全国で2都市にしかないといわれていた道路標識が、2018年に相次いで撤去されました。自転車「並進可」の標識です。撤去された両都市で、それぞれの事情がありました。

50年を経て規制見直し、撤去へ

自動車教習所などで習っても、実際にはなかなかお目にかからない標識があります。その最たるもののひとつが、自転車の「並進可」でしょう。通常は禁止されている、自転車の2台並んでの走行が可能という意味です。

この標識、道路ファンのあいだでは全国でも2都市しかないといわれていましたが、いずれにおいても2018年にすべて撤去されました。

2都市のうちのひとつは、愛媛県新居浜市です。大きな化学工場の周辺に、計7基の標識が立ち、それぞれ朝と夕方の通勤時間帯に自転車の並進が許可されていました。この標識について、新居浜警察署に話を聞きました。

――この工場近くの「並進可」はいつ導入されたのでしょうか?

1964(昭和39)年のことです。当時は自転車で工場へ通勤される方が多く、横並びで走らざるを得なかったために導入されたと考えられます。

――なぜ廃止されたのでしょうか?

自家用車などで工場へ通勤される方が増え、自転車通勤の方が減り、並進する必要もなくなったためです。自転車の走行は基本的に1列なので、規制を見直すなかで廃止を決めました。

もう1都市でも撤去 そのワケは?

「並進可」の標識があるといわれていたもう1都市は、滋賀県野洲市です。琵琶湖に通じる川沿いのサイクリングロード入口に3基見られましたが、こちらは新居浜とは全く異なる事情で撤去されています。

野洲市を管轄する守山警察署によると、これらはもともと公安委員会が立てた標識ではなかったといいます。つまり、そもそもが「並進可」の道路標識ではなかったのです。サイクリングロードを管理し、これを撤去した野洲市は「誤った標識だったため」としており、もともとサイクリングロードを整備した旧中主(ちゅうず)町が、サイクリングロードであることをわかりやすく示す目的で設置したものではないかといいます。

ここでは青地に白抜きで自転車が並進するイラストが描かれた、道路標識そのままの「看板」が使われていましたが、緑地に白抜きイラストのデザインで、同様にサイクリングロードであることをわかりやすく示したと見られる事例は栃木県でもありました。そちらも現在は撤去されています。

なお、自転車の並進は道路交通法で禁止されており、違反者に対し「2万円以下の罰金または科料」も定められています。仮に「並進可」であったとしも、3台以上の並進は認められません。

自転車「並進可」の標識(画像:国土交通省)