産科医と妊婦さんの負担を軽減、妊婦超音波検査ロボット「Tenang」

 日本の少子高齢化は、今や社会問題トップといえるほど早急な課題です。この課題解決に活躍が期待されるのが、医療・介護・福祉の分野ではたらくロボット。最新のロボット事情はどうなっているでしょうか。

 9月3日、第37回日本ロボット学会のマスコミ・関係者向け学術講演会が早稲田大学早稲田キャンパスで行われました。7団体のロボット関連技術やサービスが紹介され、デモンストレーションが披露されました。そのうちの1つ、将来妊婦検診をサポートする可能性のある、“妊婦さんに優しい”ロボットを紹介します。

 「産科が閉鎖される」という報道が近年増えました。これは深刻な産婦人科医不足が影響しています。産院はいつ分娩が始まっても対応できるよう24時間体制で休みが不規則なうえ、さまざまな補償の観点から医師の責任負担は大きく、担い手が減っているという背景があります。そんな産科の危機を救うために、早稲田大学発のベンチャー企業「INOWA」(イノワ)が開発したのは、妊婦超音波検査ロボットTenang」(写真)です。

 妊娠中期(目安19週)から35週までの妊婦さんを対象に、腹部に当てて行うエコー検査をロボットが行い、ロボットが取得したデータクラウドに蓄積されAIが解析、異常がないかを調べ、医師、妊婦本人に通知する仕組みが想定されています。これが実現できれば、産婦人科医の激務を解消、あるいは、検診で何時間も待たされるといった妊婦さんへの負担を改善できるかもしれません。

 「妊婦さんが不快に思わないように、プローブ(腹部に接触する部分)の走行法、押し付け方には注意を払いました。正確に超音波を当てることでより鮮明な画像を取得し、それにより胎児の異常などを早期に発見することが可能になります」と、INOWA代表取締役の今村紗英子さん。将来的には、遠隔でのロボット妊婦検診を想定しているそうです。「強固なセキュリティを持ったクラウド技術、診断をサポートするAI、妊婦、医師にとって使いやすいアプリなどのインターフェースの開発などまだ課題は多いものの、5年後には実現できるよう準備を進めていきたい」と目標を明かしていました。

ロボットが人と共存する社会を実現するために

 ロボットと聞くと、「硬い・重厚・正確」といったイメージが先行しがちですが、近年は「しなやかで、柔軟な動き」を実現する「ソフトロボット」の開発も積極的に進められています。小型・軽量化も含めた開発により、近い将来、人工的に作られた“筋肉ロボット”が手や足の動きをサポートするということがあるかもしれません。人間の暮らしを豊かにするためのロボット開発と同時に考えなければならないのは、人とロボットが共存するための社会の仕組みづくりです。

 「以前は産業用ロボット開発が中心でしたが、近年はサービス提供のロボット開発が加速。人とロボットは共存できるのか、ロボットによる不測の事態に対して補償はどうするのか―。議論は尽きませんが、日本ロボット学会でも10年以上にわたり検討を続けています」と、同学会の村上弘記副会長

  医療、ロボット工学だけでなく、さまざまな分野が協働して、人がロボットと共存する未来の社会、医療のあり方を考えていく必要があるかもしれませんね。(QLife編集部)