私ごとで恐縮だが、筆者はこの度、3度目のモスクワ駐在となった。

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 前回のモスクワ駐在から10年以上が経っていることもあり、赴任してひと月あまりだが相変わらずのモスクワの変化の速度に驚くばかりである。

 日本にいる間も出張などでモスクワには年に数回通っていたこともあり、それなりにアップデートは重ねてきたつもりだった。

 しかし、モスクワの変化を実感するにはそれではまだ不十分だと改めて反省した次第でもある。

 特に、道路を含む交通インフラ、交通機関の変化が大きいと感じることが多い。今回はそれらの点について報告したい。

 モスクワ在住の方、頻繁にモスクワを訪れる方にとっては今さらな情報も多いと思われるが、そこは改めてのモスクワ初心者ということでご容赦いただきたい。

交通状況は改善傾向

 まず道路事情の変化である。相変わらずモスクワ市内中心部の移動では渋滞に悩まされることが多いものの、あるベテランドライバーによると、それでも状況は改善しつつあるという。

 その背景には2つの要因が考えられる。

 第1に、公共交通機関網の再整理である。特にバス路線の整備が著しい。

 聞くところによると、2018年サッカーワールドカップ(さらには、そ前年のコンフェデレーションズカップ)の際に大きく整備され、ロシア語が分からない外国人にも使いやすいようになったとの声も聞こえる。

バスレーンの登場で利便性が向上

 中心部と近郊住宅街を結ぶルート、遠距離間をバスレーンを利用し高速で移動できるルート深夜バスの運行など、利用者の都合に応じた選択肢も増えた。

 バスレーンの整備は2011年から本格的に始まり、景気停滞期には一時設置のスピードが滞ったものの、2016年以降再びその動きが加速。

 モスクワ市交通公社(モスゴルトランス)によると、現在58路線・330キロ強のバスレーンが設けられており、2019年末には総延長距離が370キロになる予定である。

中心部から自家用車を追い出せ!

 第2に、自家用車の中心部からの排除である。自家用車については2010年頃から市内中心部における路上駐車の取り締まり強化・有料駐車場の整備が進められていたが、それがさらに徹底された。

 件のベテランドライバーによると、これによりモスクワ郊外からの自動車での通勤や市内中心部への流入が減少したという(彼もその一人である)。

 駐車場は中心に近づくにつれ値段が上がり、最も高いゾーンでは1時間あたり380ルーブル(約640円)。さすがにこれではお気軽に出かけてその辺に車を留め置いて・・・という気にはならない人も多くなる値段である。

 違法駐車の取り締まりも厳しくなっており、日本以上に厳しく監視員が見回っているうえ、違法駐車は強制的にレッカー車で撤去してしまう徹底ぶりである。

(ただし、レッカー車での強制移動は必ずしも手続きが適切でない場合もあり、物議を醸す場合も多い)

パーク・アンド・ライドや歩道拡張で自家用車の流入を抑制

パーク・アンド・ライド」(地下鉄やバスの駅付近に無料またはごく安価の駐車場を設置し、そこから市内中心部までの公共交通機関の使用を促すもの)も導入されている。

 乗用車の中心部への乗り入れ制限の一環として捉えられているのが、歩道の整備だ。

 モスクワの道路というとやたらと幅が広く、お年寄りなどは信号が青のうちに渡るのにも一苦労というところも多々見られたものだ。

 現在モスクワでは、その広い道路の車線数を減らし歩道を拡張する動きが急速に進められている。歩行者にとってはありがたい話だが、ドライバーにとってはますます「肩身が狭く」なる思いだろう。

広がり続ける地下鉄網

 次に目を引くのは、地下鉄網の拡大だ。

 筆者の感覚だと、実質的に以前のモスクワ市の境界線であったモスクワ外周環状道路(MKAD)の内側で地下鉄網が終わっていたものだが、最近の広がり具合には目を見張るばかりだ。

(もっとも、モスクワ市自体も南西方面に行政区画を大きく拡大しており、街自体が拡大しているとも言えるのだが)

 路線数が増えたこともさることながら、路線間の乗り換え(筆者はこれを「横移動」と呼んでいる)についても改善が進んでいる。

 以前は横移動の際、基本的には中心部まで出てから乗り換えなければならなかった。2つの線を結ぶ駅、または中心部にある環状線(5号線)を利用しなければならなかったのだ。

横移動が楽になった!

 それが現在では、中心部から離れた駅同士を結ぶ路線が新設され、横移動も徐々にしやすくなっている。

 例えば、サビョロフスカヤとモスクワ市南西部の郊外「ラスカゾフカ」を結ぶ8A号線、同じくサビョロフスカヤと新興オフィス街のモスクワシティにある「デロヴォイ・ツェントル」を結ぶ11号線などだ。

 11号線は「大環状線」との別名もつけられており、今後、他の路線同士を結ぶことを予感させる。

 地下鉄ではないが、地上を走る「モスクワ中央環状線」と地下鉄の相互利用により、横移動がしやすくなる例もある。各地下鉄中央環状線の最寄り駅での乗り換えが可能となっている。

 ちなみに、モスクワ地下鉄公社の路線図には中央環状線は14番目の路線として記載されており、地下鉄と一体の運用がなされていることがうかがえる。

 このような形で、モスクワの交通網の整備が進んでいる。

 ロシア全体を見れば、道路の整備状況も十分ではない都市、地下鉄自体がない都市も多い。

 今回お伝えしたのはあくまでもモスクワというある種の特殊例ではあるが、これらのインフラ整備などには多くのビジネスチャンスも潜んでいる。

 筆者は単なる乗り物オタクの観点からこういう動きを眺めてしまうのだが、視点を変えてみるとビジネスの観点からも面白い動きではないかと考えている。

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ロシアの高速鉄道「サプサン」(2018年3月6日撮影、写真:ロイター/アフロ)