「老老介護」って、ご存知ですか。

夫婦ともに老いて、自身も老人なのにも関わらず、とくに介護が必要な側の介護を行いながら暮らすことです。

私は以前、ドキュメンタリー番組で上京した娘の両親が老老介護の状態に陥った状況を見たことがありました。
娘は仕事があり、実家にはなかなか帰れません。
休日は全て実家に帰り、病気の母の介護を行うのですが、仕事があるのでまた東京に戻らなければなりません。家族の誰もがすり減っているのに、どうすることもできない様子は見ていて辛くなってしまいました。

両親の元から子どもが遠く離れてしまうと、いざというときにこんなに大変になってしまうのかと思うと、考えこんでしまったのです。番組の放送が深夜だったせいもあり、眠れなくなってしまいました。

ちなみに我が家は、両親と同じ県に住んでいます。しかし、片道2時間ほど離れた場所です。せっかく同じ県にいるのなら、本当はもっと近くに住んだ方がいいのかな、と考えたりもします。
今は元気で問題ないけれど、両親ともに60歳を過ぎています。いつどうなるかはわからないのです。

『どうにかなってからでは遅い。今ならまだ間に合うかも』そう思いました。

両親の介護問題について妻と話し合い

僕は深夜に見た老老介護のドキュメンタリーの感想を妻に話したところ、妻も共感してくれました。

妻の両親は遠く離れた場所にいて、そこには長男や次女などほかの家族が揃っています。
妻にとっては、近い場所にいる私の両親の介護問題の方が、現実的に関わってくる問題だと認識してくれていました。

「将来的に義両親に何かあって、義父か義母1人に負担をかけさせるわけにはいかない」と話していました。ありがたいことです。
「でも、それで頻繁に実家に行かなきゃならない状態になると、片道2時間は辛いね」という話に。確かにそうです。
「もしそれで『引っ越し』になり、子どもに転校を強いるのは嫌だから、どうせなら学校を替えなくて済むように先に近くに住むようにしたい」という話になりました。

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両親と子どもの家が遠いと、将来負担がかかるのは子ども

両親と私たちの家が遠く離れていることで、すでに面倒は多く負担になっていました。
私たちは県の中心部に住んでいるのですが、実家は県の中心部からはかなり離れています。
ただ、私の父は未だ仕事を続けており、勤務先は県の中心部。わざわざ長い時間をかけて通い続けているのです。

「だったら、一緒にこの辺に住んだ方が生活が楽じゃない?孫の顔もいつでも見られるし、助け合えるし」と妻が言ってくれました。

『一緒に住むことになってもいいの?』と聞くと、「しょうがないじゃん。子どもに突然転校させるよりよっぽどいいよ」とのことでした。

うちの実家は僕が中学時代に買った家でそこまで古くありません。築18年くらいでしょうか。家が古くなったわけでもないのに、引っ越しをすることに両親がどう思うか分かりません。

一方で、両親はとくに地域活動をしておらず、その地に友人もいません。何のコミュニティにも属していないので、あまりその地に思い入れもないように見えます。

『いっそ、今の家を売って、県の中心部で一緒に助け合って暮らすのはどうか』と提案したら、どう捉えられるのかまったく想像できませんでした。

でも、10年後に後悔したくない!と思い、僕は思い切って両親に相談してみることにしました。

両親に一緒に生活するのはどう思う?と相談してみた

僕は勇気を出して、両親に相談しました。

『いっしょに市の中心部に住むのはどう思う?そうしたら、孫はみんなで育てられるし、将来介護が必要になっても安心なんじゃないかと思うんだ。親父も通勤が楽だよ』

母は「そこまで考えてくれているんだね」と喜んでくれました。
「確かに、私たちにこの家は広すぎて無駄が多いので、近くに住んだ方がいいんじゃないかなと思う」と続けます。
なかなか「一緒に住んでほしい」とは言えないのが普通なので、声をかけて良かったのかもと思いました。

しかし、父は違いました。そんな話をする母を一喝。「バカなことを言うな」と。

「お前らには迷惑かけん!」と怒られた

「だいたいお前らは俺たちが何もなってないうちから、何を言ってるんだ?」と、それはもうすごい剣幕でした。

『いや、だからそうならないうちに…』と僕は言い返そうとしましたが、「お前らはよけいなこと気にすんな!お前らには迷惑かけん!」と吐き捨てられてしまいました。

母は「そんなふうに言わなくても」としょんぼり。妻は怒りに震えた表情をしており、僕は「簡単に話し過ぎたのかも…」と1人反省をしていました。

親との同居問題は難しい

僕は両親がどんなリアクションをするか想像ができなかったので、話す前に行きつけの美容師さんに相談しました。

美容師さんは「奥様はすごいですね。普通なら、義両親と住んでもいいなんて言えませんよ。先を見据えて、住んだ方がいいという判断ができるなんて、やさしい方ですね。きっとご両親は将来を真剣に考える姿に喜んでくれますよ」と言ってくれていたのです。

そう簡単にはいきませんでした。父はプライドを傷つけられたと思ったのかもしれません。

妻は「もうどんなに辛い状況になっても、あの父親だけは絶対に助けない!」と顔を赤くして怒りに震えていました。『まあまあ…』となだめる僕。

簡単に問題解決はしないということだけがわかりました。これからも僕たち夫婦は、間違いなく近づくこの問題に気づいているにも関わらず、残念ながらノーガードです。