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image credit:NASA, ESA, K. Meech and J. Kleyna, O. Hainaut

 小惑星の軌道が集中するメインベルトに位置する小惑星ゴールト(6478 Gault)。

 最初に天文学者たちの目を引いたのは、尾を2本もたなびかせていたからなのだが、今や別の特徴の方が注目を集めている。なんと色が変わるのだ。

 まさに観測の真っ最中にリアルタイムで色が変わるところを目撃された小惑星は他にない。

 だがハワイにあるNASA赤外線望遠鏡施設(IRTF)は、ゴールトが近赤外線スペクトルにおける赤みを帯びた姿から鮮烈な青にお色直しをする瞬間をとらえた。

 それはたった2晩で起きたあっという間の出来事だったそうだ。

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太陽にさらされて焼けた外側の覆いが剥がれてケイ酸塩が露出

 幅3.7kmのゴールトは、アステロイド・ベルト内側の、太陽から平均3億4560万キロ離れたところを移動している。

 その表面のダストは数百万年も太陽にさらされたことで赤く焼けているのだが、研究者の推測によれば外側の覆いはごく薄い。

 今回観測されたのはそれがまさに剥がれ落ちて、内側にあったケイ酸塩が露出した瞬間だ。

 米マサチューセッツ工科大学の天文学マイケル・マーセット氏は

驚いた。赤みを帯びたダストが消えていく瞬間を目撃したのだと考えている。それで、その下にあった真っ青な層が見えるようになったのだろう

とコメントしている。

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image credit:NASA

彗星ではなく岩石天体の小惑星がダストを放出する珍しいケース


 彗星の特徴といえば、太陽の熱で氷が蒸発することでたなびく尾だ。

 しかし、もっと太陽に近いところで形成される岩石や金属の天体である小惑星には、そのような氷がそれほど存在しない。

 それなのにゴールトには尾が2本もある。今回の研究では、ゴールトは氷ではなく、岩石で構成されていることが確認されている。ならば、何か違う原因があるに違いない。

 マーセット氏によると、

岩石天体が彗星のようにダストを放出するなんて、私の知るかぎり初めてのことだ。おそらくは彗星や活動的主帯主惑星の多くとは違うメカニズムがあるのだろう

とのこと。

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image credit:Wikimedia.commons

その秘密は2時間に1回転することで発生する遠心力か


 小惑星だというのに尾が2本もあり、さらにお色直しをすることまで判明したゴールト。

 奇想天外で不思議と謎に満ち溢れているが、どうもこの珍しい特徴はゴールトが2時間に1回転しており遠心力が発生しているためであるらしい。

 この回転は、小惑星の形状が不均一なことで、太陽の光の圧力と天体表面からの熱放射とのバランスに差異が生じることが原因(YORP効果)だと考えられている。

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image credit:Wikimedia.commons

 これがゴールトをファッショナブルに仕立て上げている秘訣なのだが、高速回転の代償として、やがてはバラバラになってしまう可能性が高いようだ。

 研究者は、そうなってしまう前に、ゴールトの明るさの変化を調べ、YORP効果を確認したいと考えているそうだが、困ったことに2本の尾のおかげでそう簡単な作業ではないのだとか。

 この研究は『Astrophysical Journal Letters』(8月30日付)に掲載された。

References:NASA / MIT news / Astrophysical Journal Lettersなど / written by hiroching / edited by usagi

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52282168.html
 

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