邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は、小出部長がぞっこんの俳優、マ・ドンソクの主演最新作『守護教師』。ほとばしる“マブリー”ぶりをご堪能ください!

【動画】映画『守護教師』予告編

----------

みんなの映画部 活動第56回[後編]
『守護教師』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、世武裕子

----------

■熊のようなマ・ドンソクが女子高の教師になったら……

──もちろん韓国映画とひと口に言ってもいろいろあるわけですが、これはちょっとB級感強めの類いですね。

小出:うん。ま、B級ですよね(笑)。最初からこれは「マ・ドンソクが女子高の教師になったら」っていう設定の面白さ、まずその一点突破だと思ってるから。あんな格好のおじさんがさ、女子生徒たちにキモいとか言われながらも「給食費ちゃんと払ってね」って物腰柔らかくお願いする。もうそれで十分。

福岡:めっちゃかわいかった。

──世武さんの言うコメディー感もたっぷりで。

小出:十分出してる。っていうか、韓国映画ってどんだけシリアスな映画でも意外とああいう場面多いんですよ、隙のあるシーンが。ただ今回の映画は狙ってるところが多いと思う。UFOキャッチャーで取ったぬいぐるみをポケットに入れたまま歩く、とかね、マ・ドンソクのポケットからはみ出ているぬいぐるみの、あのかわいさ。

福岡:落ちちゃうしね。

小出:落ちちゃう。ムチムチパンツから。そのあと監禁された女の子を助けるところでは、ドア開けろ! って叫びつつ、どうすんのかなと思ったら、木製のドアだから当然腕で破っちゃう。

福岡ガチャガチャしなくていい。

小出:穴開けちゃう。“素手シャイニング”。

福岡:あはは。“素手シャイニングヤバい

小出:あとすごい韓国映画っぽいなって思ったのは、いやらしい顔したおじさん出たら絶対悪いやつ。で、周りと合ってないイケメンが出てきたら、これもイヤなやつ(笑)。非常にわかりやすい! あと映画の全体の構成も、マ・ドンソクが街に来て帰っていく。金田一耕助か! っていうお話のアウトライン。それもちょうど良かったです。

■夢中になった福岡、冷静な世武

福岡:さっきも言ったけど、私はこれでマ・ドンソクの大ファンになりました。初めて観たけど、また別の作品の彼を観たくなる、追いたくなる。めっちゃ良いキャラだし、こういう演技する人好き。微妙な表現がうまいなあ。『ファイティン!』観たいな。

小出:ぜひ観てください。本当に彼は韓国のニュースターですよ。

福岡:ほんまマ・ドンソククッション欲しいぐらい。

小出:俺も抱き枕ほしい。

福岡抱き枕欲しいよな。

小出:マブリー抱き枕

──暑そう(笑)。ベッドからはみ出ちゃうような。

福岡:マブリーってニックネーム、魅力をよく言い当ててるよね。たしかに超マブリーやわ。

小出:だからやっぱ気づいてる人がたくさんいるってことよ、このかわいさに。

福岡:『守護教師』は一本の映画としても、私はすごい面白かった。やっぱ主役のキャラがすごい立ってるのと、女の子の演技もとても良かったし。

小出:『アジョシ』(2010年)のキム・セロンね。当時は子役だったのに、立派に成長して。

──そして、若干冷静な世武さん。

世武:いや、全然異論なしですよ。ちなみにキム・セロンと言えば、私はウニー・ルコント監督の『冬の小鳥』(2009年/キム・セロンが9歳のときに主演した映画デビュー作)しか観てないんだけど、あの子が今こうなってるのか……って、でもよく見たらめっちゃ面影があって、それがすごくうれしかった。そして私もマブリーがとても好きでした。だから主役の人が魅力的やという、ただそれだけの映画っていうか。

小出:そうね。

世武:まず音楽がうるさいし……。

一同:(笑)。

世武:予告編の印象では『哭声/コクソン』(2016年)寄りの結構本気でヤバくて重い映画やと思って観に来たみたいなところがあって。実際はファンの人たちがマブリーを愛でたいための映画だったんやね。

小出:これは……はい(笑)。

福岡:町の不穏の空気とか、まったく途中から関係なくなってたもんね。

世武:もはやNetflixとかもある時代、映画館で観る意味はなんなのか? って考えたとき、でっかいスクリーンで主演俳優をみんなで愛でるっていうのは健全な動機やし、なんか良いなって。それは本当に思ったよ。

福岡:今回ほんまに主役に引っ張られて、全然私音楽気になってなかった。

世武:結構ベタなんばっかり流れてたよ。

福岡:気になりだしたら、すごい気になってたかもしれない。でもずっとマブリー観てたから。

小出:俺もそう。

世武:たぶん、彼の登場に合わせて音楽を付けてるから。マブリーの存在と一緒くたになって、音楽を気になってなかったんかな?

小出:だと思う。

福岡:マブリーが勝ってたんかな。

小出:自分的には「何か音楽かかってたっけ?」くらいの体感です。

世武:それすごいね。

──夢中になってたわけだね。

福岡:そうそう。

──周りの音が聴こえなくなるっていうのを、「恋」っていうわけじゃないですか。

世武:ま、そういうことなんやね(笑)。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)画評論家)
(M-ON! MUSIC)

掲載:M-ON! Press