2020年卒の就職活動も終盤を迎えた。リクルートキャリアによれば、すでに91.2%の就活生が内定先を決め、超売り手市場となっている。しかし一方では、人材獲得に必死な企業による執拗な勧誘や、内定辞退をめぐる攻防もあるようで……。

新卒勧誘1
※画像はイメージです(以下、同じ)
「この会社の選考に進んだばかりに、就職活動を棒に振ってしまった気がします」

 20年卒の就活生・Sさんは、悲しそうにつぶやいた。

説明会に感化され、エントリーを決意

 Sさんがある人材会社を知ったのは2019年3月ごろ。新卒エージェントから紹介を受けたことがきっかけだった。

「もともと私は、やりたいことが見つからずに志望業界を決めかねていました。このことをエージェントの担当に相談したところ、『君だったら人材業界が向いてるかもしれない』と紹介されたのがこの会社だったんです」

 この会社は非上場だがここ数年で急成長したいわゆる“メガベンチャー”だ。

「説明会で登壇していた方は新卒採用のエースで、見るからにカリスマのような雰囲気だったんです。公演中にはキャリア紹介を交えながら『やる気次第で無限大に成長できる』『自社内起業をして30代で社長になった人もいる』といった説明を受け、僕もこの人のように活躍したいと、その場でエントリーを決めました」

リクルーターとLINEを交換。止まない着信

就活説明会1

 Sさんはグループ面接、集団面接を順調に通過。個人面接を控えて同社のリクルーター(採用活動に携わる社員)との面談を行うことになった。

集団面接まで通過した人には、新卒採用のリクルーターが付くことになっていました。面談の時、『志望動機もしっかりしているし、うちで絶対に活躍できるよ! 一緒に頑張ろう』と励ましてくれて、とても心強かったのを覚えています。帰り際に『選考の相談に乗るから』と、その場でLINEを交換しました」

 しかしそれからというもの、リクルーターから頻繁に連絡が来るようになったそう。

「選考当初は新卒エージェントを通じてやり取りしていましたが、LINEを交換してからはリクルーターと直接やり取りするようになりました。ただ、事前に電話する日時を打ち合わせていたのですが、1~2時間遅れることはザラで、夜遅い時間に電話がかかってくるときもありました。

 いつ電話が来るか不安で、今思えば精神的に疲れがたまっていた気がします。リクルーターが風邪をひいて、有給を使っている最中に電話が来たこともありましたね」

最終面接で落ちた…執拗な連絡にうんざり

 Sさんはこのようなやりとり何度か続けたうち、最終面接に挑むが落ちてしまう。

「面接が終わった直後にリクルーターから連絡がきて、『ここで落ちて悔しくないの? もう一回受けようよ』と再面接を促されました。正直なところ、選考でのやりとりに疑問を感じ始めていましたが、内定先を持っていなかった不安もあって、再面接を受けることにしました」

 しかし、その日を境にリクルーターLINEが加速したそうで……。

「志望動機を何度も聞いてもらったり、話し方に対するアドバイスをもらうことが多かったです。また、電話を受けるたびに『今日は何をしてたの?』と聞かれ、外出していると『面接が近いのにそんな心構えでいいのか』と注意を受けました。

 最終面接の前日には23時ごろに突然電話がかかってきて、話を聞くと『どうして昨日は電話に出られなかったの? そんな心構えじゃ内定出ないよ』と叱られました。電話に出られなかったのも、約束の時間から2時間ほど遅れて連絡が来たので、都合が合わなかったからなのに……。どうして一方的にとがめられるんだろうと悲しくなりましたね」

内定辞退が受け入れられず、LINEをブロック

新卒SNS

 翌日、Sさんは再面接を通過し、内定をもらったが、煮え切らない気持ちが溜まっていったという。数日後、同じく人材業界に進んだ大学の先輩に一連の話をしたところ、ようやく会社の評判が明らかになったそうだ。

「離職率も3年以内30%以上と、同業界の中ではワーストクラス。新入社員研修では出身大学の後輩に新卒サービスの勧誘を行い、その加入実績でランク分けされるみたいです。配属後も社内では過酷なノルマ戦で怒号が飛び交い、精神的につらくなってやめる社員が続出しているようでした。採用人数が300人近いのもこういった理由からだそうです」

 この話を聞いて、今までのリクルーターの対応も相まって、会社の異常さに気づいたという。ついに内定辞退を決意したSさんだが、説明会から費やした期間は2か月以上。「エージェントにお世話になったことと、再面接を受けさせてもらったことを考えるとなかなか切り出せませんでした」と話す。

「ひとまずリクルーターに内定辞退をしたいと話したところ、『どうして内定辞退するの』『一緒に頑張ったのに』と一方的に感情を押し付けられ。それでも辞退の意思を伝えたら、『社長と直接面談してもらわないと、内定辞退は受け付けない』と連絡があり、怖くなってブロックしてしまいました」

売り手市場で企業は必死…失敗を防ぐには

面接を受ける学生

 Sさんはエージェントに「会社に訪問しない形で内定辞退をしたい」と懇願し、ようやく内定辞退することができたが、既に5月の下旬、就職活動はすでに後半に差し掛かっていた。

「こんな思いをするなら、しっかり企業研究をして、別の企業を受けていればよかったです。ただ思えば、生半可な気持ちで就活に挑んだ僕の責任でもあるので、悔やんでも悔やみきれません」

 売り手市場によって内定率が上がる一方、人材確保がより一層難しくなっているのが昨今の就活市況。NPO法人エンカレッジの調査によれば「学生の人数・質ともに不満足」が40.4%、「内定者の3分の1が辞退」をしてしまう企業が36.2%に上る(8月22日発表、新卒採用担当者166人が回答)。

 企業が人材確保に必死になる一方で、Sさんのような失敗を防ぐためには事前の情報収集に加え、自身の適性を理解した上で就職活動に挑むことも必要かもしれない。

TEXT/bizSPA!取材班>

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