レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画作品に言及した書籍は数あれども、彼が生涯書きためた、詳細な図像と左右を反転させた「鏡文字」で書き綴った「手稿」(自筆ノート)に注目して、その天才性を説いた本はほとんどありません。古代イタリア語に精通し、鏡文字研究の第一人者でもある著者が、レオナルド没後500年の今年、天才画家の知られざる姿を活写します。
鏡文字で書かれた手稿が、天才画家の実像を明らかに 「世紀の大画家」「万能の天才」とも評されるレオナルド・ダ・ヴィンチを知らない人はいないでしょう。では、彼が数学・解剖学・地質学天文学などに秀でていたことは知っていても、その具体的な業績を知る人が果たしてどれだけいるでしょうか? 本書は、そんな「天才」というイメージだけが独り歩きしてしまった芸術家の姿を、彼が遺した膨大な「手稿」を軸に描き出す、まったく新しいレオナルド・ダ・ヴィンチ論です。

レオナルド、《自画像》、1512頃、トリノ王立図書館
 まず驚かされるのは、「レオナルドはアルキメデスになりたかった」という指摘です。数学者物理学者・天文学者でもあった古代ギリシアの発明家に自身をなぞらえ、生涯かけて最も熱中したのは「水」の研究でした。運河の開削や治水事業、架橋計画に関するスケッチとメモからは、水を操る軍事技師として、マキアヴェッリと共にピサ攻略の作戦を練った、意外な一面が浮かび上がります。
レオナルド、《ピサ周辺の地図》、1503、マドリッド手稿II52v-53r。川を決壊して流れを変える計画を練っていた。なお、この図面は現場の指揮官たちに見せるものであったため、地名は鏡文字ではなく正字で書かれている

レオナルド、《運河開削用機械》、1503、アトランティコ手稿4r、ミラノ、アンブロジアーナ図書館
あるいは、ミケランジェロに対して「解剖学と地質学を知らない」と揶揄したかと思えば、人間は鳥類のように自由に空を飛べると信じ、人類史上初めて、鳥の視点で地上を眺める鳥瞰図を描きました。
レオナルド、《ヴァルディキアーナの鳥瞰図》、1502、ウィンザー紙葉12278r、ウィンザー王室図書館。右上のトラジメーノ湖は現在も残るが、その左下の鳥の形をした巨大な沼は、干拓されて今はない
でもなぜ、こうしたエピソードが巷間に知られてこなかったのでしょうか? 理由は簡単で、数千ページに及ぶ、それも独特な鏡文字を解読して、わかりやすく一般書に落とし込む研究者が日本にいなかったから、と著者は言います。著者の斎藤氏は、レオナルドの手稿解読をライフワークとしてきた第一人者。その彼が、長年の研究成果をもとに、ついに本書で天才画家の実像を明らかにします。
レオナルド、《心臓の弁と腱索の図》、ウィンザー紙葉19118-19r
とはいえ、せっかくレオナルド・ダ・ヴィンチを取り上げるのならば、やっぱり絵画も見てみたいという方が多いでしょう。そこで本書では「ダ・ヴィンチ最大の謎」と言ってもよい《岩窟の聖母》を取り上げています。作品の寸法も形もほぼ等しくて、その図像もほぼ同じ絵がなぜ2点存在しているのか? 著者は、その大いなる謎にも驚きの解答を述べていますので、ぜひ本書を開いて読んでみてくださいね。
レオナルド、《岩窟の聖母》、ルーヴル美術館
レオナルド、アンブロージオ・デ・プレディス、《岩窟の聖母》、ロンドン・ナショナル・ギャラリー


商品情報
本書書影
誰も知らないレオナルド・ダ・ヴィンチ
著者:斎藤泰弘
発売日:2019年09月10日
価格:本体1,100円+税
仕様:新書判並製 280ページ
ISBN:978-4-14-088598-7
出版社:NHK出版

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