日韓関係が悪化の一途を辿り、日本への韓国人観光客は激減、日本から韓国に来る観光客も大幅に人数を減らしているというのに、どうしたことか、韓国を訪れる日本女子だけは増えているという。
そこには、久々のウォン安に加え、K-POPとK-ビューティ、そして韓国グルメがあるのではないかと思う。
そこで、筆者はいったん日韓関係の話題から離れて、K-ビューティを創造する韓国のコスメ企業の紹介に戻ることにする。
韓国コスメの紹介はこれで11回目になる。
さて、8月末、韓国では日中韓文化・観光大臣会合が開かれた。その付帯行事として「未来世代フォーラム」が開催され、そこでは日中韓の大学生たちがコンペに出品した作品を競っていた。
日中韓の観光活性化のためのPR、商品、政策をテーマに出品された映像、提案書、ポスターのコンペである。
大学生たちの発表を聞いていると、韓国の代表的な観光商品は光化門、チマチョゴリ(韓服:韓国の伝統衣装)のようであった。
たぶん韓国コスメやK-POPは女子に限られ、まだまだ大衆化していないのかもしれない。
ちなみに、日本は富士山、桜、柴犬、五重塔である。
こうしたことについて、審査員たちは「まるで1970年代のポスターみたいだ」と評していたが、まさにその通りである。
特に、そうした傾向が強かったのが中国の代表たちであったのを見ると、まだまだ彼らは海外に出ることが少ないのだなという気がした。
大賞を取ったのは、日中韓のグルメをラップで表現した中国のチームで、3つの国のグルメに関する歌詞を日中韓のラッパーたちが歌ったもので、新鮮だった。
さて、今回紹介するK-ビューティの会社は、「バニラコ」である。
何とも美味しそうな名前だが、その会社のCEO(最高経営責任者)は、ザ・オヤジという風貌のキム・チャンス氏である。
サムスン出版社(ちなみにサムスン電子とは全く関係ない)創業者の次男で、1992年韓国にイタリアブランド・ベネトンを輸入販売することでアパレル会社から経営を始めた。
それを続ける傍ら、2005年にファッションとコスメの出会いというテーマでコスメブランドの「バニラコ」を立ち上げた。
最近では、「クリーンイットゼロ」というクレンジング製品が人気を博している。
2015年には、中国の人民日報が中国観光客を対象に調査した結果、メイクアップベース部門で1位を獲得した。
バニラコの親会社は、エフアンドエフ(F&F)という先ほど述べたアパレル会社だ。
この親会社は、ファッション業界不況を謳われるなか、この5年間で株式市場が期待する以上の事業成果を達成し、キム・チャンス代表とその一族の株式資産が急増した。
F&Fは、アウトドアブランドの「ディスカバリー」、スポーツアパレルブランドの「MLB」などを運営している。
創業一族が所有する株式の時価総額は、7000億ウォン(約700億円)に近い。特に、キム代表の子供たちは未成年時から株を取得しており、最近の株価高騰で資産価値が大幅に増加した。
バニラコは、昨年売上高1206億ウォン、営業利益が330億ウォン。営業利益率27%という高収益企業だ。
売上高、営業利益の前年対比は、それぞれ46.2%増と101.2%増。急成長の要因は中国での人気である。
中国の最大電子取引サイトであるタオバオモールにおけるディープクレンジング部門で「クリーンイットゼロ」が1位に輝き、バニラコの収益を牽引しているのだ。
観光客が多く集まる韓国の明洞でも、バニラコの店の前を通ると、4色のクリーンイットゼロを一まとめにして売っているのを多く見かける。
観光客用のまとめ売りで、お土産として定番化しているといえる。韓国のコスメ業界では、同商品は、4秒に1個売れるとも言われるほどの人気製品だ。
バニラコは、流通チャネルに特徴がある。
従来は一般のコスメ商品と同じくデパート中心で入店していたが、最近はデパートからの撤退を図っている。
一方で、アモーレパシフィックの体験型アンテナショップ「アリタウムライブ」に入店し、オムニチャネル強化に力を入れている。
昨年9月から今年の3月までソウル、釜山など12のデパートから撤退。また、同期間一般のロードショップ(街中の店舗)も4か所閉店した。
最近、店舗を減らしているコスメブランドが多くなっていて、そのほとんどは業績悪化のためだが、バニラコは積極的に流通チャネルを入れ替えるためだ。
バニラコでは「最近、消費者トレンドが所有から体験へと変化しているためより多様な製品を体験し選べるアリタウムライブにシフトした」という。
実際、店舗数は100(2016年)ほどしかない。しかし、1店舗当たりの売上高をみると、平均で14億5000万ウォンと、業界平均の4億9000万ウォンの約3倍に達している。
群雄割拠状態になりつつある韓国のコスメ産業。店舗数を増やしただ売るだけでは生き残れなくなっている。
バニラコは、そうした時代の先を読み、先手を打って流通改革を断行した結果の好業績と言えるだろう。
自社の様々なコスメを体験してもらい、ユーザーは自然に製品の特性やコンセプトを理解する――。
そうすることで、定番商品だけでなく多種多様が売れるようになっている。日韓関係悪化の中でも韓国を訪れる日本女子たちも、そうした韓国コスメの変化に敏感なのだろう。
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