400系山形新幹線用に開発された車両です。この新幹線は「新幹線」を名乗っていますが、実際は在来線を改良して新幹線と直通運転できるようにした「ミニ新幹線」。そのため400系には従来の新幹線車両にはない大きな特徴がありました。

「小」は「大」を兼ねる

1992(平成4)年、JR東日本が福島~山形間を結ぶ山形新幹線を「開業」。東京~山形間を結ぶ新幹線列車「つばさ」の運転が始まりました。この「つばさ」用として開発されたのが400系電車です。

400系新幹線の「枠」を飛び出した、画期的な車両といえます。車体はシルバー。窓の周辺を中心に黒や緑のアクセントが入りました。それまでの新幹線車両は白地に青か緑の塗装でしたから、新幹線の新時代が始まったことを予感させるものでした。

400系最大の特徴は、何といっても在来線への直通運転でしょう。「つばさ」の当初の運転区間は東京~福島~山形間で、このうち東京~福島間は東北新幹線を走りましたが、福島~山形間は「山形新幹線」という愛称が付けられた、在来線奥羽本線に乗り入れていたのです。

新幹線在来線は、2本のレール間隔(軌間)と車体の大きさが異なるため直通運転できないはず。しかし、奥羽本線の線路を改造し、軌間を新幹線と同じ1435mmに変えたため、直通運転が可能になりました。

ただ、トンネルや橋りょう、駅のホームなどは新幹線車両より小さい在来線車両にあわせて設置されているため、大型の新幹線車両が乗り入れることはできません。そこで400系1435mm軌間での走行に対応しつつ、車体の大きさは小型の在来線車両に合わせました。これなら新幹線在来線の両方とも走れます。「大は小を兼ねる」ではなく「小は大を兼ねる」わけです。

このように、在来線を改良して新幹線との直通運転を走る方式を「ミニ新幹線」といいます。ミニ新幹線の第1号車両となった400系は、標準的な新幹線(フル規格)を走る車両とは異なる特徴がいくつもありました。

フル規格の新幹線車両は座席が最大5列で配置されていますが、400系の車体は在来線の車両並みに幅が狭いため、普通車でも最大4列に抑えられています。ちなみに、400系グリーン車1両と普通車5両で構成される6両編成(のちにグリーン車1両と普通車6両の7両編成に増強)でしたが、座席の間隔は同じ普通車でも指定席のほうが自由席より7cm広いという特徴がありました。

一時は国内最速記録を更新

また、フル規格の新幹線は大型の新幹線車両にあわせて駅のホームなどが設置されているため、小型車体の400系東北新幹線の駅に停車すると、車体とホームのあいだに30cmほどの大きな穴(隙間)ができます。これでは危険ですので、ドアの部分にステップを設置。走行時は車体に沿うようにして収納されますが、駅に停車するときは飛び出て、ドアとホームのあいだの隙間をふさぎます。

新幹線車両の先頭部には非常用の連結器が収納されていて、おわんのような形のカバーで覆われていますが、400系連結器(東京寄り)は通常の運転で使用し、カバーがふたつに分かれて連結器が出てきます。これは東京~福島間で東北新幹線の列車と連結して走っていたため。そのため連結「相手」だった200系も、簡単に仙台寄りの連結器を出せるよう改造。のちにデビューしたE4系などは、最初から連結器を簡単に出せるようになっています。

ちなみに、営業運転での最高速度は新幹線区間が240km/h、在来線区間が130km/hでしたが、山形新幹線の開業に先立つ1991(平成3)年に行われた上越新幹線での走行試験では、最高速度348.8km/hを記録。リニアを除く日本の鉄道の速度記録としては、当時最速でした。

400系は1995(平成7)年までに84両が製造され、1999(平成11)年には奥羽本線の山形~新庄間も山形新幹線の延伸区間として整備され、400系の運転範囲が拡大しました。車体の塗装もこのころリニューアルされています。しかし、延伸時に新型のE3系電車が山形新幹線に導入され、400系は順次引退。2010(平成22)年に引退しました。

2018年、JR東日本鉄道博物館さいたま市大宮区)がリニューアルオープン。これにあわせて400系の先頭車1両が新館に運び込まれ、一般に公開されています。

※内容を一部修正しました(9月6日21時21分)

鉄道博物館で保存されている400系(2018年6月、恵 知仁撮影)。