%)で、以下、2位「キッチン・台所」(11.5%)、「トイレ」(10.4%)と、風呂場が大差をつけ1位となった。やはり裸の状態のお風呂では、急な地震に対応ができないとの不安感が大きいのかもしれない。

そして、そもそもの話として、自宅に耐震性能を備わっているかどうかについても質問。まず、「耐震」という言葉と意味を知っているかどうかの問いには、「意味まで理解している」(69.2%)、「聞いたことはあるが意味はわからない」(23.8%)、「聞いたことがない」(6.9%)に。そこで「耐震」という言葉を聞いたことがある人に、自宅が耐震性能を備えているかたずねると、「備えている」(37.3%)、「備えていない」(26.8%)、「わからない」(35.9%)と、3人に1人は耐震性能が備わっているかどうか知らないまま住んでいることがわかった。

最後に、9月1日の「防災の日」に合わせ、全国各地で多くの避難訓練が実施されることが予想されるが、今年の避難訓練に参加する予定があるかをたずねると、「予定している」(20.4%)、「予定はない」(54.6%)、「わからない」(25.2%)となり、約8割が予定なし・わからないと、避難訓練の参加に消極的な結果に。さらに避難場所を知っているかについては、「知っている」(71.3%)、「知らない」(28.7%)と、4人に1人は避難場所を知らないことがわかった。

今回の調査を受け、危機管理アドバイザーの国崎信江氏は「アンケートの結果から見えてくるのは災害時に頼りになるのは避難所と考えている人が多いということです。しかし、避難所が被害を受けるなど予想外のことが起きることもありますし、被災者が多ければ避難所が過密状態となり必ず入れるとは限りません。また、入れたところで劣悪な環境になることも考えられます。体調やストレスだけでなくプライバシーや防犯上の問題などもあります。また、自宅が被害を受けるということは自分や家族の生命を脅かし財産を失うことでもあります。災害時に避難することを前提にした防災ではなく、地震が起きても大丈夫と思えるように自宅を安全にすることを目指して、まずは建物の耐震性に関心をもちましょう」とコメント。

また、「自宅で地震に遭ったことを想定して各空間で危険な箇所を確認しましょう。例えば浴室なら閉じ込めの危険や避難の時にせっけんや濡れた床で滑ってけがをする恐れもあります。浴室内にタオルやトレーナー、飲料、笛などをプールバッグなどに入れてまとめておくと安心ですし、携帯電話に防水性能があるなら入浴時にも浴室内に置くことをお勧めします。トイレも閉じ込められやすい場所なので浴室と同様に閉じ込められることを想定してトイレ内に防災用品を備えておきましょう。キッチンは限られた空間に家具、家電製品、食器、調理器具など倒れたり落ちたり割れたりする危険なものが集まっている場所なので、地震が起きたらまずはキッチンから離れることを意識しましょう。家具は基本的に寝ている場所に倒れたり、ドアを塞いだりする場所に置かないようにして、強度のある壁にしっかり固定します。廊下や玄関回りなどの避難の動線上には家具を置かないことも大切です」など、アドバイスを寄せている。