東京メトロなどは有楽町線新木場駅と辰巳駅で、新しいタイプの視覚障害者向け案内誘導システムの実証実験を報道陣に公開。目が不自由な実験の参加者は、点字ブロックに張られたあるものをスマホで読み取りながら移動していました。

点字ブロックに誘導用QRコードを設置

東京メトロとプログレス・テクノロジーズは2019年8月30日(金)、東京都江東区内にある有楽町線の辰巳駅と新木場駅で、QRコードとスマートフォンを使った視覚障害者向けの案内誘導システム「shiKAI」(シカイ)の実証実験を報道陣に公開しました。

シカイはQRコードとスマートフォンを使って、目的地までのルートを自動的に音声で案内するナビゲーションシステムです。

実証実験に参加している視覚障害者4人が、シカイの専用アプリをインストールしたスマホを使って、新木場駅の改札口から辰巳駅の改札口まで列車に乗って移動。点字ブロックが分岐する部分などに位置情報を盛り込んだQRコードが張られており、実験の参加者がスマホをQRコードのほうに向けると「左側1m先に階段があります」などの音声がスマホから流れました。

目が見えなければスマホの操作も難しいのではないかと思いましたが、いまのスマホは音声読み上げ機能など視覚障害者向けの機能が充実しており、「視覚障害者のスマホ利用は当たり前のものになっている」(東京メトロ)といいます。実験の参加者も特に不自由なくスマホを操作し、点字ブロックの上をスムーズに歩いていました。

参加者の高橋史月さんは実験の終了後「スマホからの案内放送と外からの警告音が同時に聞こえてきて、とまどうこともあった」としつつ、「杖(つえ)だけで点字ブロックをたどるのに比べ、全然分かりやすかった。最初に目的地までの距離を案内してくれるので、距離感がつかめます」と話していました。

多くの鉄道駅には点字ブロックが設置されていますが、点字ブロック自体には改札口の位置やホームに停車する列車の行き先などの情報が埋め込まれておらず、これだけでは明確に案内することができません。そこで東京メトロは、プログレス・テクノロジーズからの提案を受ける形で、シカイの実証実験を2017年と2018年の2回実施。3回目となる今回は一般公開前の最終検証として行われました。

東京メトロは今後も検証を進め、その結果を踏まえてアプリの一般公開と導入駅の拡大を行う予定としています。

新木場駅と辰巳駅で行われたシカイの実証実験(2019年8月30日、草町義和撮影)。