日本では消費増税が近づく一方、米国では追加減税案が明らかに。やはり投資するべきは米国なのか? 米国市場の今後の見通しと投資の極意を追った!

◆25年で7倍! 驚異の成長率を誇る「世界最強市場」でガッチリ稼ぐ!
 米国株投資の人気が爆発中だ。SBI、楽天、マネックスなど大手ネット証券各社は米国株の取引手数料の引き下げ競争を展開。かつては少額取引でも5ドルかかっていた最低取引手数料が無料になったことも大きな追い風になっている。米国株投資で財を築いた個人投資家のたぱぞう氏は、その魅力を次のように話す。

「米国株は過去100年以上にわたって右肩上がりを続けてきた実績があり、世界で最も信頼性が高い株式市場です。いまだにバブル時の高値を超えられないまま少子高齢化で経済成長が伸び悩む日本や、経済が成長していても株価が連動しにくい新興国とは違って、米国株はGDPと株価が連動して伸び続けています。業績だけでなく、株価も上げなければならないという考え方が経営者に根付いていて、株主還元や株価上昇につながる自社株買いに積極的な企業が多いのも特徴です」

◆「逆イールド」はむしろ高騰の兆候?
 米国市場には前年より配当額を増やす「増配」を長く続ける企業が多い。昨年の発売直後から株式投資本としては異例のベストセラーとなっている『バカでも稼げる 「米国株」高配当投資』の著者であるバフェット太郎氏も信頼性の高い企業が米国市場には圧倒的に多いと強調する。

「米国市場には25年以上増配を続ける企業が100社以上あるのに対し、日本市場では花王1社だけ。しかも日本企業は高配当を続けていても、業績が悪化すればあっさり減配することも少なくない。一時的な下落局面でも配当の方針を変えてしまうことのない優良企業が多い米国市場のほうがよほど信頼できます」

 25年以上連続増配ということは、「100年に一度の金融危機」と称されたリーマン・ショック時も変わらず増配してきたということ。米企業の株主配当への強いこだわりがうかがえる。しかし、海外資産というと、気になるのは為替リスクだ。ドル/円相場は直近1年でも約10円動いており、為替だけでも1割程度は簡単に変動する。たとえ株価が上昇しても為替で相殺されたり、円高と株安がダブルでくると損失が膨らんでしまう恐れもあるが、こうした不安をバフェット太郎氏は一蹴する。

「そもそも米国株には為替リスクがあって、日本株にはないと考えるほうがおかしい。日本の株式市場も為替の影響を受けて円高局面では下落します。実際、円建てで見たダウ平均と日経平均を比べても米国株が圧倒的に強いんです」

ダウ平均は25年で約11倍にまで達しており、日本のバブル景気時を大きく上回る成長を記録。一方、日経平均バブル崩壊後、ほぼ同水準で推移し、過去の最高値に及んでいない

 ここへきて、世界経済はいよいよ景気後退局面入りするとの見方もある。しかも、この8月には米国債券市場で一時的にではあるが、不況の前兆とされる「逆イールド」(長期金利短期金利が逆転すること)が生じたことも話題となった。過去20年ではITバブル崩壊やサブプライム危機、リーマン・ショックの前に逆イールドが起きているのだ。しかし、バフェット太郎氏は「逆イールドの発生後は、株価は短期的には暴落より暴騰する可能性のほうがずっと高いのです」と指摘する。

「過去3回の例を見れば、逆イールド発生から景気減退局面入りまで1~2年のタイムラグがある。それまでの間に株価はいずれも30%以上暴騰しているのです。たとえ暴落することがあったとしても回復する力はあるし、これから上昇して1~2年後に暴落しても、今の水準に戻るだけというシナリオも十分あり得えます」

初心者インデックス頼みの投資でもOK!
 それでは、これから米国株投資を始める場合、どんな手法が考えられるか。たぱぞう氏は投資信託、もしくはETFを購入、市場全体の成長に便乗する方法を提案する。

「日本株は優良銘柄を厳選して投資する必要がありますが、米国株は市場全体が素直に伸びていくので長期の目線でインデックスを買っておけばOK。景気後退が不安なら投資対象だけでなく、投資時期も分散できる積み立て投資がいいでしょう。成長では劣りますが、配当収入が欲しい人は高配当株のETFに注目です」

 一方、個別銘柄で勝負したいときの戦略としてバフェット太郎氏は次のようにアドバイスする。

「景気は循環するものなので、不況時に下がりにくい銘柄と好況時に上昇しやすい銘柄を併せ持つと分散効果が高くなります。私も『不況に強い銘柄』として、日本でもおなじみのブランドであるP&Gコカ・コーラを保有しています。いずれも配当利回りは2%超、50年以上連続増配中の超優良銘柄です。現在はその2銘柄を含めた高配当株10銘柄を均等に保有。月10万円以上の配当を得て、この配当に新規投資の資金を足して、毎月10銘柄の中で最も割合が小さい銘柄を買い足しています。これまで投資額が小さい人に個別株投資は少し難しかったのですが、ネット証券の最低取引手数料無料化によって誰でもこういった手法が取れるようになりました」

 新規参入のハードルグーンと下がった米国株投資。100年成長の実績に便乗していれば、「老後2000万円問題」も怖くない。

◆<市場の成長に便乗するなら!>
投資信託●eMAXIS Slim 米国株式(S&P500
 米国の代表的な500銘柄を抽出したS&P500指数(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資信託。信託報酬も0.15%と安く、長期保有しやすいのが特徴

投資信託●楽天・全米株式インデックスファンド
 米国のほぼ全上場銘柄に投資できるバンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)に連動。外国株口座を開設しなくても実質的にVTIに投資できる

ETF●バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)
 米国の株式市場で投資可能な個別銘柄のほぼ100%カバーするETF。大手銘柄だけでなく、中小型株まで含めて幅広く分散投資したい投資家に向いている

ETF●iシェアーズ・コア S&P 500 ETF(IVV)
 米国を代表する500銘柄で構成されるS&P500指数に連動するETF。組み入れ上位銘柄はマイクロソフトアップルなど。大型株中心に投資したい人に特におすすめ

ETF●バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)
 米国の大型株の中から予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄を中心に組み入れたETF。分配は年4回。組み入れ上位銘柄はジョンソンジョンソンなどとなっている

◆<個別銘柄を狙うなら!>
※株価、配当利回りは米国8月28日時点
●プロクターギャンブル(PG)
株価:121.4ドル
配当利回り:2.46%
 約180もの国と地域で展開する世界最大の日用品メーカー。60年以上にわたって連続増配を続けている。「不況時でも株価が下がりにくい代表的な米国株のひとつで、抜群の安定感があります」(バフェット太郎氏)

コカ・コーラ(KO)
株価:55.11ドル
配当利回り:2.9%
 世界でもトップクラスソフトリンク企業。コカ・コーラのほか、ファンタダイエットコークなどのさまざまなブランドを保有。「投資の神様」ことウォーレン・バフェットの保有銘柄としても知られている

マイクロソフトMSFT)
株価:135.56ドル
配当利回り:1.36%
 世界最大のソフトメーカークラウド事業「Azure」が絶好調でアップルアマゾンに続き米企業で3社目となる時価総額1兆ドル企業に。「利益構造も値動きも安定しており、手掛けやすい銘柄です」(たぱぞう氏)

●ゾエティス(ZTS)
株価:125.77ドル
配当利回り:0.52%
 動物向けの製薬会社。「製薬大手のファイザーの一部門がスピンアウトした企業。株価や業績は安定しているうえ、人向けの製薬会社と違ってライバルも少ないので価格決定力が強いのが特徴です」(たぱぞう氏)

オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)
株価:167.22ドル
配当利回り:1.89%
 企業に人事や給与管理などの業務委託ソリューションを提供する。「米国で最も支持されている会計ソフト企業のひとつ。一度導入するとスイッチングコストが大きく乗り換えられる心配が少ない」(たぱそう氏)

MSCI(MSCI)
株価:231.73ドル
配当利回り:1.17%
 世界の投資機関に株価指数など投資支援ツールを提供している。「不況に弱い点は注意だが、インデックス運用の流れは続くと考えられ、一時的に下落してもいずれ回復することが見込めます」(たぱぞう氏)

●オクタ(OKTA)
株価:133.17ドル
配当利回り:―
 企業向けID管理プラットフォームを提供。業績は赤字で無配だが、株価は’17年のIPO以来、順調に上昇を続ける。「FAANG銘柄は上がりすぎですが、ハイテク自体はまだ人気が続くのでは」(バフェット太郎氏)

●ロク(ROKU)
株価:145.89ドル
配当利回り:―
 インターネットを通じて動画コンテンツストリーミング配信するデバイスを提供する新興家電メーカー。オクタ同様、’17年のIPO銘柄で、現時点では無配を続ける。本社はカリフォルニア州ロスガトスにある

【たぱぞう氏】
投資家・資産管理会社経営。’00年に投資を開始し、リーマン・ショックの暴落時に米国株に全力投資し財を成す。現在は投資顧問のアドバイザーも務める傍ら、情報発信を行う。ブログは「たぱぞうの米国株投資」

【バフェット太郎氏】
個人投資家。日本の中小株式投資を経て、’15年頃から米国株投資を本格スタート。著書に『バカでも稼げる 「米国株」高配当投資』がある。ブログは「バフェット太郎の秘密のポートフォリオ」
取材・文/森田悦子