日産自動車の西川(さいかわ)広人CEO(EPA=時事)

 オリンパス事件をはじめ数々の経済事件を裏側を暴いてきたWebメディア「闇株新聞」。昨年7月に突如休止したヤバいメディアが1年の充電期間を経て復活。今回、日産自動車の西川広人CEOが報酬不正受領していた問題に迫る。

◆ようやく大手メディアが取り上げた不正
 日産自動車の西川(さいかわ)広人CEOが、自らが受け取る報酬を不正に水増ししていた事実が「ようやく」明るみに出てきた。(参照:日産社長らが報酬不正受領、社内処分を検討へ=関係筋|ロイター

 「ようやく」と書く理由は、2018年11月19日にゴーン会長(当時)とともに逮捕されたグレッグ・ケリー代表取締役が、「文藝春秋」7月号6月10日発売)のインタビュー記事で「西川氏に日産自動車社長の資格はない」と断言するとともに、今回明らかになった不正も具体的に暴露していたからである。しかしその時点では他のマスコミはほとんど伝えることはなかった。

 それがここにきて(9月4~5日になって)、一斉に各社も報道するようになったが、ケリー被告の暴露内容以上に新しいニュースはない。それでは「文藝春秋」が発売された6月10日から3か月もたってから、何で急に各社が取り上げることになったのか?

◆行使日をゴリ押し修正させた結果の不正な利益
 そこを解説する前に、西川CEOの不正について説明しておこう。

 西川氏を含む複数の日産自動車取締役は「株価連動型報酬(SAR)」を割り当てられており、あらかじめ決められた行使価格に対し各自が決めた行使日の株価との差額に割り当てられた株数を掛けた金額が、現金で支給されることになっていた。

 西川氏は2013年5月14日に行使したものの、日産自動車の株価がその後も上昇したため、いったん決めた行使日を秘書室にごり押しして5月22日に修正し4700万円もの利益を不正に得たというものである。もちろんいったん行使すれば、後から行使日を修正することは「明らか不正行為であり、まだ時効になっていない。

 この時点において西川氏が受け取った「株価連動型報酬」の総額は1億5000万円にも上り、ひたすらゴーン被告とルノー本社に対する忠誠心を見せるだけの「ご褒美」が1億5000万円もの「株価連動報酬」となっていたことになる。もちろん通常の役員報酬とボーナス以外に「株価連動報酬」まで受け取り、さらに不正な手段まで用いてそれを上乗せしていたことになる。

 9月5日早朝に報道陣に囲まれた西川氏は、何とこの期に及んで「(株価連動型報酬については)ケリー被告ら事務局に一任しており、適切に処理されていると認識していた」とトボけていたが、明らかにケリー被告の暴露と違っている。ケリー被告は西川氏がはっきり認識したうえで秘書室を通じて事務局に圧力をかけたと明言している。

◆ゴーンを「売った」傍らで同じ不正を働いていた西川CEO
 また西川氏は、2017年4月に代表取締役社長兼CEOの座をゴーンから譲られているが、その時点でゴーン被告あるいはルノー本社から「最もゴーンやルノーを裏切らず、日産自動車から搾り取れるものはすべて搾り取れる日本人である」と評価されていたことになる。それこそが西川氏の存在価値だったことになるわけだ。

 そんな西川氏が、今度は2018年11月19日にゴーン被告とケリー被告を東京地検特捜部に売り渡すことになる。その理由は、同年春頃から日産自動車ルノーの経営統合についてゴーン被告から聞かされていたものの、その新会社の最高幹部に自分の名前がなかったからではないかと考えている。

 日産自動車ルノーに売り渡すことを「食い止めよう」などと考えたはずはなく、ひたすら自分のことだけを考えた行動なのではなかろうか。なぜならば、西川氏は、ゴーン被告を東京地検特捜部に売り渡した理由(ゴーンの不正報酬)と同じような不正を自分も同時期に行っていたことになるからだ。

 しかもゴーン被告とケリー被告を東京地検絵特捜部に売り渡す時に、自分の不正は大目に見てもらえると思ったかもしれない。先にチクった方がいろいろ有利になることは事実である。ところが東京地検特捜部は(たぶんそれらしきことは言ったはずであるが)それをそのまま守るほど「お人よし」ではない。

 ただ、今まではゴーン被告とケリー被告を「有罪」にするための証言を西川氏らから引き出すために、波風を立てないようにしていただけである。そしてそれが一段落したため、今度は西川氏も捜査対象に加えようとしているはずであり、それが先ほど書いた「何で今頃になって各社が(西川氏の不正を)急に取り上げるようになったか」の答えである。東京地検特捜部くらいになると世論も気にするもので、そのためにマスコミにリークして「(西川は)こんな悪い奴なんですよ」と世論を洗脳させるものだからである。

◆日産は手遅れになる前に「第二幕」を上げよ
 ゴーン被告という「重し」が取れた日産自動車は、2019年4~6月期の営業利益が前年同期比99%減のわずか16億円であった。ところが西川氏はそこでも自らの経営責任には全く触れず、ゴーン被告の「行き過ぎた経営」の弊害であると平然と述べ、生産体制の見直しと称して1万2500人もの首をあっさりと飛ばしてしまった。西川氏の経営能力はゼロである。

 ここまで日産自動車の業績が悪化すると、それまでさんざんルノーの業績をかさ上げしてきたところから、今度はルノーにとってもお荷物となるため、西川体制のままなら今度は日産自動車そのものが「路頭に迷う」結果になりかねない。

 ゴーン被告はもちろん「真っ黒」であるが、西川氏も負けずに「真っ黒」である。日産自動車のためにも事件の第2幕を早く上げたほうがよさそうである。そうでないと日産自動車そのものが「腐ってしまい手遅れになる」からである。

<文/闇株新聞>

【闇株新聞】
‘10年創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者・経済記者などから注目を集めることに。2018年7月に休刊するが、今年7月に突如復刊(「闇株新聞」)。有料メルマガ配信のほか、日々、新たな視点で記事を配信し続けている。現在、オリンパス事件や東芝の不正会計事件、日産ゴーン・ショックなどの経済事件の裏側を描いた新著を執筆中

日産自動車の西川(さいかわ)広人CEO(EPA=時事)