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驚きは変わらず

より新しいE90とF30ではさらに洗練されてはいたものの、他のライバルとの違いを明確に打ち出すことには失敗しており、ドライバーだけでなく、他のパッセンジャーにとっても懸念の残る仕上がりに留まっていたが、G20世代になって、ふたたびE46世代までの方向性へと完全に回帰している。

その結果がこのクルマのハンドリングであり、相応しい道さえあれば、思わず後ろを振り返って本当にこれは狭苦しいリアスペースしかもたないスポーツクーペではなく、4ドアサルーンなのかと確かめずにはいられなくなるほどの自信と正確さを感じさせてくれる。

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A110にはより速く高価なスーパーカーをも凌ぐ魅力が備わっている。

まさに、15年ぶりに再会する本来の3シリーズであり、ルックスからはそうは思えないかも知れないが、多くの点でトップ5台のなかでもっとも驚かされたモデルでもあった。

一方、もっとも驚きが少なかったのがアルピーヌA110であり、この時代を変革する小さく見事なスポーツカーに対する賛辞の嵐に、これ以上何か付け加えるべきことがあるとすれば、おそらくそれは、こうしたすべての称賛や、多くの距離をこのクルマのステアリングを握って走り回り、数カ月をともに過ごすことで、すでに履き古したスリッパのように慣れ親しんだ後でさえ、このクルマに対する驚きは変わらないということだけだろう。

スポーツカーのランドマーク

このクルマは多くの点で純粋なスポーツカーに対する常識を逸脱している。それはわずか4気筒のエンターボエンジンであることや、3ペダルではなく2ペダルだなどといったことだが、そんなことを忘れてこのクルマとともに時を過ごせば、記憶に残るのは単にこれほど見事なクルマなど他に存在しないということでしかない

このクルマは軽量でコンパクトなモデルであり、アルピーヌに匹敵するほどのドライビングは最高のスーパーカーでも味わえると思うかも知れないが、それは明らかに間違いだ。ルノーメガーヌのメカニカルコンポーネントをベースとしたこのクルマと、スーパーカーを比べることなどできない。

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A110のキャビンからこのクルマの1123kgという軽量さを感じとることができる。

A110の真に驚くべき点は、つねに記憶を上回る素晴らしさを感じさせるところにある。

初めてこのクルマのスロットルを踏み込んでみれば、ドライバーの耳にはエンジンサウンドが聞こえるとともに、リアが力強く路面を蹴りだす衝撃がこのクルマの軽量さを思い出させ、コーナーへと飛び込めば、見事な落ち着きを感じさせるシャシーによって、ドライバーの用意が出来ていれば、思わずその顔には笑みが浮かぶことだろう。

まさにこのクルマはまさにスポーツカーランドマークと言うべき存在なのだ。

期待に応える

そして、率直に言って911カレラSはそうしたモデルではない。長きにわたって名声を築き上げてきたすべての911の影響力を評価しようとしても、結局はどれが最高の911かを決めることなど不可能だということに気付くだけだ。

さらに、アルピーヌが突然変異とでもいうべきモデルである一方、ポルシェで連綿と続く革新という名の進化は、先代991と同じくこの992でもしっかりと踏襲されており、唯一の違いはそれがさらに良くなったということだけだ。

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ダーウィン進化論そのままに911は進化を続けている。

911がアルピーヌやマクラーレンではなく、フィエスタや320dと似ている点は、このクルマが自然にドライバーズシートへとドライバーを誘うことができるというところだ。

911はガレージの扉を開けるたび、その奥で眠るモンスターマシンがひとびとを驚かせるというようなモデルではない。このクルマは雨でも問題なくドライビングを楽しむことの出来る存在であり、ボディの汚れを気にする必要もない。

911はつねにひとびとの期待に見事に応えて来たのであり、ひとびとの期待に応えるという点でこのクルマ以上のモデルなど存在しない。

独特な存在

まるで、お気に入りの家具のように、このクルマはドライバーのライフスタイルにすぐに完ぺきにフィットしてみせ、しばらくの間は911が加わる前の生活など想像すら出来ないだろう。そして、直ぐにそんなことすら考えなくなる。そんな状態が911を失うまで続き、その後残るのは心に空いた大きな空白だけだ。

いま、こうした点で992を上回るモデルなど存在しない。最高の長距離ツアラーであり、素晴らしい通勤車両でもあり、驚くほどの速さと深いドライバーとの繋がりに加え、つねに自信を与えてくれるスポーツカーとしての才能が、独特のボディデザインに詰め込まれている。

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マクラーレンポルシェ

独特な存在という意味ではマクラーレン600LTも同じだ。ウェールズのワインディングロードでこのクルマを速く走らせるということは、決して他の4台とはまったく異なる経験というわけではないが、このクルマはまったく異なる規範に基づいたモデルでもある。

そして、良くも悪くもその実力をフルに発揮させることなど決して出来ない。自制しつつ慎重に時を待ち、それ以外の時間は決して無茶をしてはいけないのだから、確かにフラストレーションは溜まるかも知れない。

(5〜1位 後編へつづく)


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