クリオドラコン・ボレアスのイメージ図 / Credit: David Maas by Queen Mary University of London

Point

■翼竜類アズダルコ科に属する「クリオドラコン・ボレアス(Cryodrakon boreas)」が発見された

■30年前に誤ってケツァルコアトルスとして分類されていた化石が、別の種に属することが判明した

■特定された化石の保存状態は極めて良く、さまざまな体格を持つ複数の個体を含むため、貴重である

「火を噴くドラゴン」が科学的に存在し得るのかを考えてみる

翼竜類アズダルコ科に属する「クリオドラコン・ボレアス(Cryodrakon boreas)」を発見したという研究結果が10日に発表されました。クリオドラコンは、7,700万年前の白亜紀の空を飛行していた飛翔動物です。

クリオドラコンの化石は、カナダアルバータ州で30年前に発見されていましたが、誤ってすでに米国テキサス州で発見されていたケツァルコアトルスとして分類されていたものです。

そんな中、この化石が実際には新種の翼竜で、カナダで発見された翼竜としては初めてのものであることがわかりました。

研究を発表したのは、ロンドン大学クイーン・メアリー校のデイヴィッドホーン博士。論文は「Journal of Vertebrate Paleontology」に掲載されています。

Cryodrakon boreas, gen. et sp. nov., a Late Cretaceous Canadian azhdarchid pterosaur
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02724634.2019.1649681?journalCode=ujvp20

翼開長約10メートルの巨体

問題の化石は、翼、脚、首、肋骨の一部などの骨から出来ていました。30年の歳月が流れる間に新たな化石が見つかり、アズダルコ科の多様性についての理解が深まる中で、今回初めてそれが異なる種に属することが明るみに出たのです。

メインの骨は、翼開長約5メートルの子供のものですが、他の個体の巨大な首の骨のサイズから、大人の翼開長は10メートルほどに及んだのではないかとホーン博士は推測しました。これは、翼開長約10.5メートル、体重約250キロを誇るケツァルコアトルスを含むアズダルコ科の翼竜に匹敵するサイズです。

クリオドラコンの大人の首の骨 / Credit: Queen Mary University of London/David Hone by AFP

また、クリオドラコンは、アズダルコ科の他の翼竜と同じように肉食性で、トカゲや哺乳動物、恐竜の子供といった小型の動物を食糧にしていました。

大海上空を移動できても生活圏は内陸

クリオドラコンがケツァルコアトルスと区別できたことで、北米に生息していた捕食性の翼竜の多様性と、進化についてのさらなる理解に繋がります」と、ホーン博士は語っています。

他の多くの翼竜と異なり、アズダルコ科の翼竜は主に陸上で暮らしていました。大海上空を移動する能力をおそらくは備えながらも、内陸性の環境に適応し、生息した動物として一般的に捉えられています。

飛行機と見紛うほどの巨体を持ち、北米、南米、アジア、アフリカ、ヨーロッパの広域に渡って分布していたにもかかわらず、アズダルコ科の翼竜の化石は、これまで断片的なものしか見つかっていません。その意味で、今回特定された化石の保存状態が極めて良く、さまざまな体格を持つ複数の個体を含んでいることは、かなりの幸運と言えます。

クリオドラコンのイメージ図 / David Maas by Phys Org

眼下のティラノサウルストリケラトプスを見下ろしながら、大きな翼を広げて太古の大空を舞うクリオドラコン・ボレアス。悠々と飛びながら、獲物を狙っていたのでしょうか? 想像するだけで夢が広がりますね。

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reference: qmul / written by まりえってぃ
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