徴兵を嫌い自殺してしまった三平(風間晋之介)に続いて、海軍に入った公次(宮田俊哉)が戦死したという報せが届く。さらに、公一(佐藤祐基)のかつての恋人・紀子(佐久間麻由)まで死んでしまう。

根来家にとってつらい報告ばかりではじまった今週だったが、しの(清野菜名)が三平の子を妊娠していると発覚して以降は、なぜか戦時中とも思えないほのぼのとした展開に。

決死の覚悟でプロポーズした公平、爆笑される
時節柄、私生児として産むことには問題があるとして、根来家の面々がひねり出したのが、公平(風間俊介)がしのと結婚して、三平の代わりに子どもの父親になるという作戦。

明らかに三平のことを好いていたしのと、公平がどうやって結婚するのかと思っていたが、まさか三平の代用品としてだったとは……。

そしてこの結婚作戦は、しのの気持ちも三平の気持ちも無視という、「お国のためだ」で何でもオッケーになってしまった時代ならではのもの。

まあ、昔からしののことが好きだった三平はまんざらでもないようで、

「しのちゃんが……あのしのちゃんが……(ゴクッ)」

とアホエロ妄想を繰り広げ、畳の上で悶絶していたが。兄ふたりが死んだばかりだっつうのに!

しかし意を決して、

「父親がいたほうが子どもにとってよくない? だからさ、よかったら、あの……その……。結婚する気ない? お……俺と」

プロポーズした公平に対して、しのの返事は爆笑。

これはつらい。しかもそのまま3か月間放置。決死のプロポーズを爆笑した人と3か月も一緒に暮らすのは地獄だ……。

だが結局、3か月後になって、

「私ね、本当言うと嬉しかったの。とっても嬉しくって動転しちゃったの。だから笑ってごまかすしか なかったの」

ということになるわけだが。

子どもをはらませておきながら、(妊娠したことは知らなかったんだろうが)自殺してしまった三平に対する恨み言ひとつ言わずに「きちんと産んで育てるの」と言い切り、なおかつプロポーズしてきた公平に対しても、爆笑した上で「嬉しかったの」なんて言っちゃう小悪魔っぷり。

妙に男にとって都合がよく、それでいてちょっぴり小悪魔という、倉本聰の好きそうな女性観が思いっきり込められている。

胎盤を食べてるから私たちの肌はいつもスベスベ!
出産シーンも「戦時中の出産ってこんな感じだったのか!」と驚かされることばかりだった(本当にこういう感じだったのか、倉本聰ワールドなのかは分からないが)。

まず、公平としのが臨月の腹を引きずって訪れた産婆が、公平の親友・青っ洟が結婚前に童貞を捨てさせてもらった未亡人ということに衝撃。なんちゅう伏線を張っているんだ。

この産婆さん(元・天使)がまた、しのを心配する公平に対して、お産は「鼻の穴からスイカが出てくる感じ」だの「象の群れに腰を踏まれてる感じ」だのと不安を煽りまくり。

「旦那さんも来る! いい事したんだから一緒に苦しむ!」

いい事をしていないのに父親になろうとしている公平の心をえぐる発言だ。

さらに出産後は、後産で出てきた胎盤をレバ刺しのようにスライスして、産婆と公平が生姜醤油で食べるという衝撃展開。

確かに昔は、食べると産後の体調が早く戻るとして胎盤食はわりと一般的だったようだし、最近でも一部産婦の間で流行していたそうで、元・チャイドルの野村佑香がブログで報告してプチ炎上していたけど……。

少なくともテレビドラマで(しかも真っ昼間の)胎盤を食べているシーンは見たことがない。

「これを食べてるから私たちの肌はいつもスベスベして若いのよ〜」

じゃないだろう。産婆さんって産婦に断らず勝手に胎盤食べちゃうものなの!? 頭がクラクラしてくる。

遂に「道」パートで終戦を迎える
そんな衝撃の出産エピソードを経て、どんな子どもが生まれたのか……と思ったら、唐突に菊村栄(石坂浩二)の父親の幽霊(梅宮辰夫)が出てきて総集編になだれ込んだのにもズッコケた。総集編、ちょっと前にやったばかりじゃん。

先週が重い展開の連続だったため、今週で緩和しようという意図なのか、姫こと九条摂子(八千草薫)の幽霊も話の流れを完全無視して登場し、懐かしの「ナスの呪い揚げ」をやっていた。

これは、本来は「道」パートの主役として出演する予定だったものの、体調不良で降板した八千草薫を少しでも出演させようという配慮かな……とも思ったが。

さて来週は「道」パートで遂に終戦を迎えるようだ。子どもが生まれたのが昭和18年ということで、もう少し戦争が続くと思っていたのだが……。
(イラストと文/北村ヂン

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『やすらぎの刻~道』テレビ朝日
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

イラストと文/北村ヂン