文在寅ムン・ジェイン)韓国大統領の最側近の曺国(チョ・グク)法務長官候補に対する各種疑惑をめぐって、文在寅政権と保守野党の激しい対立が続いている。そんな中、検察がチョ氏の疑惑に対する捜査に乗り出してから1週間あまり、くもの巣のように複雑に絡み合っていた疑惑が一つずつ検察の捜査対象に上がり出している。そこで見えてきたのは、一連の「チョグク・スキャンダル」が、文在寅政権を揺るがす「権力型スキャンダル」にまで発展する爆発力を秘めているという事実だ。

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出資者全員がチョ氏一族の私募ファンド

 現在、検察が重点を置いて捜査する疑惑は、①チョ氏が74億ウォンの投資約定を締結した私募ファンド(PEF)疑惑、②チョ氏の母親が理事長を務めている熊東学園の債権・債務疑惑、③そして娘の不正入試疑惑だ。このうち、権力型スキャンダルに飛び火しかねない核心的な雷管は、怪しげな私募ファンドの疑惑だ。

「私募ファンド」(PEF)とは、金融機関が不特定多数から資金を集めて運用する「公募ファンド」と異なり、「私人間の契約」の形で、少数の投資家から資金を募集、運営するファンドである。主に未上場企業を買収し、経営改善で収益力を高めた後、上場したり企業売却したりして資金を回収する形で運営される。

 チョ氏が民情首席に就任した2カ月後の2017年7月、チョ氏の家族は「コリンクPE」が運用する私募ファンドに74億5000万ウォンの投資約定契約を締結し、妻と子供の名義で10億5000万ウォンを投資した。コリンクPEは現在、海外に逃避中のチョ氏の甥が実所有者と疑われている会社で、4つのファンドを運営している。この中、チョ氏の家族が投資した「ブルーファンド」は、6人の出資者全員がチョ氏の家族と、チョ氏の義理の弟(チョ氏の妻の弟)の家族で構成されていて、別名「チョグク・ファンド」と呼ばれている。しかも、チョ氏の妻が弟に3億ウォンを送金し、内訳にコリンクPEの頭文字を記入したことから、借名投資の疑惑も出てきた。

 チョグク・ファンドが集中投資した「ウェルズシーエヌティー」は、主に公共工事を受注する街灯点滅機メーカーで、チョグク・ファンドの投資後、飛躍的な成長を遂げている。自由韓国党のチョン・ジョムシク議員は、関連省庁から提出された資料をもとに、ウェルズシーエヌティーが、2017年8月から2019年7月までに44カ所の地方自治体と公共機関に、計177件(点滅機2656台)を納入していることを明らかにした。

娘の指導教授を大統領主治医に

 街灯事業は、自治体の首長の許可さえ得られれば、入札手続きなしで事業が可能だ。チョン議員が入手した資料によれば、納入実績の83%は「共に民主党」所属の首長が在任している地方自治体から受注した契約で、最も多くの取引があった自治体は慶尚南道金海市だ。金海市長は「共に民主党」のホ・サンゴン議員で、慶尚南道知事は2017年大統領選挙当時、文在寅候補陣営の広報室長を務めた金慶洙(キム・ギョンス)氏である。特に、金氏は、インターネット世論操作事件のドルイドキング事件に巻き込まれて裁判を受けている人物で、文大統領の「腹心」として知られる人物だ。チョン議員は「公共工事を総なめした背景には、民情首席室の威勢があったという疑惑を想起するのに十分値する」と主張した。

「チョグク・ファンド」が文在寅政権の「スマートシティ」公約と関連する「公共Wi-Fi事業」にも関わった情況も明らかになった。

 韓国メディアによると、2016年2月に設立されたコリンクPEは、発足前から地下鉄Wi-Fi事業獲得に向けた計画を立てていた。その後、コリンクPEが運営するチョグク・ファンドが投資したウェルズシーエヌティーは、「PNPプラス」とコンソーシアムを構成、2017年9月には見事、ソウル地下鉄Wi-Fi事業の優先交渉対象者に選ばれた。4回の入札過程で脱落や選定会社の取り消しなどの紆余曲折を経て、5度目の挑戦で韓国最大通信社のKTを退けて入札に成功したのだった。

 その後、2018年2月にソウル市と本契約が締結されたが、技術や資金の不備などが指摘されて契約は解除された。ところが、PNPプラスが優先交渉対象者に選定された背景に、チョ氏家族による投資資金と与党関係者の関連疑惑が浮かび上がったのだ。

 自由韓国党が入手して暴露したPNPプラスコンソーシアムの持ち分資料によると、株主名簿には「共に民主党」の現役重鎮議員の元補佐官と、「共に民主党」所属の元議員の補佐官が株主として名を連ねている。自由韓国党は、「公共Wi-Fiの拡充は朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長の定番公約だった」とし、コリンクPEの事業計画と朴市長の関与疑惑も提起した。

 チョ氏の娘が釜山大学医学専門大学院から、2回落第しているにもかかわらず、6回も奨学金を受領した事実も政権型スキャンダルに飛び火する恐れがある。「朝鮮日報」は、「激励」の名目でチョ氏の娘に奨学金を支給したノ・ファンジュン釜山医療院長(チョ氏の娘の指導教授)のパソコンから、「大統領主治医として(同校所属)カン・デファン教授が任命されるのに深い一役を担った」と書かれた文書が検察によって発見されたと報じた。

 同紙は、「歴代大統領の主治医はたいてい、大統領府から10~30分の距離にあるソウル大・延世(ヨンセ)大学病院などで抜擢されてきた」「政界では、大統領の主治医がソウルから2時間以上離れた釜山にいる場合、緊急事態への備えが難しくなるのに、あえて釜山にいる医師を委嘱した理由がわからないとの声があがっている」と指摘した。自由韓国党は、「(チョ氏の娘に)奨学金を渡した後、(釜山医療院)病院長、(大統領)主治医のポストが行き交っているが、これらは対価関係にある」「誰が後押ししているのか明確にしなければならない」と主張している。

「政権の圧力に屈しない」検察総長は疑惑にどこまで切り込めるか

 9月4日、共に民主党と自由韓国党は、9月6日に国会でチョ・グク法務長官候補の人事聴聞会を開くことに合意した。聴聞会を通じて新しい疑惑が提起されるか、または、既存の疑惑が解消されるかによって、検察の捜査の方向にも影響を及ぼすものとみられる。

 検察組織を率いている尹錫悅(ユン・ソクヨル)検察総長は、朴槿恵(パク・グネ)政権時代、国家情報院が大統領選挙に介入した疑惑を捜査する過程で政権の外圧があったことを暴露し、「私は人に忠誠しない」と一喝した。

 その言葉通り、「生きている権力」へ捜査の矛先を向けられるかどうか、韓国国民の関心が集まっている。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  疑惑のチョ・グク氏、不正より怖い「言論への圧力」

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9月2日、国会で「記者懇談会」を開いたチョ・グク前青瓦台民情首席秘書官(写真:YONHAP NEWS/アフロ)