よくご存知のように日本人の平均寿命は昭和20年1945年)の太平洋戦争終結後、一貫して伸び続け、1960年代には欧米先進国と肩を並べるようになり、1990年代以降は世界でもトップクラスの長寿国となり、今日では世界でも最長の平均寿命を誇るようになりました。最近厚生労働省から発表されたデータによりますと、日本人の平均寿命は男性81.25歳、女性87.32歳となっていて、それぞれ世界第3位と第2位ということでした。高齢者の人口も増え続け、人口全体のなかでほぼ3割を占め、実際の人口は3500万人以上となり、超高齢社会といわれるようになりました。では高齢者の健康状態や日々の生活してゆくうえでの能力はどのようになっているのでしょうか?昔と同じような虚弱な高齢者が増えているのでしょうか?実は、日本での多くの老化に関する研究の成果から、現在の高齢者は、20年前あるいは30年前のかつての高齢者とはまったく異なった、健康度の高い高齢者が圧倒的に増加していることが明らかにされています。

その一つの例が、高齢期の健康にとって最も重要な能力の一つである歩く早さ(歩行速度)に現れています。今から25年前の1992年では65-69歳の男女の歩行速度(m/秒)は男1.26、女1.16でしたが、2017年にはそれが1.41, 1.42に増加しています。また、75-79歳では1992年の男1.08, 女0.95が2017年にはそれぞれ1.34, 1.32と著しい増加、すなわち歩くスピードが早くなっていたのです(表)。これは計算上、男女ともおよそ15歳ほど若返っていることを示しています。特に女性での増加率(改善の度合い)は大きく、表に示したように、75歳以上の後期高齢者での歩行速度はこの25年間でおよそ40%も速くなったことが示されています。同じような若返り現象はたとえば握力(物を握る力)でも、あるいは日常の生活動作能力(ADLと呼ばれています)でも認められており、総じて日本の高齢者の健康状態は大きく改善したことが科学的にも証明されているのです。

[表] 日本人高齢者の歩行速度(メートル/秒)の変化
65-69歳 1992年 2017年 増加率(%)
男性 1.26 1.41 112
女性 1.16 1.42 122
75-79歳 1992年 2017年 増加率(%)
男性 1.08 1.34 124
女性 0.95 1.32 139

私も暦年齢上は65歳以上の高齢者となりましたが、確かに私の子供の時代には、近所のおじいちゃん、おばあちゃんは背中や腰が曲がっていたり、多くの歯が無くなっていたりといういわば古典的な(?)老人が多かったように思います。

しかし今日では特に(たぶん私も含めて)比較的若い65-74歳にある前期高齢者の方々ではもう昔のような古典的なイメージを持つ高齢者は非常に少なくなったと言っても決して過言ではないと思います。このように、現在、日本は現在超高齢社会を迎えていますが、この社会の主役ともいうべき高齢者の健康度や生活能力は決して昔のような衰えの目立った高齢者ではなく、若々しく活力に溢れた、社会に十分貢献できる能力の高い高齢者が増えていることが科学的なデータから明らかにされているのです。

超高齢社会のリアル -健康長寿の本質を探る- 連載1「高齢者は若返っている?」