【特別全文公開 #2】西川廣人さんに日産社長の資格はない――グレッグ・ケリー前代表取締役世界初告白 から続く

 日産・西川廣人社長が自身の不正報酬問題を理由に、今月16日付で辞任することを発表した。この疑惑が初めて明らかになったのは、「文藝春秋」7月号に掲載されたグレッグ・ケリー前代表取締役への3時間に及ぶインタビュー記事においてだった。そこで、彼は一体何を語っていたのか。日産問題の核心を広く世に問うため、24時間限定で同記事の全文を公開する。

(本記事は全4本の3本目です)

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 ゴーン氏は有価証券報告書の虚偽記載以外にも、特別背任容疑で2度にわたり逮捕されている。

 1つ目が「サウジ・ルート」。ゴーン氏は2008年リーマンショックで自身の保有する金融商品が多額の含み損を抱えると、旧知のサウジアラビア人実業家に追加担保の負担を依頼。その見返りとして子会社「中東日産」を通じて謝礼金約13億円を支出したとされる。

 2つ目が「オマーンルート」。中東日産からオマーンの販売代理店に約11億円を送金させ、そのうち約5億円をゴーン氏が保有する会社に還流させたとされる。これらの件についてケリー氏は容疑をかけられていない。

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――サウジ・ルートオマーンルートについて、ケリーさんが知っていることはありますか。 

ケリー 全くわかりません。メディアで読んだことしか知らないのです。私は中東でのビジネスに関わったことがありませんから。

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 ゴーン氏は逮捕容疑以外にも、日産の資金を私的に流用したとして批判を浴びている。その一つが世界各地で購入された豪邸だ。日産の子会社がパリやリオデジャネイロベイルートの高級住宅の購入費などとして34億円超を支出したとされる。

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――ゴーン氏は日産にリオデジャネイロベイルートなどの自宅を購入させ、維持費や改装費まで負担させていたと報じられています。ケリーさんはこの件にかかわっていましたか。

ケリー たしか2011年にゴーン氏が私のところに来まして、「今後、ブラジルと中東で、ビジネスのためにより多くの時間を過ごしたい。拠点となる家や滞在できる場所を日産が用意することはできるか」と尋ねてきたのです。2つともゴーン氏と縁のある地域ですが、そのときブラジルでは、新工場を建設する予定(2014年稼働)でしたし、日産の戦略として両地域の利益率やシェアの向上を重要と考えていた時期でもありました。

 私が会社規定を良く知る秘書室の責任者に相談したところ、「ビジネスで頻繁に長期滞在しているのであれば、会社のお金で購入することも問題ない」という答えが返ってきました。過去にも経営陣からのリクエストで、スイスビジネス用に家を確保した例があり、ゴーン氏が初めてのケースではありませんでした。そこで私は専門家に依頼して社外秘で購入を進めることにしました。特に治安とか安全性を気にする場合は、それが重要だからです。

 これは、もちろん西川さんも承知のことでした。2011年にゴーン氏CEO退職後の雇用契約書案を作ったときも、パリやブラジルレバノンの不動産を明記して、私からきちんと説明しましたし、その場で承諾してもらっています。

 ただし不動産の契約にあたっては、私からゴーン氏に対して会社に損が出ないようにすべきだと助言しました。このときゴーン氏はまだ2014年に退社する可能性がありましたので、その場合は、その時の市場価格、もしくは会社が支出した総費用のどちらか高い方でゴーン氏が購入するとしたのです。ゴーン氏はこれを承諾しました。

西川社長も不動産購入を要求した

――維持費や管理費なども日産に負担させていたと批判されています。これについてはどう思いますか。

ケリー ブラジルでの月々のコストは、ホテルに宿泊するのと同じくらいだったと記憶しています。メンテナンス費は会社持ちでしたが、例えば部屋数を増やしたりすれば、そのぶん不動産価格は上がりますから、最終的にゴーンさんが買い取る約束があれば、会社に損害を与えることは一切ありません。

――西川さんは購入する時には必要性を認めていたのに、なぜ、いまになって批判をしているのでしょうか。

ケリー それを私から説明するのは難しいです。私は西川さんを長年知っており、ゴーン氏のことを非常な熱意で支持している人物だと理解していました。いまの状況についてどう説明すべきなのか、正直なところ困惑するばかりです。

 実は、西川さんにも不動産購入の話がありました。2013年の春ごろ、私にアプローチしてきて、「お金が必要なので、なるべく早く報酬を引き上げてほしい」と言ってきたのですが、その時、会社が不動産を買うことは可能かとも聞いてきました。

――それは西川さんが所有している不動産を買い取ってほしいという話ですか。

ケリー いえ、違います。彼はすでに一軒、家を持っていたのですけれど、日産に新しい家を購入してほしいということです。

――それは東京都内に、ですか。

ケリー 東京だったと思います。少なくとも日本国内だったことは確かです。西川さんが候補として挙げていた物件は2軒ありましたが、マンションだったのか一軒家だったのか詳しいことは覚えていません。

――東京となると自宅ということですか。なぜ自分で買わずに、日産に買ってほしいと言ってきたのでしょうか。

ケリー その時、現金が必要だったことが大きな理由だと思います。「現金がない」と言っていましたから。だから日産にその物件を買ってもらって、月々、日産に返済していくけれど、退職した時は自分が残金を払うのでどうかという提案でした。

――つまり、西川氏は日産にローンを肩代わりしてもらおうと考えていたわけですか。

ケリー それが彼のリクエストです。いくらの物件だったのかはわかりませんし、彼が月々いくら日産に払い戻すつもりだったのかもわかりません。ただ、月々の支払いはそれほど高くない金額を考えていたと記憶しています。

#4に続く)

【特別全文公開 #4】西川廣人さんに日産社長の資格はない――グレッグ・ケリー前代表取締役世界初告白 へ続く

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年7月号)

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