職場で「君には主体性がない。もっと積極的に取り組むように」と言われた経験はないでしょうか。仕事では主体性を持って行動できる人が重宝される傾向にあります。

とはいえ、具体的にどうしていけばいいのかわからないものですよね。

そこで今回は、主体性がない人の特徴や、その原因などに触れつつ、主体性のなさを改善するための方法についてくわしく解説していきます。

■自主性と主体性の違い

まずは、混同されがちな「自主性」と「主体性」の違いを整理しましょう。

自主性とは、やるべきことが決まっている状況で、まわりの人から言われる前に自ら行動することをいいます。たとえば、夏休みの宿題を親に言われる前にやり終える子どもは自主性があるといえます。

一方で主体性とは、やるべきことが決まっていない状況でも、自分で考えて判断し、行動することを指します。

そして、判断し行動した結果に責任を負うことも意味します。

たとえば、自分の人生がうまくいかないのは親やほかの誰かのせいだと考えてしまうときは、自分の人生に責任を取れていないので主体性がない状態だといえるでしょう。

このように、主体性は自主性よりも高度で、大人として独立して生きていくうえで必要な素質なのです。

主体性がない人の特徴

では、この主体性が欠けている人には、具体的にどんな特徴があるのでしょうか。

◇(1)「なんでもいいよ」という口癖

飲み会でのメニュー決めや、友達とお茶に行くときのお店選びなど、日常の中に選択と決断をする機会はたくさんあります。

主体性がない人は、自分で決めて責任を取るのが苦手。したがって「なんでもいいよ」が口癖で、これらをほかの人に決めてもらおうとします。

◇(2)やりたいことがない

人の意見に流されてなんとなく過ごしてしまうので、自分の気持ちがわからなくなるケースが多いです。

自分で考えて行動するという習慣ができていないので、将来に希望が感じられず、これといってやりたいと思えることがない状態になりがちです。

◇(3)人のせいにしがち

自分の判断や行動に責任を取ることを避けるので、うまくいかなかったときに「誰かのせいでこうなった」と考えてしまう一面も。

自分は動かず、まわりの人に自分の思う通りに動いてもらいたいと思っているので、不平不満を抱える思考回路になってしまうのです。

◇(4)指示待ち人間

自分に与えられた仕事はこなしますが、言われていないことは基本的にはしません。

自分で動いて何かあったときに、責任を取りたくない・失敗したら嫌だと思う気持ちが強いのが特徴です。

◇(5)「ほかの人がやってくれる」という思考

向上心に欠け、自分がなんとかしなくても、ほかの人がやってくれるだろうという都合の良い考えに逃げがちです。

自信がなく、自分にはやれる力がないとも思っているので、「なんで自分がやらないといけないの?」という思考になるのです。

■主体性がなくなってしまう原因とは?

この主体性を持たなくなる背景には、どのような環境や性格が影響しているのでしょうか。「主体性がない」と言われてしまう原因をさらに深堀っていきましょう。

◇(1)過保護または厳格な家庭環境

親が過保護で、なんでも先回りして手を差し伸べてしまう場合、「親がなんとかしてくれるだろう」と思うような責任感のない子に育ってしまいます

親の考えや方針を押しつけてしまうような厳格な家庭環境である場合も「どうせ意見を言っても聞き入れてもらえないから」という理由で、子どもは考えることを放棄してしまうことがあります。

◇(2)否定されることへの強い恐れ

自分で考えて発言したり行動したりしたことを、誰かに否定されて傷ついた過去があると、もう傷つきたくないという気持ちが強くなります。

誰しも傷つくことは嫌なものですが、その恐れが極度に強くなると、主体性は失われていきます。

◇(3)完璧主義の性格

チャレンジをしていく中では失敗はつきものです。

それが完璧主義となると、ひとつの失敗が大きくプライドを傷つけてしまいます。

やるからには失敗できないという恐れが強くなると、自ら考えて行動を起こすことはリスクになるので、それを冒してまでやろうという気は失われてしまうのです。

◇(4)大人になれない精神性

年齢的に大人になっていても、精神的には「大人になりたくない」「誰かに面倒を見てもらいたい」と思っていることがあります。

大人になるということは自分の人生の責任を自分で取るということ。責任を取りたくないという気持ちが強いと主体性がなくなってしまいます。

◇(5)恵まれた環境に甘んじてしまった

まわりに強いリーダーシップを発揮する人や、責任感のあるしっかり者がいると、自分で考えなくてもなんとかなってしまうことがあります。

なんでも教えてくれるし、やってくれるからと恵まれた環境に甘んじて、自分で考えることを放棄し楽なほうを選んできてしまったケースもあるでしょう。

■主体性のなさを改善する方法

さまざまな経験や成育歴が関係する「主体性」。上記で説明した原因に覚えがある人もいることでしょう。

このように育ってきた環境によって失ってしまった主体性は、再び取り戻すことはできるのか。最後に、主体性のない自分を変えるヒントを紹介します。

◇(1)些細なことでも「自分が選ぶ」癖を

ランチのメニューを選ぶときも、なんとなく決めるのではなく、「これが食べたい」「本当はAランチがいいけど、高いからBランチにしよう」「みんながAランチを頼んだから、今日は私も合わせておこう」などと、自分が選んだ自覚を持つ練習をしましょう。

大切なことは、不本意なものを選んだとしても、それを自分が決めたという意識を持つことです。その自覚が主体性を作ります。

◇(2)食わず嫌いしない

自分の担当している仕事の関係者など関わりのある人たちに対して、先入観を持つのをやめて「どんな人なんだろう? 何に興味があるんだろう? どんなことに困っているんだろう? 私に手伝えることはあるかな?」と、相手を知ろうと思ってみてください。

他人に興味が持てると、いろんなアイデアを思いつきやすくなります。人間関係において「食わず嫌い」をしないことです。

◇(3)仕事の意味や目的を考える

「この仕事は誰のためにあるのか? なんのためにやるのか?」を考える癖をつけておくと、自分の中に軸が生まれます。

「仕事のやり方を変えてみてはどうか?」という話になったときも、その仕事の意味や目的に照らし合わせて意義があるなら変えればいいし、目的に反しているのならやらないほうが良いといったように、考え方の基準を自分の中で持てるようになります。

◇(4)失敗のあとの「ポジティブな問いかけ」

失敗したり否定されたりすることを恐れる人は、「なんでうまくいかないんだろう?」と考えます。主体性を持つためには、発想を転換して「どうすればもっとうまくいくんだろう?」という問いかけをすることが大切です。

ポジティブな質問を自分に投げかけることで、建設的に物ごとを考えるスキルが身につきます。

◇(5)自分を応援してくれる味方を持つ

主体性がない人は自信がなく傷つくことを恐れています。

失敗したり傷ついたりしても、味方になってくれる人がいる、自分を理解してくれる人がいると思えると、行動することに対して恐れが減る効果があります。

些細な決断が「主体性」を生む

主体性を持つということは、自分で考えて行動し、その結果の責任を負うことです。些細なことでも自分で決めたという自覚を持つことから始めていきましょう。

また、私たちは興味を持ったものには関わろうとしますし、当事者意識が芽生えます。

自分で考えて責任を負うというとシビアな感覚がするかもしれませんが、まずは仕事や自分が関わる人たちに興味をもち、自分で考えて行動していければOKです。

主体性を持つということは、創造性を発揮し人生における自由を獲得することを意味します。ほかでもない自分の人生を生きていくために、日常のちょっとしたことから意識をして、主体性を身につけていきましょう。

(高見綾)

※画像はイメージです

「なんでもいいよ」と言う人の心理